【悲報】車の電子制御により運転が下手になる?
更新日:2024.09.09
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クルマ好きの会話で「運転がうまくなるクルマ」という表現がある。マツダ ロードスターなどは、その筆頭格といえるクルマだが、車両側のバランスが良いためベーシックな運転技術を学びやすいという意味合いで使うことが多い。
文・山本晋也
文・山本晋也
電子制御の車は、汎用性のない特殊な乗り方が身についてしまう?
つまり、しっかりと必要なだけ減速してコーナーに向かい、ステアリングを切って曲がり、アクセルを踏んでコーナーを脱出するといった一連の動作がうまく身に付き、そのテクニックに汎用性があるときに「運転がうまくなるクルマ」といった評価を得ることができるのだろう。
ということは、逆に電子制御などのクセがありすぎて汎用的なドラテクではうまく性能を引き出せないクルマもあるはずだ。それを「運転が下手になるクルマ」と表現することは適切とはいえないが、クルマの特性を引き出すために特別な運転テクニックを意識すべきクルマというのは存在する。
もちろん、どんなクルマであっても、それぞれの特性に合わせて汎用性のあるドライビングを少しずつアジャストしていく必要があるのだが、ここでは、特にクセの強いクルマになってしまう2つのメカニズムをピックアップして紹介しよう。
ということは、逆に電子制御などのクセがありすぎて汎用的なドラテクではうまく性能を引き出せないクルマもあるはずだ。それを「運転が下手になるクルマ」と表現することは適切とはいえないが、クルマの特性を引き出すために特別な運転テクニックを意識すべきクルマというのは存在する。
もちろん、どんなクルマであっても、それぞれの特性に合わせて汎用性のあるドライビングを少しずつアジャストしていく必要があるのだが、ここでは、特にクセの強いクルマになってしまう2つのメカニズムをピックアップして紹介しよう。
1、三菱ランサーエボリューション(スーパーAYC搭載車)
ハイテクによるスポーツドライビングの象徴ともいえるのが歴代ランサーエボリューション、通称「ランエボ」だろう。
なかでもスーパーAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)ディファレンシャルを採用したランエボ8以降のモデルは、駆動によるヨーモーメント(車両が回転する力)の制御が大きくなり、ドライビング自体を変えたという印象が強い。
最終進化形といえるランエボXでは、その独特のドライビング感覚は他のクルマとは完全に異なるものになった。いわゆる汎用性のあるドライビングというのはクルマの挙動を感じながら行なうものだ。これをクルマとの対話などと呼ぶこともある。
タイヤグリップが限界に近付いているのを感じながら、スピンモードに入ることを予測して、アクセルやステアリングを戻すことで車両を安定させるのが標準的なスポーツドライビングといえる。
しかし、スーパーAYCによるヨーモーメント制御に加え、駆動配分・ブレーキ制御・エンジン制御などを統合的に利用した車両制御技術「S-AWC」を採用したランエボXでは、そうしたフィードバック系のドライビングはクルマのパフォーマンスを引き出すのにはマイナスになってしまうこともある。
限界の判断はクルマ(機械)が行なうと信頼して、人間側は理想的な走りをイメージして、クルマを導くといった姿勢で臨むことがランサーエボリューションを速く走らせるポイントだ。そこまでわかっていても、「運転がうまい人」はついつい自分の経験則からコントロールしようとしがちだ。
しかし、ドライバーのセンシング能力がランエボXのそれと同等レベルでない限りは、人間の判断を優先すると速く走ることができない。ひとまず自分自身の判断を留めておき、クルマに委ねるという強い意志が求められるのが、ランサーエボリューション限定の速く走るためのドライビングなのだ。
なかでもスーパーAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)ディファレンシャルを採用したランエボ8以降のモデルは、駆動によるヨーモーメント(車両が回転する力)の制御が大きくなり、ドライビング自体を変えたという印象が強い。
最終進化形といえるランエボXでは、その独特のドライビング感覚は他のクルマとは完全に異なるものになった。いわゆる汎用性のあるドライビングというのはクルマの挙動を感じながら行なうものだ。これをクルマとの対話などと呼ぶこともある。
タイヤグリップが限界に近付いているのを感じながら、スピンモードに入ることを予測して、アクセルやステアリングを戻すことで車両を安定させるのが標準的なスポーツドライビングといえる。
しかし、スーパーAYCによるヨーモーメント制御に加え、駆動配分・ブレーキ制御・エンジン制御などを統合的に利用した車両制御技術「S-AWC」を採用したランエボXでは、そうしたフィードバック系のドライビングはクルマのパフォーマンスを引き出すのにはマイナスになってしまうこともある。
限界の判断はクルマ(機械)が行なうと信頼して、人間側は理想的な走りをイメージして、クルマを導くといった姿勢で臨むことがランサーエボリューションを速く走らせるポイントだ。そこまでわかっていても、「運転がうまい人」はついつい自分の経験則からコントロールしようとしがちだ。
しかし、ドライバーのセンシング能力がランエボXのそれと同等レベルでない限りは、人間の判断を優先すると速く走ることができない。ひとまず自分自身の判断を留めておき、クルマに委ねるという強い意志が求められるのが、ランサーエボリューション限定の速く走るためのドライビングなのだ。
