小沢コージのものくろメッセ その15 女性にこそクルマは必要かもしれない

アヘッド ものくろメッセ

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クルマ好きというとなにかと男性が表に出てきがちだ。よくいるスーパーカーやヒストリックカー好きの自動車マニアはもちろん、タクシーやバスのような職業ドライバーやレーシングドライバーも大抵は男性だし、メカニック、コレクター、エンジニア、ライター、イラストレーターもだいたいそう。もちろん女性もいるが、メカニズムや歴史に対する知識や執着心では、脳の構造の違いか男性有利なのかもしれない。

text:小沢コージ [aheadアーカイブス vol.151 2015年6月号]
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その15 女性にこそクルマは必要かもしれない

その15 女性にこそクルマは必要かもしれない

だからといって男性のクルマ好きの方が凄いとか偉いとか、存在が深いということはないように思う。

先日とあるイベントで出会った人もそうだったが、女性は大抵クルマを理屈や前置き抜きの感性で選ぶ。その女性は自分のアヴェンシスを「相棒」と言い切った。毎日乗るけれど、飽きてないし、いつも楽しいと言っていた。

私はふと昔取材した新型ミニに乗る90歳のおばあちゃんを思い出した。彼女は見合い結婚の旦那が嫌いで踊りの先生として早くに独立。仕事の為に免許を取ってクルマに乗ったが、そのうち手放せなくなり、自分が本当に気に入ったクルマしか乗らなくなり、ミニを選んだ。

つくづく思うが女性、特に独立した女性にとってクルマはなによりも重要な道具であり、掛け替えのない相棒となりうる。

例えば地方における子育てママは、クルマがなくてはおちおち買い物にも送り迎えにも行けない。介護をする女性にとって、クルマ無しの送迎は考えられないだろうし、ヘルパーのクルマが来ない事もあるはずだ。

独身女性にしても、夜中はマイカーの方が安全な場合も多いし、運べる荷物の量も質も時間も格段に変わる。

最後に彼女たちから聞き、印象に残った言葉がある。「クルマの中ぐらいでしか泣けない」のだと。そうかもしれない。今や日常的に大人の涙を見ることはないが、泣いている人は少なくないはずだ。

恋愛、病気、仕事、家族、人生つらく哀しいことは多く、突発的に起こり、しかし大人たるもの好き勝手に泣くわけにはいかない。会社や家には人がおり、街や電車や飛行機はひと目につき、なかなか一人になれない。

だがクルマは違う。普段の仕事、生活をこなしながらも時に一人になれる。やはり人間が自由になれる空間として、最高レベルの発明なのだ。安全で、移動が出来て、物も運べる。これは男性にとってもそうだが、クルマという閉ざされた移動空間は、得難いものなのだ。

そういう意味で、闘う大人の女性にこそクルマは有用であり、自由に乗って欲しいし、好きに選んで欲しいと思う。もちろん狭くてカッコいいスポーツカーもいいし、時には大きな4WDでもオープンカーでもいい。ただ、できればその人なりに本当に運転が楽しめ、愛着が持てるクルマだといい。

クルマは人を自由にするだけでなく、色んな感情を解き放つことができる。運転そのものは度を超えると緊張をもたらすが、本質的に楽しい。基本的に人間は移動に快楽を感じる生き物だからだ。人生は楽しい事もあればツラいこともあり、多少はクルマの存在で救われることもあるのである。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。
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