クラウンが採用している、トヨタの「いなしサスペンション」とは?

トヨタ クラウン 2015

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トヨタの現行クラウンで採用した「いなしサスペンション」という技術は、高級車に求められる上質な乗り心地と、優れた操縦安定性を高いレベルで両立させるための重要な役割を果たしています。この「いなしサスペンション」は、どのような仕組みで、どのような効果をもたらすのでしょうか?

文・吉川賢一
Chapter
「いなしサスペンション」とは?
振動をいなし、上質な乗り心地を実現
いなしサスペンションと同時に織り込まれた操安技術

「いなしサスペンション」とは?

トヨタ クラウンは、日本国内で販売されているクルマのなかでも、乗り心地と音振性能に、ユーザーから高いレベルが期待されています。その期待に応えるため、トヨタはクラウンに「いなしサスペンション」と呼ばれる構造を織り込んだ、マルチリンク式リアサスペンションを採用しました。

このサスペンションは、路面から伝わる振動を受け止めるのではなく、上手にいなし、しなやかな動きを実現する、といった特徴があります。

振動をいなし、上質な乗り心地を実現

これまで、サスペンションアームに加わる入力は、ブッシュによって吸収されていました。しかし、乗り心地を確保しようとブッシュを柔らかくしすぎると、操縦安定性を損なう、というジレンマがありました。

そこでトヨタは、特定の入力をたわんで逃がす”いなし”効果をもつリンクを開発、2012年にモデルチェンジを行ったクラウンに採用しました。

クラウンのマルチリンク式リアサスペンションは、2本のアッパーアームと、2本のロアーアーム、トーコントロールアームの計5本で構成されています。「いなしサスペンション」では、そのアッパーアームを開断面形状としました。

開断面形状にしたことで、サスペンションアームは曲げ剛性をそのままに、ねじり剛性が低下します。ねじり剛性が低下することで、ストローク時に突っ張る役目をしていたリンクがわずかに動くようになり、サスペンションはストロークしやすくなります。その結果、車体へ伝わる振動を低減できるのです。

いなしサスペンションと同時に織り込まれた操安技術

フロントには、ダブルウィッシュボ-ンサスペンションが採用されています。タイロッドエンドにオフセット形状を採用し、旋回時にタイヤ接地点へ横力が加わると、前輪タイヤがトーアウト方向(安定方向)へ向くように、剛性をコントロールしてます。

一方、リアサスペンションは、トーコントロールアームにオフセット形状を採用し、旋回時の横力が加わったときに、後輪タイヤをトーイン方向(安定方向)へと、向きやすくなるように設計がなされました。

このようにトー変化特性を適正化し、旋回時のタイヤグリップ力を強めて、旋回時の安定した車両性能を実現しているのです。
FF車によく使われるビーム式リアサスペンションでは、左右輪を繋ぐ部材のねじり剛性により、ロール剛性を調節していましたが、マルチリンク式サスペンションでは、その構造の複雑さのため、サスペンションのアームやタイロッドは、できるだけ高い剛性を保ち、捩じれたりたわんではいけないというのが、自動車メーカーの基本的な考え方でした。

ところが、トヨタの「いなしサスペンション」は、”たわんでしまうなら、それを巧みに活用しよう”という、発想の転換が行われています。

電子制御が当たり前になっている現代において、こういったコンベンショナルな技術が出てくるというのは、サスペンションエンジニアの方々の、日頃ごろの研究の成果と言えるでしょう。

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