ついに正解へとたどり着いたジムニーのデザイン【ジョバンニ・ペトロルッティの視点】

スズキ ジムニー 2019

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ヨーロッパでもファンが多い日本の小さな巨人「ジムニー」の販売が好調だ。性能面だけでなく、そのデザインも販売に大きく貢献していることは間違いない。日本では2018年のグッドデザイン賞で金賞を受賞している。個人的にも、機能に基づいたカタチをしており、非常に好感が持てるデザインだと思っている。クラシカルだが野暮ったさを感じさせないのは、ディテールを丁寧に作り込んであるからであろう。

文・ジョバンニ・ペトロルッティ
Chapter
ジムニーが持つ美しさと潔さ、そして表情の豊かさ
ツールとして成り立つデザイン
カタチには理由がある
正解にたどり着いたジムニーのデザイン

ジムニーが持つ美しさと潔さ、そして表情の豊かさ

限られた全幅の中でも、光のコントラストを巧みに利用し力強さを表現したフェンダーライン、強度だけでなく視覚的にも変化を生み出すリブの入ったルーフ、Aピラー付け根付近のサイドウィンドの処理。

キャラクターのような愛くるしい大きな丸目のヘッドライトは、夜間でも十分な光量を確保するためでもある。本物には本物のみが持つ美しさと潔さ、そして表情の豊かさがある。

一部では、メルセデスベンツ「Gクラス」の模倣などという声も上がっているが、果たしてそうなのであろうか。

ジムニーはスズキのアイコン的存在。頻繁にモデルチェンジを行えるクルマではない。恐らくスズキは、長く愛せる道具として4代目ジムニーをデザインしたのだろう。道具としての機能を追及すると、ある程度スタイリングが似てしまうのは致し方のないことだと私は思う。

ツールとして成り立つデザイン

スクエアなボディは、狭い道や悪路において視界がよく車両感覚が掴みやすい。これは街中を走るだけでもメリットを感じられるポイントだ。今回試乗した際も、都心をキビキビと軽快に走る上でとても助けられた。

また、車幅に対して車内空間を最大限確保することにもできる。ジムニーのラゲッジルームは、荷室の床面こそ高いものの後席を倒せばサイズのわりに効率的に荷物を積むことができる。フックも豊富で助手席も倒せば長尺物も積みやすい。

インテリアには光の反射を抑える素材を使用し、グローブをしたままでも操作しやすいボタン類など、ツールとしてよく考えられているデザインだ。

カタチには理由がある

ほかにも、整備性を高める台形のホイールアーチや、悪路走破性を上げるために切り詰められた前後オーバーハング、強度を高めるためのクラムシェルボンネット(これはレンジローバーも採用しており、同車のアイコンとなっている)や、雪が氷着しづらく、死角が少ない直立したウィンドウなど、ジムニーだけでなくGクラスやラングラー、ディフェンダーが同じようなスタイルを保ってきたのは、それぞれのカタチに明確な理由があるからだ。
 
模倣と捉えられる理由として、3代目と4代目のスタイリングの変化にあるのかもしれない。初代、2代目と4代目を見比べると、そこには多くの共通点があるように感じる。3代目が特殊なのだ。丸みのあるラインで構成され、フロンドウィンドの傾斜角も寝ており、それまでのモデルと比べるとより乗用車ライクなテイストだ。

3代目のデビューから時は経ち、世界的に見るとSUVは人気のジャンルとなった。安全性や環境性能など求められるものも変化した。各メーカーから綺羅星の如き魅力的なSUVが数多登場している中、改めてジムニーとして真に求められているものは何かを再考した結果が4代目のカタチなのである。

正解にたどり着いたジムニーのデザイン

プロスペックのプロダクトには、常に最上の性能が求められる。「こっちの方がカッコイイから」というのはデザイナーのエゴである。「こっちの方が機能に即しているから」でなくてはならない。

そういう意味で、ジムニーのデザインは潔い。道具としての機能に従ったデザインであり、ある程度似てきてしまうことは必然なのである。

私が考える良いデザインとは、なぜそのカタチになったのかを論理的に説明できるデザインである。その方が飽きもこない。結果、長く愛することができる。一過性のデザインはジムニーには必要ないだろう。

今回、スズキのデザイナーはとても良い仕事をした。彼らは一歩ずつ丁寧に歩を進め、そしてついに正解へとたどり着いたのである。

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文・ジョバンニ・ペトロルッティ/GiovanniPetrolutti
ミラン在住の覆面ジャーナリスト。デザイン工学および自動車工学の博士号をもつなど、自動車および工業デザインの双方に造詣が深い。デザインという感性によりがちなものを論理的に解釈することに努めている。愛車はマツダ・MX-5(初代)。
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