Rolling 40's Vol.94 紙の地図

Vol.94 紙の地図

Rolling

おそらく現在の自動運転の実用化状況は1990年くらいのカーナビのようなものだろう。記憶にあるのはバブル時代に出始めた純正カーナビで、今思うと紙の地図を開いた方が早かったりするようなレベルの性能だが、当時としては未来を感じるのには十分過ぎるハイテクであった。

あれから25年、今やカーナビはスマホに追い抜かれるという逆転現象にまで行き着いている。私たちの足腰が弱る頃には、ギリギリ自動運転の享受を受けられるかもしれない。

下手をするとあと15年位で運転代行サービスのように、恵比寿のイタリアンに行くときなどは、行きは自分で運転して、ワインを飲んだ帰りは、自動運転で帰宅するのが当たり前になっているかもしれない。そういうことが合法的に行われれば商業地域の活性化にもなり、もう少し先に進むと、子供や高齢者の送り迎えを単独で自動車のAIにさせるような時代になっているだろう。

タクシーやバスが自動運転化され、それにより仕事を奪われる雇用問題も出てくるが、高速の料金所や駅の改札が実際にほぼ無人化されているのだから、そういう自動化の流れが止まることはないだろう。

当然、自動運転中の不幸な事故やトラブルはゼロにはならないだろうが、よそ見運転や酔っ払い運転を自動的に防止してくれるのだから、現在の状況より悪くなることがあるとは思えない。それに応じた保険制度などが出てくるはずだ。

そういう未来を想像すると、自動運転のない今のクルマをレストアして乗るようなことがニッチに流行っているかもしれない。周りからは、今の時代にMTのクルマにあえて乗っているような趣味人と思われるのだろう。またそういうクルマは事故の確率が高くなると認定され、保険料が高くなるとも想像できる。

自分で運転する行為もあと100年くらいはなくなるとは思えない。高性能や大きな乗り物を自分で操縦するのが楽しいのは、船や飛行機でも同じことで人間の本能だと思う。

個人的な趣味の話だが、そういう意味では二輪はまだまだ遊びの聖域であるとタカをくくっている。それは二輪の自動運転の需要の無さから、開発費の投資がしばらくは上手くいくわけがないという理由が第一で、第二はそれが楽しくないからだ。

四輪との一番の違いはそこで、四輪の自動運転はお抱え運転手を好きに雇えるようなもので、クルマの存在意義に新たな楽しみを生み出す可能性が大いにある。

だが二輪の自動運転というのは自動運転のサーフィンやスノボを行うのと同じようなもので、駆る楽しみがほとんどのものから、そのほとんどの楽しみを奪い去るようなもので本末転倒も甚だしい。

だから一部のメーカーが二輪の自動運転の研究をして一部実用化しているが、無駄な研究だと思えて仕方ない。転倒防止の自動安全装置などがいずれは出てくるかもしれないが、自動運転的な進化は、バイクに乗る意味そのものを見失うはずだ。

リスクがあるから楽しいのではなく、リスクを乗り越えようと努力するから楽しいのである。転ばないサーフィンやスノボなんて誰がやるだろう。

私は水上バイクの免許を持っているのだが、あの遊びがどうしても好きになれない。波でエクストリーム的なジャンプをしたりするのは凄いことだと思うが、試乗しても、買う気にはなれなかった。

バイク乗りの私にとっては、水上バイクというものは、限りなくデカい広場でリッターバイクを無意味にグルグルと乗り回すような感覚なのだ。他の船や橋にぶつかる危険はあるが、水の上だけに普通に乗り回すだけならバイクほどのリスクはない。

とてつもないパワーのハヤブサを峠で安全にコントロールするのが楽しいのであり、絶対に転んではいけないというリスクや恐怖と向かい合うことに意味がある。

昨今の水上バイクはスーパーチャージャーなども当たり前で、凄いモデルは300馬力くらいある。加速もドラッグマシンのようだ。

広い大海原を120キロくらいで疾走するのは確かに楽しいのだが、20分も走ったら飽きてしまった。おそらく、その馬力を駆使してどこかに向かう理由が必要なのだと思う。江の島からお台場への通勤快速に使えるのなら渋滞がないので楽しいかもしれないが、服がずぶ濡れになるのは避けられないだろう。

もちろん真夏に水着の女の子を後ろに乗せて、密着しながらキャーキャーするのは楽しい。私だって過去に3回くらいは経験がある。

だがそれは水上バイクが楽しいのではなく、夏の日差しに無軌道になっている女の子とはしゃぐことが楽しい、の間違いである。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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