いまのジムニーのボンネットには、なぜ穴がない?
更新日:2024.09.09
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2代目前のスタイルに先祖帰りしたと言われているジムニー。でも、先々代にも先代にもあったボンネット上の「穴」がなくなっています。なぜなのでしょうか?
文・山崎友貴
文・山崎友貴
穴(エアインテーク)の役割とは
20年ぶりにフルモデルチェンジを果たした4代目ジムニーが目指したのは、原点回帰でした。3代目でライトクロカン的な方向性に行ったジムニーを、2代目の頃の本格クロカン4WDに戻そうというわけです。事実、4代目はいかにもクロカン4WDらしいスクエアな形状となり、そのことが功を奏して大ヒットとなりました。
そんなジムニーですが、巷で聞く声の中には「なんで、新しいジムニーにはボンネットに穴がないの?」というものがありました。なぜなのでしょうか。まず「穴」の正体についてお話しましょう。
あの穴は『エアインテーク』とか『エアスクープ』『エアインレット』などと呼ばれています。ちなみにオーバーヘッドカムシャフトやスーパーチャージャーなどの配置の都合から、ボンネット上に膨らみを付ける「パワーバルジ」とは区別されます。
このエアインテークは、エンジンルーム内にあるインタークーラーという冷却器に外気を送るためのものです。昨今の軽自動車のエンジンには、ターボチャージャー(過給器)が付いていることが多くなっています。ターボチャージャーとはクルマの排気圧でタービンを回して、強制的にエンジン内に燃焼用空気を送り込む機構で、自然吸気(ノーマルアスピレーション、NAとも)よりもエンジンの出力、加速が向上します。
ターボが送り込む空気は、エンジンルーム内からエアクリーナーを通して吸入したものですが、エンジンルーム内は熱が溜まっているため、どうしても空気が膨張しまうのです。エンジンは効率的に燃焼するのに多くの空気、とりわけ酸素が欲しいわけですから、膨張した空気よりも密度の高い空気の方がいいわけです。
そこで冷却器(コア)で膨張した空気を冷やし、密度を高めてからエンジン内に送ることで燃焼効率を向上させるというのが、インタークーラーの役割なのです。
そんなジムニーですが、巷で聞く声の中には「なんで、新しいジムニーにはボンネットに穴がないの?」というものがありました。なぜなのでしょうか。まず「穴」の正体についてお話しましょう。
あの穴は『エアインテーク』とか『エアスクープ』『エアインレット』などと呼ばれています。ちなみにオーバーヘッドカムシャフトやスーパーチャージャーなどの配置の都合から、ボンネット上に膨らみを付ける「パワーバルジ」とは区別されます。
このエアインテークは、エンジンルーム内にあるインタークーラーという冷却器に外気を送るためのものです。昨今の軽自動車のエンジンには、ターボチャージャー(過給器)が付いていることが多くなっています。ターボチャージャーとはクルマの排気圧でタービンを回して、強制的にエンジン内に燃焼用空気を送り込む機構で、自然吸気(ノーマルアスピレーション、NAとも)よりもエンジンの出力、加速が向上します。
ターボが送り込む空気は、エンジンルーム内からエアクリーナーを通して吸入したものですが、エンジンルーム内は熱が溜まっているため、どうしても空気が膨張しまうのです。エンジンは効率的に燃焼するのに多くの空気、とりわけ酸素が欲しいわけですから、膨張した空気よりも密度の高い空気の方がいいわけです。
そこで冷却器(コア)で膨張した空気を冷やし、密度を高めてからエンジン内に送ることで燃焼効率を向上させるというのが、インタークーラーの役割なのです。
エアインテークがボンネット上にあった理由
ジムニーには、2代目の過渡期である1987年に、このインタークーラーが採用され、この時からエアインテークが装着されています。そして3代目ジムニーまで、このエアインテークがジムニーのデザイン上の特徴のひとつとなるのです。では、なぜボンネット上にあったのでしょうか。
理由のひとつが、エンジンレイアウトです。エンジンのレイアウトは、同じ型式のユニットを使用していても、クルマのデザインや駆動方式によって異なります。
2代目ジムニーはフロントの開口部が非常に狭く、バンパーも悪路走破性を考慮して薄型のものでした。さらに、車両前部には冷却水を冷やすための重要な補機であるラジエターもあります。そうなると、インタークーラーを配置する場所は自ずとエンジンの上部しかなかったのです。
第2の理由に、見た目の問題があります。80〜90代は、ターボやインタークーラーを装着していることは、高性能車のひとつのステータスでした。現在では、車両に「ターボ」や「インタークーラー」などとわざわざ書かれているモデルはありませんが、当時はそれを誇示するのが当たり前だったのです。
