「グライダーの滑空感」が開発の原点。新型「日産リーフ NISMO」に込められた開発陣のこだわり

リーフNISMO
日産自動車は、新型「日産リーフ NISMO」の発表披露会を開催した。

会場には、商品企画、デザイン、車両開発を担当したメンバーが登壇。新型リーフ NISMOの開発コンセプトや、空力性能、走行性能、インテリアに込めたこだわりについて語った。

新型リーフ NISMOが掲げる商品コンセプトは、「駿足のインテリジェント・スポーツクロスオーバー」。単に速さを追求するのではなく、EVならではの滑らかさや静粛性、空力性能を生かしながら、NISMOらしい操る楽しさを加えたモデルとして開発された。

CARPRIME編集部

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開発のヒントはグライダーの滑空感
長年のリーフユーザーとスポーツカーオーナーを想定
デザインキーワードは「流れ」と「精度」
レッドアクセントを「アルテリア マグマ」として再解釈
約40mm延長したダックテールスポイラー
新開発の「ボートシェイプ&スポイラー」
ボディの造形を際立たせるNISMOステルスグレー
車両開発のテーマは乗員全員の「一体感」
アリアNISMOの経験とテストドライバーの感性を融合
EV特有の重量をどう制御するか
回生パドルで滑空感とスポーツ走行を両立
RECAROシートの座面角度もミリ単位で調整
スペックだけでは表せないNISMOらしさ

開発のヒントはグライダーの滑空感

商品企画を担当した饗庭(あいば)チーフプロダクトスペシャリストは、新型リーフ NISMOの特徴として、4つのポイントを挙げた。

ひとつ目は、NISMOならではのキビキビとした走り。ふたつ目は、リーフならではの航続距離と先進装備。3つ目は、空力性能を徹底的に追求したNISMOデザイン。そして4つ目が、グライダーのような爽快感を味わえる車内空間だ。

開発の着想となったのは、饗庭氏がプライベートで体験したグライダー飛行だったという。

グライダーは、エンジンなどの動力を使わず、空気の流れを捉えながら静かに滑空する。饗庭氏は、そのときに感じた静かさや滑らかさ、空を進む爽快感を、EVで再現したいと考えた。

新型リーフ NISMOでは、モーターによる滑らかな加速や高い静粛性、空力性能、回生ブレーキの制御を組み合わせることで、グライダーのように気持ち良く走る感覚を目指している。

長年のリーフユーザーとスポーツカーオーナーを想定

新型リーフ NISMOでは、長年リーフを乗り継いできたユーザーに対し、新たな選択肢を提供することも重視した。

EVとしての使いやすさや先進装備を維持しながら、NISMOならではの走りやデザインを加えることで、これまでとは異なるリーフの魅力を打ち出している。

また、スポーツカーを所有するユーザーが、家族との日常用として選ぶ2台目のクルマも想定しているという。

走りを楽しめる一方で、日常生活や家族での移動にも使いやすい。その両立が、新型リーフ NISMOの商品企画における重要なテーマとなった。

デザインキーワードは「流れ」と「精度」

デザインを担当した森田カスタマイズデザイン部長は、新型リーフ NISMOのデザインに、「ソフィスティケイテッドフロー」と「インテリジェントアキュラシー」という2つのキーワードを設定したと説明した。

ソフィスティケイテッドフローは、爽快な走りを直感させる、洗練された流れを表現するもの。余分な装飾を抑えながら、シンプルでダイナミックなフォルムを目指した。

一方のインテリジェントアキュラシーは、理論に基づいた精密なデザインによって、機能美を追求する考え方だ。

見た目の迫力だけに頼るのではなく、空力や冷却、走行安定性といった機能を高め、その結果として生まれる美しさを重視している。

レッドアクセントを「アルテリア マグマ」として再解釈

NISMOを象徴するレッドアクセントも、新型リーフ NISMOでは新しい形で取り入れられた。

森田氏は、この表現を「アルテリア マグマ」と説明。従来のNISMOモデルのようにボディ下部を縁取るのではなく、2つのパーツの間を貫く細く長いレッドラインを採用した。

これは、電動パワートレインが内側に秘めるエネルギーが、パーツの隙間からのぞいている様子を表現したものだという。

レッドを単なるアクセントカラーとして使うのではなく、電動NISMOの性能を象徴するデザイン要素として再構築している。

約40mm延長したダックテールスポイラー

新型リーフ NISMOでは、空力性能を高めるため、NISMO専用のダックテールスポイラーを採用した。

スポイラーのリヤエッジは、ベースモデルより約40mm後方へ延長されている。これにより、空気抵抗を抑えながら、車体の浮き上がりを低減し、高速走行時の安定性を高めた。

一般的にダウンフォースを強めようとすると、空気抵抗も増加しやすい。新型リーフ NISMOでは、空気の流れを細かく整えることで、空気抵抗の低減と走行安定性の両立を目指した。

新開発の「ボートシェイプ&スポイラー」

リヤタイヤの後方には、新たに「ボートシェイプ&スポイラー」と呼ばれる空力形状を採用した。

走行中、リヤタイヤの後方では空気の流れが乱れ、渦が発生しやすい。新型リーフ NISMOでは、車体後部を絞り込むような形状とスポイラーを組み合わせることで、この渦を抑制する。

