運転席が真ん中!?珍しいセンターシートの車【2025年最新版】

マクラーレン F1

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一般的な乗用車では、運転席は車体の左右どちらかに配置されています。これは乗り降りのしやすさなど実用面を優先した結果です。しかし世の中には、まるで戦闘機のコクピットのように運転席が車体中央に鎮座する珍しい車も存在します。本記事では、2025年時点で注目すべき運転席が真ん中にある車を厳選し、それぞれの特徴や誕生の背景、豆知識を交えながら紹介します。運転席が中央にあることで生まれる独特の魅力やエピソードを通じて、センターシート車の世界を探ってみましょう。

CARPRIME編集部

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Chapter
運転席が真ん中にある車①:マクラーレンF1
理想を追求した3シーター・センターシートレイアウト
「史上最高のスーパーカー」と呼ばれる理由
運転席が真ん中にある車②:BMW Z13 コンセプト
3座席レイアウトを持つシティカー
市販化されなかった理由とその先進性
運転席が真ん中にある車③:トヨタ KIKAI
機械の魅力を前面に押し出した3人乗りレイアウト
「機械を五感で味わう」ためのユニークな仕掛け
運転席が真ん中にある車①:メッサーシュミット KR200
戦闘機メーカーが生んだタンデム2人乗りマイクロカー
エンジン逆回転で後退するユニークな仕組み
運転席が真ん中にある車⑤:ダイハツ ミゼット
1人乗り・中央座席だった初期型ミゼット
その後の進化と、後継車ミゼットII
センターシート誕生の背景と歴史
原点:航空機と黎明期のレーシングカー
市販車への挑戦:バブルカーと幻のフェラーリ
転換期:マクラーレン F1が実現した究極のドライバーズカー
21世紀における進化と多様化
EV時代における新たな可能性
まとめ:センターシート車の魅力とは

運転席が真ん中にある車①:マクラーレンF1

マクラーレン F1

1990年代に登場したマクラーレンF1

マクラーレン F1

1990年代に登場したマクラーレンF1

理想を追求した3シーター・センターシートレイアウト

世界的なレーシングチームであるイギリス・マクラーレンが、1992年に発表し翌年からデリバリーを開始した初の市販ロードカーが「マクラーレン・F1」です。

設計を手掛けたのは伝説的デザイナーのゴードン・マーレー。車体中央に運転席を配置し、BMW製6.1リッターV12エンジンをミッドシップ搭載した3シーターのスーパースポーツカーでした。

ドライバーの左右斜め後方に2席のパッセンジャーシートを配した独特のレイアウトにより、運転席は文字どおり「クルマのど真ん中」に位置します。このセンター配置は、理想的な重量バランスと広大な前方視界を実現するためのもので、「世界最高のドライビングマシン」を目指したマクラーレンF1ならではのこだわりでした。

「史上最高のスーパーカー」と呼ばれる理由

マクラーレンF1のセンターシートは画期的でしたが、その約30年前にフェラーリが発表したコンセプトカー「365P ベルリネッタ・スペチアーレ」(1966年)で既に採用されていました。もっとも、市販車としてこのレイアウトを実現したのはマクラーレンF1が世界初です。

マクラーレンF1は発売当時「世界最速の市販車」としても知られ、1998年のテスト走行では最高速度391km/hを記録(公式記録は平均速度386.4km/h)。これは2005年に破られるまで、長らく市販車の世界最速記録を保持した驚異的な性能です。

こうした伝説的なスペックに加え、エンジンルームの熱対策として断熱材に本物の金箔を使用するなど、細部まで徹底した設計も相まって、マクラーレンF1は今なお「史上最高のスーパーカー」の一台として称えられています。

なお、このセンターシート思想は21世紀にも受け継がれており、ゴードン・マーレー自身が設立したGMA社の「T.50」(2022年)やマクラーレンの「スピードテール」(2019年)といった後継モデルが登場していることからも、その魅力がいかに特別であるかがうかがえます。

