新型ジムニーで林道を走る時の基礎知識

スズキ ジムニー

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ようやく新型ジムニーが巷に出回りだしていますが、同モデルが愛車となったことで、オフロード走行へ興味を持つ人が多いと聞きます。オフロード走行やクロスカントリー走行の経験がない…という人にとって、その入口となるのが「林道」。今回は、林道を走る前に知っておきたい基礎知識をお伝えします。

文/写真・山崎 友貴

山崎 友貴|やまざき ともたか

四輪駆動車専門誌、RV誌編集部を経て、フリーエディターに。RVやキャンピングカー、アウトドア誌などで執筆中。趣味は登山、クライミング、山城探訪。小さいクルマが大好物。

山崎 友貴
Chapter
林道は基本的に林業に使うための道
通行禁止道路に入らないことが林道走行の原則
林道走行の鉄則は「スローダウン」
林道の走行に無理は禁物!引き返すという勇気も必要
年々走れる林道は減っているが…

林道は基本的に林業に使うための道

オフロード(クロスカントリー)タイプSUVの人気が再燃していますが、特に新しいジムニーを購入した人の中には、「せっかく買ったのだから、オフロードを走ってみたい」と考える人が少なくないようです。

ジムニーやランドクルーザーなどのオフロードSUVは、もともと道なき道を走ることを前提で設計されており、非常に優れた悪路走破性を持っています。本格的なクロスカントリードライブを見たら、きっと多くの人が「クルマって、こんな所を走れるんだ!」と驚くはずです。

しかし、いくら優れた走破性を持つクルマでも、ドライバーが未熟では性能を発揮できませんし、転倒・大破の危険が伴います。オフロードを走ったことがないという人は、まず砂利道(フラットダート)の林道などで経験を積むというのがセオリーになっています。

さて、林道はその名の通り山の中を通っている道で、本来は林業のために使うものです。そのため、林道の多くは一般車両通行止めだったり、自粛を促している道がほとんどです。

ただし、一部の林道は観光用や登山用になっていたり、地元住民の生活道路としても使われているため、自己責任で通行してくださいというようなグレーゾーンとなっています。いずれにせよ、一般道とは性格が異なる林道ですので、走行するにはそれなりのマナーと知識が必要となります。

通行禁止道路に入らないことが林道走行の原則

まず林道走行の大前提ですが、「一般車両通行止め」と看板などに書かれた林道は、入ってはいけません。またゲートが閉じられた道は、もちろん通行止めです。オフロードバイクなどは、ゲートの脇をすり抜けて通行している人がいるようですが、これは重大なマナー違反。

通行止めにしているのには、様々な理由があります。その中で最も大きな理由が「安全」。走行することによって大きな事故に繋がる可能性を考えて、道路管理者が通行止めにしていることが少なくありません。

林業の妨げになるから…という理由で、通行止めにしていることもあります。多くの車両が通行することで、道路がダメージを受けて、林業に使えなくなるという理由で、一般車両を排除している場合もあります。

ちなみに、通行止めの林道でも、その先に明確な理由があれば、通行許可が出る場合があります。例えば、道の先に有名なビュースポットや撮影スポットがあるとか、自然観察に使いたいなど。そういうケースでは、道路管理者である自治体や営林事務所などに連絡を取って理由を伝えれば、通行許可が下りる場合もあります。

なお、年中通行可能な林道でも、どんな走りをしても構わないわけではありません。林道は一般道よりも難易度が高く、危険が多く潜んでいます。しかも事故を起こせば当然のことながら自己責任となりますし、場合によっては自動車保険が適応されない場合もあります。リスクが多くあるということを知っておいた上で、走るべき道なのです。

林道走行の鉄則は「スローダウン」

モータースポーツの中で「ラリー」という競技がありますが、日本では道路管理の観点から、林道で競技を開催することがほとんどです。ラリーは未舗装路を、いかに目標タイムで走るかということが主眼になるため、平均速度もかなり上がります。

しかし、これはあくまでも競技で、JAFが道路管理者の理解と許可を得て行っているもの。一般の通行車両は、ラリー車のようにはいきません。

未舗装路の林道では、タイヤが舗装路のようにトラクションやグリップ力を得ることができません。そのため、ハイスピードになると、想像もしないような挙動になることがあります。

最悪の場合、スリップしたまま崖下に転落という事故も発生しています。また事故だけでなく、メカニカルなトラブルを誘発する恐れもあります。林道を走る時は、とにかくゆっくりと走るのが鉄則です。

さてクロスカントリーSUV、中でもパートタイム式4WDの場合は、2WDから4WDへの切り替えが必要になります。非常によく整備されたフラットダートの路面だと2WDのままで走ることが可能ですが、林道に不慣れな内は必ず4WDにしておきましょう。

ランドクルーザーなど、フルタイム4WDモードが付いている車種は、4WD Lock(ランドクルーザーだとH4LやL4Lと表示)モードに切り替えます。ちなみに切り替えは舗装路と未舗装路の境目で行いましょう。

パートタイム4WD式の場合、乾燥した舗装路で直結状態の4WDしてしまうと、タイトコーナーブレーキングという現象によって、コーナーなどで転倒してしまう恐れがあります。

トランスファーには、4WD-L(LOW)というギアが付いていますが、これはより大きな駆動力を発揮できる低速ギアです。ランドクルーザーやジープ ラングラーといった大排気量のSUVの場合は、4WD-Hでも林道で十分な駆動力を発揮しますが、660ccのジムニーは4WD-Lにした方が走りやすいと言えます。

