今は当たり前になった電子デバイスを初めての搭載した国産車は?

2001 シーマ

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現在の自動車は電子制御の塊となっている。それはハイブリッドのような電動パワートレインに限らない。安全面をサポートする機能のほとんどは電子制御によるものであるし、ADASと呼ばれる先進運転支援システムも欠かせない機能となっている。

では、そうした電子制御・電子デバイスのルーツはどのクルマにあったのか。ABSやESCなどいまでは標準装備が当たり前になっている電子デバイスを日本で初めて搭載したモデルを振り返ろう。

文・山本 晋也

山本 晋也|やまもと しんや

自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。

山本 晋也
Chapter
車線維持機能は日産シーマが2001年に世界初採用
車線維持アシスト機能は21世紀になって生まれた
横滑り防止装置の最初は1995年、トヨタ クラウンマジェスタ
雪道でも思い通りに曲がれるクラウンマジェスタ
SRSエアバックはホンダ レジェンドが2つの日本初
SRSエアバックはレジェンドが2つの日本初を実現
ABSは1982年のホンダ プレリュードが日本初
ABSという名前が使えなかった黎明期
クルーズコントロールのルーツは1964年のクラウンエイト
日本初のクルーズコントロールは「電気式オートドライブ」

車線維持機能は日産シーマが2001年に世界初採用

車線維持アシスト機能は21世紀になって生まれた

高速道路での疲労軽減につながるADAS機能は、クルーズコントロールと車線維持をアシストする操舵支援機能によって構成されている。白線などの区画線を検知して、車両が道に沿って走るようにアシストする車線維持機能を世界で初めて搭載したのは国産車だった。

それこそが2001年にフルモデルチェンジした日産のフラッグシップ「シーマ」だ。『レーンキープサポートシステム』と名付けられた操舵支援システムは、車線を認識するCCDカメラと演算装置、そして操舵力を生み出すステアリングアクチュエーターからなっていた。

その構成は最新のADASと基本的に変わりない。なお、当初は横風などで車両の安定性が損なわれたときのフォローをするシステムという風に理解されていた。そのためコーナーでは最終的に機能はキャンセルされるという制御だった。

横滑り防止装置の最初は1995年、トヨタ クラウンマジェスタ

雪道でも思い通りに曲がれるクラウンマジェスタ

「横滑り防止装置」の名称は各メーカーばらばらで統一されていないのでわかりづらいという声もあるが、国産車で初めて横滑り防止装置を装着したのはトヨタ クラウンマジェスタ(1995年)だった。

当時もいまもトヨタの呼び名は「VSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)」で、滑りやすい路面などで車両の安定性が損なわれた際に、ABS機能とトラクションコントロール機能を統合制御して姿勢を安定させるというもの。

クラウンマジェスタという高級車でありながら、VSCのおかげもあって雪道などでは電子制御を持たないスポーツカーを置いてきぼりにするほどのコーナリング性能を見せた。ちなみに、トラクションコントロールを日本車で初採用したのは、1987年にフルモデルチェンジしたクラウンだ。

このトラクションコントロールでスロットル開度だけでなく、駆動輪のブレーキ制御も行なっていた。

SRSエアバックはホンダ レジェンドが2つの日本初

SRSエアバックはレジェンドが2つの日本初を実現

衝突時に一気にエアバックを膨らませ、衝撃を吸収することで乗員のケガを防ごうというのが「SRSエアバック」。世界的にはゼネラルモーターズが1973年に採用したのが初めてとなっているが、日本では1987年にホンダ レジェンドがマイナーチェンジで採用したのが初めてとなっている。

当時の車両価格は223万円~364.4万円というレジェンドで、SRSエアバックが標準装備されたのは最上級グレードのみ。そのほか一部グレードに20万円のオプションで装着することができた。

このとき装着されたのは運転席用SRSエアバックのみだったが、助手席用SRSエアバックを日本で初めて採用したのもレジェンドだった(1990年にフルモデルチェンジ時)。

ABSは1982年のホンダ プレリュードが日本初

ABSという名前が使えなかった黎明期

日本車で初めて四輪ABS(アンチロックブレーキシステム)を採用したのはホンダのスポーティクーペ「プレリュード」。パテントの関係からABSという名称が使えず「4W-A.L.B(4ホイール・アンチ・ロック・ブレーキ)」と呼ばれたが、そのメカニズムは間違いなくABSそのものである。

ただし、ブレーキ圧の制御は5段階と最新のメカニズムと比べると見劣りするのも事実。それでも最大で毎秒10回のアンチロック動作(ブレーキを効かせたり、解除したりといったポンピングブレーキを繰り返す)というのは、人間にはできないワザとして安全装備として話題を集めた。

トランクリッドに貼られた「4W-A.L.B」のバッジもハイテク感とあわせて憧れとなった。

クルーズコントロールのルーツは1964年のクラウンエイト

日本初のクルーズコントロールは「電気式オートドライブ」

高速道路などを設定した速度で走り続けることができるクルーズコントロール機能は、ドライバーの負担を軽減する電子デバイスとして歴史が長い。日本で初めて、この機能を採用したがトヨタ クラウンエイト(1964年)で、「電気式オートドライブ」という名前でオプション設定されたのが最初だ。

ちなみにクラウンエイトは、日本の乗用車として初めてV8エンジンを搭載したクルマでもあり、パワーウインドウやコンライト(オートライト)を標準装備していた。フラッグシップらしい電子デバイス満載の一台だった。クラウンエイト自体は1967年に生産を終えているが、そのポジションからトヨタ センチュリーのルーツといえるモデルだ。
このように、電子制御・電子デバイスというのは高級車から採用されてきた。そのときは高級車だけの装備だと思ったものが軽自動車など庶民の乗るクルマまで拡大するというのは歴史が証明してきた通りだ。

歴史は繰り返すという、現代の高級車・高価格車に採用されている自動運転に近づく技術も、多くのユーザーが享受できる機能となることだろう。

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