【JB64型】新型ジムニーの進化を徹底解説!悪路走破性は最高!街乗りはまだまだ?【試乗レビュー】
更新日:2024.09.09
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旧型ジムニーの乗り味を知っている人なら誰しもが、新型ジムニーの進化を評価します。ですが、おそらく新型ジムニーに乗る人のほとんどが、初めてオフロード4WDに乗る人ではないでしょうか。ジムニーはSUVではなく、あくまでもオフロード4WDなのです。
文/写真・山崎 友貴
※2021年9月時点
文/写真・山崎 友貴
※2021年9月時点
新型ジムニーの進化は著しいが…まだまだ街乗りには課題も?
初めて新型ジムニーに乗った時の驚きは、未だに忘れることはできません。スズキのテストコースで旧型のJB23型ジムニーとの比較試乗だったのですが、その進化は火を見るより明らかでした。
もっとも大きな違いは、ボディ剛性です。別項でも説明させていただきましたが、新型ジムニーのアッパーボディーやラダーフレームは最新技術を使って解析され、現状でもっともベストな剛性と強度が持たされています。
エンジンの変更も、新型ジムニーのドライブフィールを大きく変えました。従来のK6A型エンジンは、かなり高回転型。ターボが過給し始めるのも高回転で、オフロードをトルクで走るような状況は苦手でした。
これは、旧型のJB23型ジムニーが登場した頃の時代背景もあり、当時はドッカンターボのエンジンがもてはやされたのです。しかし時代は変わり、低回転から太いトルクを発生し、回転数に関わらず安定した走りができるエンジンが扱いやすい…というのが、現代の価値観です。
これは、旧型のJB23型ジムニーが登場した頃の時代背景もあり、当時はドッカンターボのエンジンがもてはやされたのです。しかし時代は変わり、低回転から太いトルクを発生し、回転数に関わらず安定した走りができるエンジンが扱いやすい…というのが、現代の価値観です。
ボディ剛性と書くと、「それは安全性能ね」と言う方がいますが、それだけではありません。例えば、同じ性能のサスペンションを、剛性の高いボディーと低いボディーに取り付けた場合、本来の性能を発揮できるのは剛性の高いボディーなのです。
走行中はボディーが様々な方向に歪み、サスペンションが路面にタイヤを押しつける力を逃がしてしまいます。それをいかに防ぐかは、サスペンションの構造よりも、ボディ剛性を考える方が効果は顕著に出ます。
走行中はボディーが様々な方向に歪み、サスペンションが路面にタイヤを押しつける力を逃がしてしまいます。それをいかに防ぐかは、サスペンションの構造よりも、ボディ剛性を考える方が効果は顕著に出ます。
エンジンの変更も、新型ジムニーのドライブフィールを大きく変えました。従来のK6A型エンジンは、かなり高回転型。ターボが過給し始めるのも上の回転で、オフロードをトルクで走るような状況は苦手でした。
これは、旧型のJB23が登場した頃の時代背景もあり、当時はドッカン系のエンジンがもてはやされたのです。しかし時代は変わり、低回転から太いトルクを発生し、回転数に関わらず安定した走りができるエンジンが扱いやすい…というのが、現代の価値観です。
これは、旧型のJB23が登場した頃の時代背景もあり、当時はドッカン系のエンジンがもてはやされたのです。しかし時代は変わり、低回転から太いトルクを発生し、回転数に関わらず安定した走りができるエンジンが扱いやすい…というのが、現代の価値観です。
まさにその価値観を具現化したR06A型エンジンは、スズキの新世代エンジンで多くの車種で共用しています。ただし、スズキでは珍しいFRベースのドライブトレーンになるジムニーでは、ほぼ専用設計となっています。
そのフィーリングのみならず、厳しい環境を走る可能性があるジムニー用に、補機ベルトのリブ数(溝の数)さえ考慮し、耐久性や信頼性を高めています。
そのフィーリングのみならず、厳しい環境を走る可能性があるジムニー用に、補機ベルトのリブ数(溝の数)さえ考慮し、耐久性や信頼性を高めています。
