【プロフェッサー武田の現代自動車哲学論考】第七章:スズキ ジムニー

もう10年ほど前のことになるが、神奈川・葉山の市街地にて、新車のごとく綺麗にレストアされた旧いジムニーに遭遇したことがあった。一見したところ1981~90年に生産された「SJ30系」ないしは「JA71系」と思しきそのジムニーは、リフトアップやタイアの拡大などは一切行われていない、完全なノーマル状態のバン仕様。しかし、ルーフだけアイヴォリーに塗り分けたモスグリーンのボディに、ルーフと同色のスチールホイールという、なんともクラシカルかつシックな仕立てとされていた。
文・武田公実
ジムニーって、お洒落……?
お洒落な生活のパートナーとなってくれるジムニー
通常は他人のクルマをジロジロと見るような不躾は控えているつもりの筆者ながら、その時はジムニーのあまりのカッコ良さについつい運転席を凝視してしまったところ、「ステキな奥さま」などという言葉を直感的に連想させるような女性が颯爽と運転されていたのだ。
冒頭から、こんな陳腐でつまらない思い出話をつらつらと綴らせていただいたのには理由がある。それは新型ジムニーも、きっとこんな使われ方が似合うに違いない……、と感じられたから。例えば、往年のルノー・キャトルやフィアット・パンダの日本における使われ方のごとく、お洒落な生活のパートナーとなってくれる小型車の一つになり得るかに見受けられるのだ。
新型ジムニーの資質について検証
しかしこんな私見を述べてしまうと、昨年夏に新型ジムニーがセンセーショナルなデビューを果たしたのと時を同じくして、主にネット界に棲息するようになった「ジムニー原理主義」の方々からは、きっと囂々たる非難の声が上がるに違いあるまい。
曰く「世界に冠たる本格的なクロスカントリー・カーを、街乗りメインに使用するなんて言語道断!」、あるいはファッション性に惹かれたユーザー希望者、特にジムニーを「可愛い」と評する女性たちに対して「シロウトが乗ると痛い目を見る!」などと、まるでしたり顔が透けて見えてきそうなコメントがモニター画面を跳梁跋扈しているようだ。
でも新型ジムニーとは、本当にそこまで硬派一辺倒なクルマなのだろうか?スケジュールの関係上、今回の筆者に許された試乗コースが市街地と高速道路だけに限られたこともあって、今回はシティカーとしての新型ジムニーの資質について、自分なりに検証させていただくこととしたい。
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