運転席が真ん中にある車②:BMW Z13 コンセプト

BMW Z13 コンセプト

BMWが1993年に発表した都市型コンセプトカー「Z13」

3座席レイアウトを持つシティカー

BMW Z13は、1993年のジュネーブモーターショーで披露されたBMWのコンセプトカーです。外見は3ドアハッチバックのような小型車ですが、車内レイアウトは当時話題となっていたマクラーレンF1と同様に、運転席を車体中央に置き、その後方左右に乗席を配置した3人乗りとなっていました。

Z13は都市での使用を想定した低燃費シティカーとして開発され、車体後部に小型エンジンを搭載。エンジンにはBMWのバイク「K1100」用の直列4気筒(1092cc)を流用し、最高出力は約82馬力に抑えられていました。車重はわずか830kgと非常に軽量で、日常ユースには十分な性能を備えていたと言えます。

一方、エンジンがない車体前部は衝撃吸収のためのクラッシャブルゾーンとして活用され、安全面にも配慮された先進的なレイアウトでした。

市販化されなかった理由とその先進性

興味深いことに、BMW Z13は「現代版イセッタ」とも呼ぶべき存在でした。当時BMWは、戦後に成功を収めた超小型リアエンジン「イセッタ」の再来を模索していたと言われます。しかし、Z13がコンセプトモデルのまま市販化されることはありませんでした。

その背景には、BMWが1994年にイギリスのローバー社(MINIブランドを保有)を買収したことが大きく影響しています。自社で新たな小型車を開発する必要性が薄れたBMWは、Z13計画を棚上げにしたのです。

幻に終わったZ13ですが、そのアイデアは後年のBMWの電気自動車「i3」にも通じるものがあり、先進的な都市型モビリティの先駆けとして評価されています。運転席を中央に配置するという大胆な発想を、スーパーカーではなく実用車で追求した点でも、極めてユニークな一台と言えるでしょう。

運転席が真ん中にある車③:トヨタ KIKAI

トヨタ KIKAI

2015年の東京モーターショーで世界初公開されたトヨタ「KIKAI」コンセプト

トヨタ KIKAI

2015年の東京モーターショーで世界初公開されたトヨタ「KIKAI」コンセプト

機械の魅力を前面に押し出した3人乗りレイアウト

トヨタ KIKAI(キカイ)は、機械仕掛けの魅力を全面に押し出した異色のコンセプトカーです。2015年の東京モーターショーで初披露され、一目見ただけで強烈な存在感を放ちました。車名の通り、エンジンやサスペンションなど通常は車体に隠されるメカニズムを、あえて露出させたデザインが特徴です。

キャビンはコンパクトな三角形のレイアウトで、運転席を車体中央に配置し、その左右後方に2つの座席をオフセット配置した3シーターを採用しました。

中央に座るドライバーは車両感覚を直感的に掴みやすく、同時に左右の同乗者と適度な距離感を保ちながらコミュニケーションを取りやすい、ユニークな室内空間を提案しています。

「機械を五感で味わう」ためのユニークな仕掛け

KIKAI最大の特徴は、「車という機械そのものの美しさや面白さを五感で味わう」というコンセプトに基づいた構造にあります。例えば、フロントウインドウの足元には小さな覗き窓が設けられ、走行中にタイヤやサスペンションの動き、路面の流れを直接視認できます。

メーター類もアナログ風で意図的にレトロな雰囲気を醸し出し、「人とクルマ(機械)の関係を再構築する」ことを目指したとトヨタは説明しています。

パワートレインは1.5リッターのハイブリッドシステムをミッドシップに搭載し、環境技術と機械の魅力を両立させた点も注目されました。残念ながらKIKAIは純粋なショーモデルのため市販の予定はありませんでしたが、その大胆なセンター運転席レイアウトと「見せる機械美学」は、多くの来場者の心を惹きつけました。

