本格クロカン4WDにしか搭載されていない機能とは?

2018年に引き続き、今年もジムニーなどのクロスカントリー4WDが市場では活況を呈しています。走行シチュエーションや性能を限定させ、よりマルチパーパスなキャラクターになっていくSUVに対して、クロカン4WDの本領はあくまでも「オフロード」。今回は、本格派のクロカン4WDが備える装備についてお話します。

文・山崎友貴

Chapter
ラダーフレーム式シャシーとジッドアクスル式サスペンション
パートタイム式4WD
ミテッド・スリップ・デフ(LSD)とデフロック

ラダーフレーム式シャシーとジッドアクスル式サスペンション

トヨタ ランドクルーザー 2018

クロスカントリー4WD(通称クロカン4WD)は、その名の通り、道なき道を走るために生まれたクルマです。その大量生産車としての源流は、第二次世界大戦で活躍したJeep(ウイリスMB/フォードGPW)であり、道を外れて森や牧場を駆けるには最適のクルマでした。

戦争が終わっても、その性能は多くの人々に求められ、Jeepはさることながら、多くのメーカーがクロスカントリー4WDを開発・生産して、今に至っています。日本を代表するランドクルーザーやジムニーも、そうしたクルマの一端です。

日本は道路インフラの整備が進んでオフロードが少なくなってしまいましたが、地球にはまだまだ過酷な道路がたくさん残っています。そうした場所を走破して、無事に移動するために必要なのが、クロカン4WDなのです。

SUVには雪道やダートを走るくらいにニーズしかありませんが、クロカン4WDへのニーズはハードのひと言です。僻地では、道路の周辺に存在する様々な障害物にボディをヒットすることは日常茶飯事。もちろん鈑金をして修理することなど、滅多にありません。

障害物へのヒットも物ともせず、多少凹んでいようが、影響なく走れるように…と採用されているのが、ラダーフレーム式というボディ構造と、リジッドアクスル式というサスペンションです。

昨今のSUVは、運動性能や燃費を考慮して軽量なモノコックボディと、バネ下重量の軽い独立懸架(インディペンデント)式サスペンションを採用していますが、堅牢性やメインテナンス・補修などの点から本格的なオフロード走行には向いていません。その点、高い耐荷重性と容易な整備性を持つラダーフレーム式シャシーと、リジッドアクスル式サスペンションは、クロカン4WDの根幹をなすメカニズムと言えます。

パートタイム式4WD

スズキ ジムニー 2018

次に本格派の証しと言えるのが、4WDシステムです。多くのSUVはFFベースのフルタイム式4WDを採用していますが、これは駆動系のレイアウトがしやすく、コストを低く抑えられるためです。ですが、過酷な環境を走る上に、絶対的な悪路走破性や信頼性が必要なクロカン4WDにとっては、堅固な四輪駆動システムこそが要になるのです。

そこで、Jeep以来採用し続けられているのが、パートタイム式4WDです。その名の通り、必要な時にだけ四輪駆動にすることができるシステムで、サブトランスファー(副変速機)というメカニズムで2WD↔4WDの切り替えを行います。

通常は燃費を抑え、重い荷物を載せても登り坂がこなせるようにFR(後輪駆動)で走ります。摩擦係数が低くく、タイヤが空転してしまう道では、4WDにして進みます。

パートタイム4WDには、4WDローというモードが設けられています。これは、自分よりも大きく重い大型車を牽引したり、激しい凸凹のオフロードを走る時などに使います。通常のギア比よりも低いギアを使うことができ、人間が歩くよりも遅いスピードで巡航運転することも可能になります。

ちなみにランドクルーザーやGクラスは、本格クロカン4WDながら、フルタイム4WDを採用しています。これは舗装路でも走行安定性を高めるためですが、SUVとは異なり、センターデフをロックすることができ、さらに4WDローモードも備えています。

また、意外と知らない人が多いのですが、パートタイム式4WDの前輪軸には、フリーハブというメカニズムが付いています。FRで走る時でも、タイヤがドライブシャフトと繋がっていては抵抗になり、結局は燃費が悪くなってしまいます。そこで、2WD時はタイヤとドライブシャフトを切り離し、4WD時には繋ぐフリーハブを装着して、この問題を解決しているのです。

フリーハブはサブトランスファーのレバー操作と連動しており、ドライバーが意識しなくても自動で操作されます。ただ磁石を使っている操作なので、前進後進を繰り返しているとロックが外れる場合があり、走行中にFRになってしまうことが希にあります。そのため、手動で操作しないと解除できなくマニュアルフリーハブというものも、プロユーザー向けに用意されています。

ミテッド・スリップ・デフ(LSD)とデフロック

ジープ ラングラー ルビコン 2018

さてクルマには必ず、ディファレンシャルギア(差動装置)というメカニズムが採用されています。

クルマは曲がる時、左右輪の回転数に差が出ます。ところがミニカーのドライブシャフトのように左右輪が1本の軸で固定されていると、その回転差ゆえにスムーズに曲がることができないのです。そこで左右輪の回転差を吸収して、同じタイミングで回れるようにするのがディファレンシャルギア(通称デフ)です。

ところが4WDで走る時には、このデフが悪さをします。片方のタイヤが多く回っても、もう一方のタイヤは回転数を抑えるというデフの特性ゆえに、低μ路などでタイヤが激しく空転すると、もう一方のタイヤは完全に停止してしまうのです。この現象が前後輪、特に対角線上で同時に発生した場合、4WDと言えどもまったく前進することが不可能になります。

そこで、本格的にオフロードを走るクルマには、このデフの作用を制限する、差動制限装置というものを装着します。それが「リミテッド・スリップ・デフ(LSD)」や「デフロック」です。

LSDはヘリカルギアとクラッチを使って、左右輪の回転差が大きくなりすぎた場合に、デフ内を“半ロック”状態にします。もう一方のデフロックは、電磁石や空気圧などを使ってデフ内のシャフトを動かし、差動装置を固定してしまうという装置です。要は左右輪を1本の軸で直結した状態を作り、どんな状態でも左右輪が動くようにすることで走破性を高める「最終兵器」です。

現行モデルだと、LSDはジムニーに、デフロックはランドクルーザーやGクラス、Jeepラングラー・ルビコンに純正採用されています。

昨今の日本では本格的にオフロードを走る人が少なくなり、同時にサブトランスファーの正しい使い方を知る人さえ少なくなっています。クルマによってはすべてが電子制御となり、ドライバーはオフロードでアクセルさえ踏まなくていいモデルもあります。

ですが、それぞれのメカニズムの意味や用途を理解し、それを自分で使いこなせるようになれば、クロカン4WDの異次元の楽しさを味わえることも知っておいてほしいのです。