さらに、車体後方に生じる負圧を利用し、車両を路面へ安定させる効果も狙った。

専用フロントバンパーやサイドスポイラーなども含め、車両全体で空気の流れを整え、高速走行時の安定感につなげている。

ボディの造形を際立たせるNISMOステルスグレー

新型リーフ NISMOを象徴するボディカラーとして、「NISMOステルスグレー」が設定された。

森田氏によると、このカラーは、サーキットの路面よりも青みを持ちながら、青空よりもグレーに見える絶妙な色調を狙ったものだという。

メタリックなどの加飾を使用しない完全なソリッドカラーとすることで、光沢感による華やかさではなく、ボディそのものの造形や面の変化を際立たせている。

同色は、同時に披露された日産フォーミュラEチームのマシンにも使用され、モータースポーツと市販車の視覚的なつながりも表現された。

車両開発のテーマは乗員全員の「一体感」

車両開発を担当した成富氏は、新型リーフ NISMOの開発コンセプトとして、「一体感の追求」を掲げた。

EVは床下に重量のあるバッテリーを搭載するため、重心を低くできる。また、モーターはアクセル操作に対する反応が速く、スポーツドライビングに適した特性を備えている。

新型リーフ NISMOでは、こうしたEVの素質を最大限に生かしながら、ドライバーの操作とクルマの動きが自然につながる感覚を追求した。

ただし、目指したのはドライバーだけが楽しめるクルマではない。助手席や後席の乗員も含め、乗っている全員が車両との一体感を感じられることを重視したという。

アリアNISMOの経験とテストドライバーの感性を融合

新型リーフ NISMOには、高剛性の日産新世代EVプラットフォームと、新世代のEVパワートレインが採用されている。

そのうえで、「日産アリア NISMO」の開発で得た経験や、チューニング・テストドライバーの感性を組み合わせ、走行性能を磨き上げた。

数値やシミュレーションだけでなく、実際にクルマを走らせたときの応答性や安心感、乗員が感じる動きまで細かく確認しながらセッティングを進めたという。

EV特有の重量をどう制御するか

開発で特に苦労したのは、EV特有の重量によって生じる大きな力を、どのようにコントロールするかだった。

重量が大きいクルマでは、旋回時に横方向へかかる力や、加速・減速時に前後方向へかかる力も大きくなる。

新型リーフ NISMOでは、サスペンションやタイヤの特性を細かく調整し、横方向と前後方向の動きを精密に合わせ込んだ。

サスペンションには、専用スプリングやスタビライザー、KYB製スイングバルブ付きショックアブソーバーを採用。一部のサスペンションメンバーブッシュも専用化し、ステアリング操作への応答性やタイヤの接地性を高めている。

タイヤにはミシュラン「Pilot Sport 5」を採用し、ENKEI製の専用19インチアルミホイールを組み合わせた。ホイールは1本あたり約1kg軽量化され、足まわりの動きや操舵応答の向上にも貢献する。

回生パドルで滑空感とスポーツ走行を両立

新型リーフ NISMOには、EVのNISMOモデルとして初めて、回生ブレーキコントロールパドルが採用された。

ステアリングに備えられたパドルを操作することで、回生による減速力を4段階で変更できる。

減速力を弱めた設定では、アクセルを戻したあとも滑らかに進み、グライダーのような滑空感を楽しめる。

一方、回生を強めた設定では、アクセルを戻した際の減速力が大きくなり、コーナーへ進入する際のリズムを作りやすい。ブレーキとアクセルを使いながら走るスポーティな場面にも対応する。

成富氏は、滑空感からスポーツドライビングまで幅広く対応させながら、どの設定でも不自然さのない減速感を実現することに苦労したと説明した。

RECAROシートの座面角度もミリ単位で調整

インテリアはブラックを基調とし、ドライバーが運転へ集中しやすい環境を目指した。

「B7 NISMO RECARO装着車」に採用される専用RECAROスポーツシートでは、座面の角度をミリ単位で調整したという。

身体に加わる荷重を適切に分散し、長時間の運転でも負担を抑えながら、旋回時には身体をしっかり支えることを狙った。

シート単体のホールド性能だけでなく、ドライバーが車両の動きを感じ取りやすくすることも重視されている。

スペックだけでは表せないNISMOらしさ

新型リーフ NISMOでは、モーター出力や足まわりの強化だけでなく、空気の流れ、回生ブレーキの感覚、シートの角度といった細かな部分まで作り込まれている。

開発陣が目指したのは、単に速いEVではない。

グライダーのように静かで滑らかに進む爽快感と、ドライバーの操作にクルマが正確に応えるNISMOらしい一体感。その両方を、日常的に使えるクロスオーバーとして成立させることが、新型リーフ NISMOの大きな特徴だ。

スペック表だけでは伝わりにくい開発者のこだわりが、新型リーフ NISMOの走りやデザインにどのように表れているのか。実際の道路でその完成度を確かめる機会にも期待したい。
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