運転席が真ん中にある車①:メッサーシュミット KR200

メッサーシュミット KR200

1950年代のドイツで登場した超小型車メッサーシュミットKR200

戦闘機メーカーが生んだタンデム2人乗りマイクロカー

第二次大戦中に軍用航空機メーカーだったメッサーシュミット社が、戦後に生み出したマイクロカーが「メッサーシュミット KR200」です。戦後、航空機製造を禁じられた同社は、1950年代に極小の三輪自動車ビジネスへと転換し、1955年にKR200を発売しました。

当時の西ドイツで流行した“バブルカー”(超小型車)の代表格として人気を博しました。

KR200最大の特徴は、そのシートレイアウトです。操縦席(運転席)は車体中央の最前部にあり、もう1名の乗員はそのすぐ後ろに縦列で座るタンデム配置になっています。まるで複座式の戦闘機を連想させるスタイルで、車体上部には航空機のキャノピーのような風防を備え、ドアの代わりにこの風防を横に開いて乗降します。

エンジン逆回転で後退するユニークな仕組み

KR200は全長約2.8m、幅約1.2mほどの超コンパクトな3輪自動車で、後部に空冷2ストローク単気筒エンジン(191cc)を搭載しています。変速機は4速ですが、驚くべきことにバックギア(後退用の歯車)がありません

その代わり、エンジン自体を逆回転させることで後退走行を可能にするという、極めてユニークな機構を採用していました。

透明なアクリル製ドーム型ルーフにちなんで「バブルカー」と呼ばれたこの車は、BMWイセッタなどとともに戦後ヨーロッパの庶民の足を支えた存在です。

当時の広告では「全天候型キャビンスクーター」とも称され、雨風をしのげるスクーター代わりとして重宝されました。生産は1964年に終了しましたが、そのレトロ未来的なデザインと中央運転席レイアウトは、現在でも多くの愛好家から人気を集めています。

運転席が真ん中にある車⑤:ダイハツ ミゼット

ダイハツ ミゼット DK/DS型

日本の戦後を象徴する三輪軽トラック、初代ダイハツ・ミゼット(DKA型, 1957年)

1人乗り・中央座席だった初期型ミゼット

日本からは昭和の名車、ダイハツ・ミゼットを紹介します。ミゼットは1957年(昭和32年)に発売され、日本の高度経済成長期を支えた小型オート三輪トラックです。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』でおなじみの、ノスタルジックな乗り物としてご存じの方も多いでしょう。

映画に登場したのは後期の2人乗りモデル(MP型)ですが、1957年に登場した初期モデル(DKA型)は1人乗り専用で、運転席が車体の中央に配置されていました。 車体前面に風防こそあるものの側面にドアはなく、屋根と背面は幌(ほろ)で覆われたシンプルな構造。

ハンドルはオートバイのようなバータイプで、ドライバーは中央の運転席にまたがる独特の乗車姿勢をとりました。まさに「屋根付きバイク」といった出で立ちで、その軽快さから当時「街のヘリコプター」という愛称でも親しまれました。

その後の進化と、後継車ミゼットII

初期型ミゼット(DKA型)は、排気量250ccの空冷2ストローク単気筒エンジン(10馬力)を搭載した実用車でありながら、中央にひとりでちょこんと座って運転する姿は、どこか愛嬌がありました。

その後、より扱いやすくするため、1959年には丸型ハンドルを採用し2人乗りを可能にした改良型(MP型)が登場し、こちらが映画の題材にもなったモデルです。

さらに時代は下り、1996年にはレトロな雰囲気を持つ四輪軽自動車「ミゼットII」も発売されました。ミゼットIIにも1人乗り仕様が存在しましたが、運転席は完全な中央ではなく、運転のしやすさを考慮してやや右側にオフセットされた配置でした。