ですから、エアインテークも高性能を示すもののひとつであり、オーナーにとっては誇らしいものでした。ターボ車でもないのに、わざわざダミーを付ける人もいたくらいです。
理由のひとつが、エンジンレイアウトです。エンジンのレイアウトは、同じ型式のユニットを使用していても、クルマのデザインや駆動方式によって異なります。
2代目ジムニーはフロントの開口部が非常に狭く、バンパーも悪路走破性を考慮して薄型のものでした。さらに、車両前部には冷却水を冷やすための重要な補機であるラジエターもあります。そうなると、インタークーラーを配置する場所は自ずとエンジンの上部しかなかったのです。
第2の理由に、見た目の問題があります。80〜90代は、ターボやインタークーラーを装着していることは、高性能車のひとつのステータスでした。現在では、車両に「ターボ」や「インタークーラー」などとわざわざ書かれているモデルはありませんが、当時はそれを誇示するのが当たり前だったのです。
ですから、エアインテークも高性能を示すもののひとつであり、オーナーにとっては誇らしいものでした。ターボ車でもないのに、わざわざダミーを付ける人もいたくらいです。
新型ジムニー、エンジン上に置かなくなった理由
ジムニーは3代目でもエアインテークを採用していますが、やはりスペース上の問題や、デザインの特徴という理由があったのではないでしょうか。
ところが4代目は違います。歴代のどのモデルよりも、前部の投影面積が広く、インタークーラーをフロントに配置する場所の余裕ができたのです。また新型のR06A型エンジンが従来よりもコンパクトになったのも、レイアウトの自由度が出た材料のひとつです。では、なぜ前に置いたのでしょうか。
あるジムニー開発者は、「エンジン上に置くより、前に配置した方が絶対的に冷却効果が高いのです」と言います。エンジン上にインタークーラーがある場合は、コア自体を寝かせるので、せっかく冷たい外気が入ったとしても、それはフィンの表面を撫でていくだけです。
ところが、車両の前に配置する場合は、インタークーラーを立てて置くことが可能です。冷たい空気はフィンの中を通過するので、十分な冷却効果が得られます。さらに車両の一番前にあるので、エンジンの熱の干渉も受けにくくなります。
そして、昨今のクルマを見ると分かるように、デザイン面でエアインテークは廃れてしまっているのです。実はエアインテークは空気抵抗が大きくなってしまう、厄介ものでした。燃費や車内の静粛性が重要視される現代のクルマにおいて、空気の抵抗値が上がるというのは、設計者にとっては忸怩たるものがあると思います。
さらに、昨今のクルマには「歩行者保護」という性能が求められるため、ボンネット上に「突起」は付けたくないのです。イマドキの設計思想で言えば、クルマはできるだけのっぺりとしていた方がいいのです。
現行型のジムニーのインタークーラーは、前部に配置している上に、コアが大型しているため、3代目よりも約5%も冷却効率がアップしています。一見すると穴がなくなって“普通”になってしまったジムニーですが、実は性能は確実に向上しているのです。
ところが4代目は違います。歴代のどのモデルよりも、前部の投影面積が広く、インタークーラーをフロントに配置する場所の余裕ができたのです。また新型のR06A型エンジンが従来よりもコンパクトになったのも、レイアウトの自由度が出た材料のひとつです。では、なぜ前に置いたのでしょうか。
あるジムニー開発者は、「エンジン上に置くより、前に配置した方が絶対的に冷却効果が高いのです」と言います。エンジン上にインタークーラーがある場合は、コア自体を寝かせるので、せっかく冷たい外気が入ったとしても、それはフィンの表面を撫でていくだけです。
ところが、車両の前に配置する場合は、インタークーラーを立てて置くことが可能です。冷たい空気はフィンの中を通過するので、十分な冷却効果が得られます。さらに車両の一番前にあるので、エンジンの熱の干渉も受けにくくなります。
そして、昨今のクルマを見ると分かるように、デザイン面でエアインテークは廃れてしまっているのです。実はエアインテークは空気抵抗が大きくなってしまう、厄介ものでした。燃費や車内の静粛性が重要視される現代のクルマにおいて、空気の抵抗値が上がるというのは、設計者にとっては忸怩たるものがあると思います。
さらに、昨今のクルマには「歩行者保護」という性能が求められるため、ボンネット上に「突起」は付けたくないのです。イマドキの設計思想で言えば、クルマはできるだけのっぺりとしていた方がいいのです。
現行型のジムニーのインタークーラーは、前部に配置している上に、コアが大型しているため、3代目よりも約5%も冷却効率がアップしています。一見すると穴がなくなって“普通”になってしまったジムニーですが、実は性能は確実に向上しているのです。