新旧乗り比べてわかった、旧型ジムニーの楽しい部分

スズキ ジムニー XC

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ヒット街道を爆走し、今年のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しそうな勢いの新型ジムニー。でも、納車まで1年以上待つという狂おしい状況も。そこで、考えたい選択肢があえて旧型に乗るということ。新旧ジムニーを比較して、JB23/43型ジムニーの良さを検証してみました。

文・山崎友貴

山崎 友貴|やまざき ともたか

四輪駆動車専門誌、RV誌編集部を経て、フリーエディターに。RVやキャンピングカー、アウトドア誌などで執筆中。趣味は登山、クライミング、山城探訪。小さいクルマが大好物。

山崎 友貴
Chapter
乗った瞬間に良さがわかる新型は、進化の塊!
20年経ってもやはり名車のJB23型
使い勝手も新型とそれほど変わらない
気になる中古車市場は?
どういう目で新旧モデルを見るべきなのか

乗った瞬間に良さがわかる新型は、進化の塊!

メーカーが予想していた以上にメガヒットとなり、入手困難ゆえに輸入スポーツカーなみに憧れの車となってしまった新型ジムニー。660cc版のジムニー、白ナンバー車のジムニーシエラともに、著しい進化を遂げて、オフロード4WDながら数あるSUVにも劣らないハンドリングを手に入れました。

オフロード4WDがメーカーとして悩ましいのは、非常に高コストであること。例えばSUVの場合、ボディは鋼板を折ったモノコックボディ、サスペンションは部材が少なく軽量な独立懸架式を採用しています。

ところがオフロード4WDは、悪路を走った場合の高い耐久性が要されるため、まず骨格たるラダーフレームを核にして、そこに頑丈な鋼鉄の車軸を持つリジッドアクスル式サスペンションを付け、そのシャシーにエンジンとアッパーボディを載せるのです。

オフロード4WDはモデルサイクルの長い車であることが一般的ですが、ラダフレームを中心とするシャシーを開発することは極めて手間とお金がかかります。特に昨今は、様々な安全性の確保がデフォルトとなるため、ただ頑丈であれば良いというわけにはいきません。

80、90年代には「オフロード4WDは多少運転しづらくてもいい」という風潮がユーザーにありましたが、高性能SUVが華やかかりし現代においては、メーカーも“我慢しろ”とは言えなくなっています。
そこで新型のJB64/74型ジムニーは、ともにラダーフレームから新設計をして、どのパーツも流用することなく生まれ変わっているのです。

旧型は20年前の誕生で、その後9度の仕様変更を繰り返して、常に時代にあった性能を補填してきましたが、ゼロスタートの新型はさらに20年後を見据えて、これまでとは次元の異なるドライブフィールを実現しているのです。

もちろん、新型にまるで隙がないわけではありませんが、それでも乗った瞬間にその良さがわかります。旧型よりも捩り剛性が50%もアップしているラダーフレーム、前後上下の動きをチューニングし大型化したボディマウントブッシュ、前後重量配分50:50を可能にしたフロントミッドシップレイアウト、車内各部に施された遮音制振対策や車体下の空力対策などなど…。

数え切れないほどの「快適のための対策」によって、新型ジムニーは世界から高評価を得るにふさわしいオフロード4WDに仕上がっているのです。

20年経ってもやはり名車のJB23型

しかしどんなに良くても、納車まで1年以上を要するのでは、気持ちが萎えてしまう人もいるでしょう。また、あまりに「プロの道具」を意識した新型はへビューデューティすぎて苦手というユーザーもいると思います。そんな中、今だからこそ旧型にしようという人が増えています。

JB23型ジムニーが誕生した1998年は、ライトクロカンやSUVが台頭し始めた時代。2代目ジムニーのようなスクエアで質実剛健さが滲み出ているようなオフロード4WDは、古くさい存在でしかなかったのです。

またパジェロミニという強力なライバルがいたこともあり、ジムニーは英断によってその方向性を大きく舵取りをしました。

ですが、初代や2代目よりも長寿命だった3代目ジムニーは、インテリアデザインこそ多少陳腐になってしまいましたが、エクステリアは現在でも見劣りすることはない名車です。
前述の通り、ドライブフィールや使い勝手が9度も見直され、特に2008年9月に登場した7型以降はそれまでよりも乗りやすくなり、高速道路でも他の車の流れにまあまあ追随できる出力特性になりました。

残念ながらボディやシャシー自体は前時代的なため、ノーマルのままではドライブフィールにやや不満が出てきます。ですが、アフターマーケット品のサスペンションを付けたり、ストラットタワーバーでボディ補強をすることで、直進安定性や運動性能は見違えるほど向上します。またエンジンフィーリングも吸排気系チューンやECU交換で、非常にスムーズなものに改善することができるのです。