こうした設計の違いも含め、初期型ミゼットは日本におけるセンターシート車の草分けとして、そして時代を彩った働き者として記憶されています。

センターシート誕生の背景と歴史

トヨタ KIKAI

トヨタ「KIKAI」コンセプト

原点:航空機と黎明期のレーシングカー

自動車において運転席を中央に置くアイデアは、実は航空機レースカーから着想を得たものです。戦闘機のコクピットは操縦席を機体中心に据えることで視界と重量バランスを最適化しており、この発想が四輪車の設計者にもインスピレーションを与えました。

1920〜30年代のグランプリレーサーやインディカーでは、車体左右の重量差をなくすためにドライバーを中央に配置する試みが行われています。

市販車への挑戦:バブルカーと幻のフェラーリ

第二次大戦後、航空機メーカーが民需転換する中で誕生した三輪バブルカー(メッサーシュミット KR シリーズなど)は、機体製造のノウハウを活かし“キャビンスクーター”として中央操縦席を採用。これが市販車としてセンターシートを実装した最初期の例といわれています。

1960年代に入ると、ロードカーでもセンターシートの可能性が模索されました。代表例がフェラーリのコンセプトカー「365P ベルリネッタ・スペチアーレ」(1966年)で、3人乗りレイアウトにより理想的なハンドリングと視界を狙いました。しかし当時は安全基準や量産コストの壁が高く、市販には至りませんでした。

転換期:マクラーレン F1が実現した究極のドライバーズカー

大きな転機となったのが1990年代です。レーシングテクノロジーを公道車へ落とし込む流れが加速し、マクラーレン F1(1992年発表)が登場します。

BMW製V12エンジンをミッドシップに積むこのスーパーカーは、センターシートと左右後方の同乗者席という独創的な3座席を量産車で実現し、「世界最速の市販車」として名を馳せました。以降、センターシートは“究極のドライバーズカー”を象徴するアイコンとなります。

21世紀における進化と多様化

21世紀に入ると、軽量高剛性なモノコック構造や電子制御技術の進歩で設計の自由度が増し、コンセプト段階ながらBMW Z13(1993年)やトヨタ KIKAI(2015年)など、都市型の小型車でも中央運転席が提案されました。

また、ハイパーカーの分野ではマクラーレン スピードテール(2019年)や、F1の設計者ゴードン・マーレー自身が手掛けたT.50(2022年)がセンターシートを採用し、卓越した前方視界と運動性能を実証しています。

EV時代における新たな可能性

近年はEV(電気自動車)シフトによって床下にバッテリーを敷き詰めるプラットフォームが主流となり、キャビン設計の自由度がさらに高まりました。

左右ハンドルの違いを吸収できる中央運転席は、一人乗りのパーソナルモビリティやシェアリング用途のコンセプトEVで再び注目されています。

このように約100年の歴史を経て、センターシートは常に「軽量化」「視界」「理想的な重量配分」という普遍的なテーマとともに進化を続けているのです。

まとめ:センターシート車の魅力とは

以上、運転席が真ん中にあるユニークな車種5台をご紹介しました。スーパーカーからコンセプトカー、昭和のマイクロカーまで、そのジャンルや時代はさまざまですが、いずれもセンターシートだからこそ生まれた独自の魅力を備えています。

中心に座ることで得られる運転の一体感視界の良さデザイン上のインパクトなど、センターシート車には他のクルマにはない特別な体験があります。近年ではハイパーカーや超小型モビリティにおいてもセンター配置の採用例が現れ、例えば前述のマクラーレンの後継モデルや、一人乗りEV試作車で運転席を中央にして左右ハンドルの違いを吸収するアイデアも登場しています。

少数派ではありますが、だからこそ見る者の心を惹きつけるセンターシート車。興味を持たれた方は、ぜひこれら珍しいクルマの奥深い世界を探求してみてはいかがでしょうか。
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