バウンドストロークとリバウンドストローク…どちらが重要か?
更新日:2024.09.19
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一般的な乗用車のサスペンションは、上下方向に約10cmずつストローク出来るように、設計されています。このサスペンションストロークは、クルマのポテンシャルを表す重要な指標であり、乗り心地性能に大きな影響を与えます。今回は、このサスペンションストロークの重要性について考えていきます。
文・吉川賢一
文・吉川賢一
サスペンションのストロークはなぜ大切なのか?
自動車のサスペンションは、どれほど綺麗に舗装された道路であっても、わずかにストロークをしながら走行しています。
このサスペンションのストロークは、コンビニなど店舗の入口にあるような段差や、角張った縁石、大きなうねりのある路面を早い速度で通過する、といったような、タイヤに大きな入力があったとき、乗員への衝撃を低減し、またクルマ本体を破損から守る役目があります。
そのため、このサスペンションストロークが十分に確保できていないと、乗り心地性能のポテンシャルは取れていないと考えられます。
なぜなら、サスペンションストロークが十分にとれていないと、サスペンションが限界までストロークして、底突きや伸び切りが起き、「ドカッ」「ガチン」といった音や、「ドン」といったショックが発生してしまいます。
このとき、設計者には、底突きや伸び切りが起きないよう、スプリングやショックアブソーバをハードな設定にする対策しか打つ手がなく、「ソフトな乗り心地」が実現できない、ということになってしまうのです。
自動車メーカーの設計者がサスペンションを設計するときに、ストロークを非常に重要視する理由がこれです。
このサスペンションのストロークは、コンビニなど店舗の入口にあるような段差や、角張った縁石、大きなうねりのある路面を早い速度で通過する、といったような、タイヤに大きな入力があったとき、乗員への衝撃を低減し、またクルマ本体を破損から守る役目があります。
そのため、このサスペンションストロークが十分に確保できていないと、乗り心地性能のポテンシャルは取れていないと考えられます。
なぜなら、サスペンションストロークが十分にとれていないと、サスペンションが限界までストロークして、底突きや伸び切りが起き、「ドカッ」「ガチン」といった音や、「ドン」といったショックが発生してしまいます。
このとき、設計者には、底突きや伸び切りが起きないよう、スプリングやショックアブソーバをハードな設定にする対策しか打つ手がなく、「ソフトな乗り心地」が実現できない、ということになってしまうのです。
自動車メーカーの設計者がサスペンションを設計するときに、ストロークを非常に重要視する理由がこれです。
バウンドとリバウンド、どちらが大切なのか?
タイヤがボディから離れる(下)方向にストロークすることを、”リバウンドストローク”、逆にタイヤが車体側へ上昇していくことを”バウンドストローク”と言います。どちらが大切か?答えは「両方」です(ごめんなさい)。
例えば、段差を乗り越えた時、タイヤは地面から突き上げを受けて、サスペンションはバウンドストロークをします。次の瞬間、縮んだサスペンションがボディを上へ押し上げますが、タイヤは接地したままの状態でいようとしますので、サスペンションはリバウンドストロークをします。
じつはこの時、サスペンションが底突き・伸び切りをしないためには、バウンドとリバウンドのストロークが、偏りなく確保できていることが重要です。どちらかに偏ったストロークだと、突起を上手に乗り越えることができません。
ちなみに、メーカーが出している多くのスポーツサスペンション仕様は、ダウンサスで車高を下げた分、スプリングやショックアブソーバの特性はハードな方向にセッティングを変更しています。そのため、底突き・伸び切りによる異音は起きないようになっています。
例えば、段差を乗り越えた時、タイヤは地面から突き上げを受けて、サスペンションはバウンドストロークをします。次の瞬間、縮んだサスペンションがボディを上へ押し上げますが、タイヤは接地したままの状態でいようとしますので、サスペンションはリバウンドストロークをします。
じつはこの時、サスペンションが底突き・伸び切りをしないためには、バウンドとリバウンドのストロークが、偏りなく確保できていることが重要です。どちらかに偏ったストロークだと、突起を上手に乗り越えることができません。
ちなみに、メーカーが出している多くのスポーツサスペンション仕様は、ダウンサスで車高を下げた分、スプリングやショックアブソーバの特性はハードな方向にセッティングを変更しています。そのため、底突き・伸び切りによる異音は起きないようになっています。
レーシングカーは車高が低いけど良いのか?
サーキットを走ることが前提のレーシングカーの場合、乗用車のように突起物を乗り越えることはありません。しかし、コーナーにある縁石は積極的に踏むことがあります。
この時、レーシングカーでもっとも避けたいことは、タイヤの接地性が落ちることです。万が一、ハイスピードでのコーナリング中に縁石に乗り、タイヤが浮き上がってしまうと、コーナリングを維持することができず、オーバーランやスピンする恐れがあります。
レーシングカーは、車高をぎりぎりまで落として「ガチガチ」のサスペンションセッティングにしているイメージがありますが、じつは、ギャップに乗ってもタイヤが浮き上がらないよう、リバウンド側のストロークは十分に確保できていることが多いのです。
この時、レーシングカーでもっとも避けたいことは、タイヤの接地性が落ちることです。万が一、ハイスピードでのコーナリング中に縁石に乗り、タイヤが浮き上がってしまうと、コーナリングを維持することができず、オーバーランやスピンする恐れがあります。
レーシングカーは、車高をぎりぎりまで落として「ガチガチ」のサスペンションセッティングにしているイメージがありますが、じつは、ギャップに乗ってもタイヤが浮き上がらないよう、リバウンド側のストロークは十分に確保できていることが多いのです。
昨今は高級車であっても、大径幅広タイヤを標準で装着していることが多く、上下ストローク量を十分に確保することが困難になってきているようです。
サスペンションのストロークは、こうした厳しい制約条件と、過去の知見で得たデータを元にして、サスペンションエンジニア達によって、ミリ単位で設計されているのです。
サスペンションのストロークは、こうした厳しい制約条件と、過去の知見で得たデータを元にして、サスペンションエンジニア達によって、ミリ単位で設計されているのです。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。