またパワートレーンの工法などを見直して、振動や騒音を抑えるなどしていることも、気持ちのいいドライブに繋がっていると言えるでしょう。一般のユーザーは旧型と比較試乗する機会は少ないと思いますが、高速で床下から入ってくる音は、格段に小さくなっています。
細かいことを書き並べてしまいましたが、新型ジムニーの乗り味をひと言で表すなら、「普通になった」です。クロスカントリー4WDやオフロード4WDと言われるジャンルの車は、オンロードとオフロード性能を両立させなければならないという大きな命題があります。
オフロードを走るという性能を実現するためには、頑丈なボディーやよく動くサスペンションが必要になります。
オフロードを走るという性能を実現するためには、頑丈なボディーやよく動くサスペンションが必要になります。
頑丈なサスペンションを造るにはどうしても重量が重くなり、よく動くサスペンションにすると、不必要な時に動きすぎてしまいます。こうした弱点は、オンロードで特に出てしまいます。そのため、多くのオフロード4WDはサスペンションをどのようなフィーリングにセッティングするか、非常に苦労して造られているのです。
新型ジムニーはオンロード、つまり日常でも快適に走れるよう、高次元なサスペンションセッティングがされました。一般道ではもちろんのこと、高速道路や山道でも不安なく「普通に」走ることができるようになりました。
ただし、ワゴンRやアルトなどと比べるとサスペンションの構造が異なるため、どうしてもユラユラと動く部分があり、心もとなく感じてしまう人も少なくありません。しかし、これはオフロードを走るためには必要なオフロード4WDの特性です。
ただし、ワゴンRやアルトなどと比べるとサスペンションの構造が異なるため、どうしてもユラユラと動く部分があり、心もとなく感じてしまう人も少なくありません。しかし、これはオフロードを走るためには必要なオフロード4WDの特性です。
もし、どうしてもオンロードでシャープに走りたいという人は、アフターパーツのサスペンションでチューニングしてみてはいかがでしょうか。
世界でもトップレベルの悪路走破性はさらに進化!
ジムニーの本領は、何と言ってもオフロード性能にあります。もちろん日常での走りも十分に考慮して造られていますが、林業関係者などでなければ、全体の1%にも満たないシーンのために、ジムニーのすべてがあると言っても過言ではありません。
その中のひとつの要素が、パートタイム式4WDです。乗用車にありがちなフルタイム式4WDと比べると、「別名:直結四駆」と呼ばれるパートタイム式4WDは、前後輪の駆動トルクが50:50で固定されます。
また、フルタイム式4WDのようなセンターデフを持たないことが功を奏して、四輪のうち前後対角上2輪がスタックしない限りは、駆動力を失うことがありません。
また、フルタイム式4WDのようなセンターデフを持たないことが功を奏して、四輪のうち前後対角上2輪がスタックしない限りは、駆動力を失うことがありません。
ちなみに旧型では、「2WD↔4WD↔4WD-L」を切り替えるのに、モデル中期からスイッチ式に変えていましたが、新型ジムニーからレバー式に戻りました。これは、悪路走行中にトランスファーが外れた時、スイッチ式ではリカバリーできない場合があったからです。
何よりもレバー式は、いま駆動輪がどのようになっているか、インジケーターが壊れても分かるという安心感があります。レバーは非常にスムーズに動き、MT車のシフトレバーを動かした時のような心地よいものになっています。
新型ジムニーのオフロード性能の向上において、もっとも大きなトピックは、「ブレーキLSDトラクションコントロール」の採用ではないでしょうか。オフロード走行では、舗装路とはまったく違う運転の知識や技術が求められます。
もちろんこうしたノウハウを知らずにオフロードを走るのは危険ですが、一方で知らずに入ってしまっても誰もが安全に脱出できるという性能が、現代のオフロード4WDには求められます。
新型ジムニーのオフロード性能の向上において、もっとも大きなトピックは、「ブレーキLSDトラクションコントロール」の採用ではないでしょうか。オフロード走行では、舗装路とはまったく違う運転の知識や技術が求められます。
