クラウンアスリートにイナズマ型グリルが採用された理由とは?

2012年に登場した現行型クラウン、中でも人目を引いたのはアスリート系に採用されたイナズマ型とも取れる大胆な形状のフロントグリル。保守的なクラウンとしてはかなり先鋭的に映るこのグリルですが、当初は賛否両論いろいろありました。

3年経過してマイナーチェンジも行なわれ我々見る側としてもクラウンアスリートの特徴として定着した観もありますが、このグリルによってクラウンは何が変わったのでしょうか。

決め事の中の困難な挑戦

クラウンはトヨタブランドの高級車としては初めてダウンサイジングターボエンジンを搭載するなどして、さらなるブラッシュアップを施され2015年にマイナーチェンジされました。保守的な銘柄でありながらクラウンはそのスタイリング然り、メカニズム然り、走りも含めて、モデルチェンジのたびに毎回挑戦的な改良や採用を行なって登場しています。保守的で変化を好まない顧客層、また、変わらないことでブレないクラウン像を構築するという目的もあるはずですが、その中で新しいものを盛り込む難しさもあるはずです。

クラウンのスタイリングには制約が多いといわれています。サイズは日本の道路事情、とくに駐車場などのスペースを考慮されていて、過剰にサイズアップできないという事情があります。また、後席をメインに使われる顧客のために、Cピラーはできるだけ乗員の顔が隠れるような角度と形状を取り入れていたりもしているのです。この二点の制約だけでも、スタイリング、デザインをまとめる上での難しさははっきりと他車とは異なるものであろうことが想像に難くありません。

デザイン上、こうした制約がもたらす難しさ、変わりにくい事情などがクラウンのデザイナーの仕事を難しくさせていることでしょう。しかし、ずっと変わらないままでいるわけにもいかない。むしろクラウンが積極的に「変わる」という姿が、トヨタ自動車としての企業スタンスを明瞭にあらわす重要な要素にもなっているため、クラウンは本当は大きく変わりたい。だけど、変われないしがらみがある…。

今回のイナズマ型グリルが用いられたのもそんな事情からではないでしょうか。

よく見渡すと、このフロントマスクを除けばクラウンは、じつはクラウンそのものです。フォルムやキャビンの形状、窓の形やテールランプまで、それまでのクラウンを色濃く残しています。これは「変えられない部分」ということなのでしょう。しかし、イナズマ型フロントグリルは多くの人に大きなインパクトを与えることに成功しました。その意味で、そのデザインは成功といっていいのかもしれません。

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綿密に変化するクラウン