2、ホンダ レジェンドほか(SH-AWD搭載車)
三菱のAYCと似たコンセプトといえるのがホンダのSH-AWD(スーパーハンドリング・オールホイール・ドライブ)だ。機械式と電気式があり、旧型レジェンドなどに積まれた前者はエンジンの出力を後輪ディファレンシャルで左右に振り分ける際にコーナリングを手助けするように左右の駆動力をコントロールしてヨーモーメントを制御するというものだ。
具体的には外輪に駆動力のほとんどを与えることで内向きのモーメントを生み出し、狙い通りのラインをトレースするよう挙動をコントロールするというものだ。この機械式SH-AWDは駆動力によってヨーモーメントを生み出す、つまりアクセルオフの状態ではそれほど機能しないことになる。
つまり、「クルマを曲げたい」と思ったらアクセルをオンにする必要があるのだ。いわゆる汎用的なドライビングでは、クルマが曲がらないと感じたときはアクセルを抜き、ブレーキをかけるなどして前輪の荷重を増やすというのが常套手段だ。
しかし、SH-AWD搭載車では「曲げるためにアクセルを踏む」というドライビングをする必要もある。もちろん、踏みすぎてはいけないのだが、アクセルを抜いていては、いつまで経ってもSH-AWDを活かした走りはできない。
空力重視のレーシングカーはスピードを上げることでダウンフォースが増えるため、アクセルを踏んでいくとコーナリング性能が上がるという話もあるが、同様にホンダのSH-AWDを活かすにも「曲げるためのアクセル・オン」がポイントになる。
つまり、特別なドライビングを意識しないといけない。もっとも、現行型レジェンドやNSXの採用している電気式SH-AWDは左右独立モーターによる駆動力をヨーモーメント制御に利用するというもので、機械式のそれほど特別なドライビングを意識することはなくなっているが、やはりスタンダードなドライビングテクニックとは異なる心構えが必要だ。
なお、NSXを公道で乗る限りは電子制御により、操作にリニアで素直な挙動に感じるよう躾られているので、いわゆる「うまい運転」を実行できているような気持が味わえる。ただ、これはクルマによって「うまくなった」と感じさせられているという面もあり、いわゆる「運転がうまくなる」とは違うともいえる。
具体的には外輪に駆動力のほとんどを与えることで内向きのモーメントを生み出し、狙い通りのラインをトレースするよう挙動をコントロールするというものだ。この機械式SH-AWDは駆動力によってヨーモーメントを生み出す、つまりアクセルオフの状態ではそれほど機能しないことになる。
つまり、「クルマを曲げたい」と思ったらアクセルをオンにする必要があるのだ。いわゆる汎用的なドライビングでは、クルマが曲がらないと感じたときはアクセルを抜き、ブレーキをかけるなどして前輪の荷重を増やすというのが常套手段だ。
しかし、SH-AWD搭載車では「曲げるためにアクセルを踏む」というドライビングをする必要もある。もちろん、踏みすぎてはいけないのだが、アクセルを抜いていては、いつまで経ってもSH-AWDを活かした走りはできない。
空力重視のレーシングカーはスピードを上げることでダウンフォースが増えるため、アクセルを踏んでいくとコーナリング性能が上がるという話もあるが、同様にホンダのSH-AWDを活かすにも「曲げるためのアクセル・オン」がポイントになる。
つまり、特別なドライビングを意識しないといけない。もっとも、現行型レジェンドやNSXの採用している電気式SH-AWDは左右独立モーターによる駆動力をヨーモーメント制御に利用するというもので、機械式のそれほど特別なドライビングを意識することはなくなっているが、やはりスタンダードなドライビングテクニックとは異なる心構えが必要だ。
なお、NSXを公道で乗る限りは電子制御により、操作にリニアで素直な挙動に感じるよう躾られているので、いわゆる「うまい運転」を実行できているような気持が味わえる。ただ、これはクルマによって「うまくなった」と感じさせられているという面もあり、いわゆる「運転がうまくなる」とは違うともいえる。
他にも…
代表的なものとして三菱「スーパーAYC」とホンダ「SH-AWD」を紹介したが、ほかにもメルセデス・ベンツの「カーブチルト・サスペンション」のように車体を内側に傾けるようにサスペンションを制御するという変わった仕組みも存在している。
また、トラクションコントロールやABSのクセにより、サーキット走行中にセーフモードになってしまうことも現代のクルマでは少なくない。こうしたケースでは車両がエラーと感じないように走らせるよう気を付ける必要もあり、特殊な乗り方が必要になったりすることもある。
一方でスポーツ走行であってもABSに完全に頼った走りをした方がタイムを削り取れることもある。電子制御に頼らないことで運転がうまくなるという時代でもない、という見方を持つことも必要だろう。
また、トラクションコントロールやABSのクセにより、サーキット走行中にセーフモードになってしまうことも現代のクルマでは少なくない。こうしたケースでは車両がエラーと感じないように走らせるよう気を付ける必要もあり、特殊な乗り方が必要になったりすることもある。
一方でスポーツ走行であってもABSに完全に頼った走りをした方がタイムを削り取れることもある。電子制御に頼らないことで運転がうまくなるという時代でもない、という見方を持つことも必要だろう。
山本晋也
自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。