もちろんこうしたノウハウを知らずにオフロードを走るのは危険ですが、一方で知らずに入ってしまっても誰もが安全に脱出できるという性能が、現代のオフロード4WDには求められます。
これを実現しているのが、「ブレーキLSDトラクションコントロール」「ヒルホールドコントロール」「ヒルディセントコントロール」といった電子デバイスです。これは、オフロードにある様々シチュエーションで、ドライバーのスキルに関わらず高い走破性を自動で発揮するメカニズムです。
オフロード走行では、いかにタイヤを地面に接地させて、トラクション(タイヤが前進するための摩擦力)を発揮させるかということが、走破のために必要となります。しかし、オフロードはそもそも低μ路(滑りやすい道)。例えオフロードタイヤを装着していたとしても、やはり知識や技術が必要でした。
しかし、ブレーキLSDトラクションコントロールは、センサーがタイヤの空転を感知すると、コンピューターがエンジン出力やブレーキなどを自動調整し、タイヤのトラクションを回復させてくれます。つまりドライバーはアクセルを踏み、ステアリングを切るだけ。大げさに言えば、誰でもオフロードを走ることができてしまうのです。
このブレーキLSDトラクションコントロールは、4WD-Hの時には全域で、4WD-Lでは発進時のみ作動します。もちろん、スイッチで解除することもできます。一見すると便利な機能に思えますが、時として電子デバイスの介入が邪魔になる時があるからです。
いずれにせよ、新型ジムニーのオフロード性能は、旧型ジムニーに比べて進化しています。サスペンションなどの動きは従来とさほど変わりませんが、エンジン特性が変わったため、非常に扱いやすくなりました。アクセルを少し踏むだけでトルクが得られるため、コントロールがしやすくなっています。
整地されたオフロードコースや林道・雪道はもちろん、少し荒れてタイヤが空転し始める状況でも、ブレーキLSDトラクションコントロールが利いて、スタックからの脱出は容易です。
整地されたオフロードコースや林道・雪道はもちろん、少し荒れてタイヤが空転し始める状況でも、ブレーキLSDトラクションコントロールが利いて、スタックからの脱出は容易です。
さらに5MTのギヤ比が変更になったことも、走りやすくなったファクターのひとつです。ファイナルギヤも含めて、1速から3速は約1%ローレシオ化されています。そのおかげで街乗りのシフトチェンジの忙しさが緩和されています。クルマを操るという点では面白みが減ったとも言えますが、ゆったりと運転できるようになったのは確かです。
新型ジムニーから採用されたメカのひとつに、ステアリングダンパーがあります。これは悪路の凹凸を通過する際に発生する反力でステリアングが取られる、いわゆるキックバックを軽減するためのダンパーです。この効果が絶大で、激しい凹凸を連続的に通過するようなシーンでも、手や腕にかかる負担が圧倒的に減り、的確な操舵ができるようになりました。
ちなみにステアリングダンパーは、高速走行時でオフロード4WDに発生しがちなステアリングの振動やふらつきを軽減する効果もあります。
ジムニーに乗ったからにはやっぱりオフロードを走ろう!
新型ジムニーがいかに進化したかの一部をお伝えしてきましたが、懐が広くなったとは言え、やはりオフロード4WD。前述の通り、トールワゴンなどの軽自動車と比べると、独特のドライブフィールがあります。スズキ ハスラーやワゴンRなどと同じと考えて購入すると、ちょっと痛い目を見ることも。
ユーザーのほとんどがオフロードを走ることはないと思いますが、潜在能力を含めて楽しむのがジムニーというスタイル。そのスタイルを満喫するには、多少の我慢を要するクルマなのです。そして、その我慢はチューニングという方法で解消するという楽しみも、ジムニーにはあります。
おそらくジムニーというクルマおいては、すぐに下りてしまうユーザーと、ずっと乗り続けるユーザーに分かれるのではないでしょうか。これまでとはちょっと違う冒険をして、新しい世界を積極的に見てみたい。そんな人がジムニーに向いている気がします。