4WD状態にしたら、次にシートポジションを合わせます。オフロード走行のシートポジションは、一般的なシートポジションと異なっています。まずシートバックは、直角より1ノッチほど倒します。

上体が寝ていると、とっさにステアリングを回すことができなかったり、前方の視界が悪くなるからです。次にシートの位置。ブレーキを思い切り踏み込み、膝が少し曲がる程度。MT車の場合はクラッチベダルも踏み、最後までしっかりと踏み込める位置に前後を合わせます。

最後にステアリングですが、10時10分の位置を軽く握り、肘が軽く曲がるくらいの位置に調整します。コラプシブル機能がない場合は、シート位置で調整。チルトは、握った拳の高さが肩よりも少し下に来る位置に合わせます。

この状態で、スムーズに「送りハンドル」ができたら適正位置です。ちなみにハンドルは親指をステアリングホイールにかけて握り込むのではなく、ステアリングホイールの上に載せます。握り込むと、路面からの衝撃でハンドルが回ってしまった場合、指をいためてしまうからです。

シートポジションの調整が済んだら、いよいよスタートです。ちなみに、林道ではヘッドランプかフォグランプを必ず点灯しましょう。林道は見通しが悪いため、点灯することで自車の存在を対向車にいち早く報せることができるからです。

林道の走行に無理は禁物!引き返すという勇気も必要

美しい自然の中を走っていると、 SUVを選んで本当に良かったという気持ちになります。普通の車では走れないようなシチュエーションでも、オフロードSUVはグングン進んでしまいます。しかし頼もしい一方で、これが命取りになる場合もあることを知っておきましょう。

昨今の林道は、台風などの自然災害の影響で、非常に荒れた状態になっています。特に、大雨による浸食が酷く、時として深い溝が掘られた状態になっている場合があります。また落石や倒木が道を塞いでる場合も。危険に出くわしたら、無理に通過しようとせず、すぐに引き返すという選択も大切です。

ちなみに、溝は深さに関わらず、筋に対して斜めに進入するのがセオリーです。ちょうど「イ」の字のように斜めにアプローチすることで、4つのタイヤのトラクションを有効に使うことができます。アクセルをゆっくり踏み、タイヤを一輪ずつ溝に落としていくような感覚で進みます。

ちなみに道と並行に掘れた立て溝は、タイヤで溝をまたぐようにして走りましょう。深い轍も同様です。溝にタイヤを落としてしまうと、ハンドルのコントロールが利かなくなったり、車体の下部を擦ったりします。最悪のケースだと、スタックや転倒につながります。「溝は跨ぐ」というのが、基本です。

林道を走っているとよく出会うのが、排水のための溝や段差です。こうした場所は、そのままのスピードで通過するのではなく、必ず手前で一時停止。そしてゆっくり乗り越えます。速度が乗ったままで通過すると、車内に大きな衝撃が伝わる上に、タイヤなどのパンクに繋がる場合も。

また水溜まりでも、必ず手前で一時停止して、ゆっくりと進みます。TV CMなどでは派手に水しぶきなどを上げる場合がありますが、下回りやエンジンルーム、そしてボディが汚れるばかりで何のメリットもありません。かえってメカニズムのトラブルに繋がることがありますので、水を跳ね上げて走るのは控えるべきです。

年々走れる林道は減っているが…

実はここ数年で、クルマが走行できる未舗装路の林道がどんどん減っています。理由としては、マナーを守らないドライバーが多いことや、重大事故が発生しているからです。また大型台風などの自然災害の影響で、道が崩れてしまうといった理由も挙げられます。

それでも、日本はもともと林業王国でしたので、探して見ると林道は日本に無数にあるのです。林道を探す場合、林道専門のガイドブックやインターネットの情報を見るという手もありますが、手っ取り早いのが「ツーリングマップル(昭文社刊)」でチェックすることです。

自分がドライブに行きたい方面を地図で確認してみると、未舗装路林道がどこにあるか一目で分かります。ただし、地図にしてもネットの情報にしても、古くなっていることが多々あります。通行止めになっていたり、舗装化されていたり…冬季には閉鎖する林道も少なくありません。

林道に出かける前は、管理している自治体や営林事務所などに連絡して、通行できるかを確認するのが一番確実です。なお、ビギナーでも走りやすい林道としては、東であれば中津川林道(埼玉県)や金ヶ岳林道(山梨県)、西であれば剣山スーパー林道(徳島県)が挙げられます。

これらの林道は比較的整備が進んでおり、フラットなダートなので走りやすくなっています。ただし閉鎖している場合もあるので、事前に管理者に確認するといいでしょう。ただし、どんなに整備された林道でも、舗装路以上に危険がつきもの。

ビギナーはできるだけ経験者に連れていってもらうか、2台以上で林道に入ることをオススメします。また、タイヤのパンク対策や、確実な通信手段の確保、水と食料の携行を忘れないでください。
しつこいようですが、昨今の林道は自然災害の影響で、非常にコンディションが悪くなっています。特に大型のオフロードSUVの場合は、通行するのにギリギリの道幅しかない場所も。場所によってはコンパクトなジムニーでもきつい所があります。

基本的に林道は路肩が非常に弱いため、少しの加圧でも崩れ落ちる場合があります。もし「これは難しい」と感じたら、必ず引き返しましょう。自然の懐に入り込む林道ドライブは、やはりオフロードSUVだから安心してできます。愛車のトランスファーを4WDにして、その驚きの性能を一度は体感してみてください。
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