ホンダ フィットの先代からの進化点は?誇りを持てる高性能から、人の生活に寄り添う車へ【プロ徹底解説】

3代目フィット

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ホンダのコンパクトカーであるフィット。2001年の初代モデルから大ヒットして、ホンダを支える大きな柱のひとつとなっています。現行モデルは2020年2月から発売開始となり、2022年10月にマイナーチェンジを実施しています。この新しいフィットは、先代モデルとは、どのように違っているのかを比較します。

文・鈴木 ケンイチ/写真・PBKK

鈴木 ケンイチ

モータージャーナリスト。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。レース経験あり。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)

鈴木 ケンイチ
Chapter
誇りを持てる高性能から、人の生活に寄り添う車へ
先進的でスポーティなものから優しさを感じさせるデザインへ
パワートレインからキャラクター別に
先代と現行のハイブリッドの違い
エンジンの変化

誇りを持てる高性能から、人の生活に寄り添う車へ

フィットの現行モデルは4代目であり、その登場は2020年2月のことでした。そして、その前のモデルとなる3代目は、2013年に登場しています。

先代モデルのコンセプトは、初代から2代目と続いていた「広い室内と使い勝手の良さ」を継承しつつも、「所有する人の誇りを満たし、乗るたびにワクワクできる」ことを実現できる車です。

そのために、パワートレインと車体は完全なる新設計となり、居住性、燃費性能、走りというすべての面での進化を実現しています。2013年のデビュー時のハイブリッドモデルは、当時国内最高であった36.4km/l(JC08モード)の低燃費を実現。エンジン車でも、クラストップレベルの燃費性能を実現していたのです。リアルな数字で、ライバルを圧倒するという、意欲的なモデルでした。
一方、2020年に登場した現行モデルでは、「使う人の心を満たす」「人の生活に寄り添う」ことが目標とされています。数値ではない部分を目指しているのです。もちろん、高い機能性はそのままに、数字には表れない「心地よさ」を実現することに力が注がれています。

先進的でスポーティなものから優しさを感じさせるデザインへ

先代の3代目フィットから現在の4代目で、最も大きな変化は、そのデザインかもしれません。先代モデルのエクステリアデザインのコンセプトは「low center of gravity wide stance」。つまり、「低重心」で「幅広いスタンス」です。ヘッドライトは細い横長タイプ。ボディサイドには、クッキリと流れるような1本のプレスラインが刻まれています。先進感があり、スポーティな佇まいです。
一方、新型モデルの特徴は、威圧感のあるグリルを小さくしたグリルレスフロントフェイス。ヘッドライトはU字型のLEDデイタイムランニングランプを採用するなど、つぶらな瞳を連想させるもの。優しい小動物を思わせるフロントフェイスであり、ボディサイドのプレスラインは最小限なものとなっています。

車両寸法は、先代で全長3990×全幅1695×全高1525mm、ホイールベースが2530mm。新型は全長3995×全幅1695×全高1540mm、ホイールベース2530mmであり、サイズはほとんど変わっていません。

パワートレインからキャラクター別に

先代から現行モデルへの進化で大きく変わったのはグレード編成です。先代モデルは、パワートレインをベースに、1.3リッターエンジン車を「13G」、1.5リッター車を「15X」「RS」、ハイブリッドを「HYBRID」とし、さらに装備の違いで「Fパッケージ」「Lパッケージ」「Sパッケージ」としていました。
一方、新型モデルは、グレードにキャラクターを設定して、基本の「BASIC」、装備充実の「HOME」、上質な「LUXE」、クロスオーバー風の「CROSSTAR」、走りの「RS」という5つのグレードとしました。そして、そのグレード内にエンジン車とハイブリッドの両方があるという形となりました。

先代と現行のハイブリッドの違い

パワートレインは、旧型から新型となり、これも一新されています。特にハイブリッドは、1モーターにDCTを組み合わせた「i-DCD」から、2モーター式の「e:HEV」となりました。先代の「i-DCD」は、モーターのみのEV走行と、エンジンとモーターをミックスした走行、エンジン直結の走行という3モードを行います。
一方、新しい「e:HEV」は、EV走行とエンジン直結の走行は同じになりますが、ハイブリッド走行の内容が異なります。「e:HEV」のハイブリッド走行は、エンジンが発電に徹しており、駆動はモーターだけというのが特徴になります。「e:HEV」は、シリーズ・ハイブリッドを基本として、高速走行時の一部だけエンジン直結になるのです。先代よりも、エンジンが駆動するシーンが減っているのが特徴となります。そのため、新型フィットのフィーリングは、より電動感が強くなっています。

出力は、先代ではシステム最高出力が101kW(137PS)・170Nmのところ、現行では駆動用モーターで90kW(123PS)・253Nmとなりました。最高出力は落ちますが、トルクは大きく上回ります。燃費性能は、先代のデビュー時の最高36.4km/l(JC08モード)を上回る38.6km/l(JC08モード)・29.4km/l(WLTCモード)を、2020年の登場時に実現。2022年のマイナーチェンジで、燃費は、さらに30.2km/l(WLTCモード)にまで高められています。

エンジンの変化

ハイブリッド以外のエンジンも先代から現行モデルでは変化しています。先代モデルでは最高出力73kW(100PS)の1.3リッターエンジンと、最高出力97kW(132PS)の1.5リッター・エンジンの2種類が用意されていました。トランスミッションは、どちらにもCVTとMTが用意されていたのです。1.3リッターには5速MT、そして1.5リッターの「RS」グレードには6速MTが組み合わされていました。
一方、新型モデルでは、最高出力72kW(98PS)の1.3リッター・エンジンに新開発のCVTという組み合わせでした。2022年10月のマイナーチェンジで、エンジンを1.5リッターに拡大。最高出力は87kW(118PS)、燃費性能は18.7km/l(WLTCモード)となっています。先代と比較すると、スペック的には劣りますが、そのかわりに新しいCVTによる心地よいドライブフィールを得ています。
ライバルを超える性能を実現し、先進性とスポーティさを前面に押し出したのが先代のフィット。それに対して、現行型フィットは、心地よさという数字には表れない部分を大切にしているのが大きな特徴です。その結果、出力というスペックでは、先代に及ばない部分もあるようです。しかし、数字を追わないというのが現行モデルのコンセプト。ブレていない車であるとも言えます。
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