JB23型は元々素性のいい車。新型とまでは言いませんが、チューニングをすることでオンロードでもオフロードでも非常に優れた走行性能を発揮するようになります。

使い勝手も新型とそれほど変わらない

今回のモデルチェンジで、ジムニーはその使い勝手も向上させました。ボディをスクエアにしたことで車内の空間効率も改善され、またタイヤハウスなどの張り出しを無くすことで、より自由な使い方のできるラゲッジスペースを実現しました。乗員の着座位置も十分に検証して、従来のモデルより快適なドライブを行えるように、ヘッドルームやレッグスペースが作られています。

また荷室後部に新たにラゲッジボックスを採用し、フラットで段差のない荷室にしました。これは別の効能もあり、シートをすべて倒すことでダッシュボードからリアゲートまでギリギリのスペースを使って車中泊ができます。

ただ車中泊については、旧型も同じようなシートレイアウトが可能です。セカンドシートの座面を外してシートバックを倒し、前席のシートバックをその高さに合わせれば、やはり車中泊ができるようになります。荷室の段差は、アフターマーケットで売られているパーツで無くすことが可能です。

細部の使い勝手の良さは新型に及びませんが、じつは基本的な使い勝手は大きく変わっているわけではないのです。ただし、後部座席の居住性は新型にはかなわないため、JB23型は2人乗りとして割り切ればいいのではないでしょうか。

ちなみにJB43型シエラに関しては、もはや新型のJB74型の敵ではありません。動力性能の点において決定的な違いがあり、白ナンバーのジムニーが欲しいのであれば、何年待ったとしても新型をおすすめします。

気になる中古車市場は?

さて、旧型の中古車市場を見てみました。

現在、市場に流通しているJB23型に登録済み未使用車はほとんどが特別仕様車の「ランドベンチャー」です。そして多くが外装パーツ交換や2〜3インチアップのサスペンションが装着されたコンプリートカーとして販売されています。チューニングしていても新車状態ですから、メカトラブルを心配することなく安心して乗ることができるのではないでしょうか。

価格はXCの新車とほぼ同じ180万円台が相場となっています。完全な中古車であれば、10型(2014年式〜)のフルノーマルで100万円弱。サスペンションやタイヤ&ホイールを交換しても150万円で収まるでしょう。

どういう目で新旧モデルを見るべきなのか

現在、新型ジムニーは納車まで1年以上待ちというような状態になっていますが、新型がいい車であることは疑問の余地はありません。名実ともに本格的なオフロード4WDながら、SUVに近い感覚で快適に乗れて、機能性も安全性も現代のスタンダードを満たしている新型は、買って損はないモデルです。

オフロードを走行しても、旧型のように“リフトアップしてよく動くサスペンションを付けないと不安”という感覚は皆無です。新型から装備されたブレーキLSDトラクションコントロールは、オフロードビギナーに悪路を走る楽しさを教えてくれるでしょう。初めてオフロード4WDに乗る人やその形に憧れて乗る人には、新型は向いていると言えます。

よく新型は「原点回帰」という言う人がいますが、僕は逆に、まったく新しい価値観になったと考えています。ランドクルーザーやGクラスなど現代のオフロード4WDは、いまや「吊るし」で乗るのがスタンダードです。それはESPなどの電子デバイスや先進安全技術が標準で装着されているため、車体サイズが変わるようなモディファイができなくなっているからです。

新型ジムニーもこの部類に入り、プロの道具を標榜している以上に、「ビギナーにぴったりの入門車」になっています。テクニックがなければ車に任せろ、というわけです。つまり、余計なことは一切せずに、いまそこにあるジムニーを生活の中で楽しめばいいのです。
ですが、ジムニーの伝統的な良さは「不足も楽しめる」こと。素性の楽しさをさらに増幅させるため、様々な工夫から生まれたパーツを装着して、自分が楽しめる1台に仕上げていくのが、ジムニーというライフスタイル。今後、新型用のチューニングパーツが市場に出回っていくでしょうが、何の不足もないJB64/74型では、果たして旧型ほど「変わる歓び」が感じられるかは分かりません。

その点、旧型はライフサイズのプラモデルのようであり、イジるという昔ながらオフロード4WDならではの楽しみ方が残っています。アフターマーケットのパーツも熟成が進んでいるので、メジャーブランドであればどこのものを選んでも安心感があります。

新型を長く待つよりも、あえて旧型を選んで楽しみ倒す。そんな選択肢もあるのではないでしょうか。

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