小沢コージのものくろメッセ その16 クルマとヤンキーの切れない関係

アヘッド ものくろメッセ

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先日、某イベントで「クルマとヤンキー」についての話になった。この手はタブーと言ってもいいネタで、僕らの主要舞台である新車系自動車メディアにはほとんど載らない。なぜって「分からない」し、「見えない文化的対立」があるからだ。

text:小沢コージ [aheadアーカイブス vol.152 2015年7月号]
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その16 クルマとヤンキーの 切れない関係

その16 クルマとヤンキーの 切れない関係

恐らく僕らがやっている新車メディアはそのほとんどが欧米志向だ。ぶっちゃけ、メルセデス1番、BMW2番、ロールスロイスもっと偉い…みたいな暗黙のヒエラルキーがあって、その根本にはヨーロッパ信仰が眠っている。

頂点がドイツなのか、あるいはイギリスなのか、そこは案外曖昧。しかし、少なくとも日本車ではない。

ところがヤンキー系は、もちろん欧米指向もあるが、基本は日本である。頂点にはおそらくハコスカやケンメリが存在し、独特のカルチャーを築いてきた。そしてそれはいわゆる新車系専門誌と相容れない。 

イメージ的に言うと「優等生」「不良」、「インターナショナル」「ドメスティック」、「ワイン」「チューハイ」的な文化的対立がある。もちろんこのあたりの要素比較は人によって微妙に違うのだけれど。

だが、先日知り合いの自動車ショップに言われたのだ。「小沢さん、僕らが日本で成功するには実は〝ヤンキー感覚〟が必要なんですよ」と。

そう、昔から自動車評論家が褒めるクルマは売れない! という都市伝説が一部で流れているように、新車メディア系が指向するクルマと、一般大衆で売れるクルマは微妙にズレている。

もちろん今のハイブリッドブームは、全世界的な燃費クライシスに突き動かされたものなのでほとんど関係ない。

しかし、例えばアルファード&ヴェルファイアのようなゴージャスミニバン、さらにその下のトヨタ・エスクァイアのブームを、どの自動車評論家がマトモに予言し、現象を説明できただろうか。

それは、ヤンキー独特のデザインセンスであり、ファッションセンス、もっと言うと根本的な動作原理を解さない限り不可能なのだ。

詳しくはここ数年言われている「マイルドヤンキー」の文献を見ればいいが、簡単に言えばキラキラ系を好み、身内を愛し、地域から出たがらない内向きの行動様式を取る。その当たりは本に詳しく書いてあるが、問題は自動車におけるデザインセンスだ。

単にキラキラ系、具体的にはクロームメッキ系が多ければいいってモノじゃない。だったらイギリス車がもっとウケるはずだ。

ヤンキー型自動車文化を真に理解するには、旧型アルファードより旧型ヴェルファイアがなぜウケ、ヴォクシーよりエスクァイアがカッコいい理由を説明できなければならない。

もっと言うと、凄いのはハリアーだ。あれは決してヤンキーだけでなく、普通の自動車ファンにもウケているけれど、確実にインターナショナルデザインではない。もっとヤンキー心に刺さる日本独自の「カッコいい!」の要素が眠っている。

さらにはブラックメタリックに対するこだわりだ。これは完全に夜の世界のダークスーツの匂いがする。自動車関係者はヤンキー感覚を正しく理解せよ! これは冗談のようで本当の話なのである。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。
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