いすゞトラック水没時の対処法と修理・廃車・買取の選択肢

レスキュートラック

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近年、温暖化の影響によるとされる大型台風や集中豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)が増え、車両の冠水・水没被害が各地で発生しています。いすゞ自動車をはじめとする各メーカーのトラックは、車高が高く頑丈なため水害に強いと思われがちですが、想定以上の水位に達するような深刻な水害では、トラックであっても水没し、エンジンや電気系統に大きなダメージを受ける恐れがあります。

本記事では、トラックが水没してしまった際に取るべき初動対応と、修理を検討するのか、あるいは廃車や買取を選択するのかを判断する上での目安について、初心者の方にもわかりやすく解説します。

CARPRIME編集部

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Chapter
いすゞトラックが水没したときの主な故障ポイント【エンジン・電装・内装】
いすゞトラック水没時の正しい対処ステップとNG行動
修理か廃車か?いすゞトラック水没後の判断基準と費用目安
水没トラックでも売れる!買取で損しないためのポイント
水害は保険でカバーできる?いすゞトラックの補償範囲
まとめ:水没からいすゞトラックを守る予防策と備え

いすゞトラックが水没したときの主な故障ポイント【エンジン・電装・内装】

  • エンジン停止とウォーターハンマーの危険 

    マフラー(排気管)の出口が完全に水中に浸かると、排気ガスが排出できなくなり、排圧の上昇によってエンジンは停止します。さらに深刻なのは、エンジンの吸気口から水を吸い込んでしまうケースです。
    空気が入るべきシリンダー(燃焼室)に、圧縮できない液体である水が入り込むと、ピストンがその水を無理やり圧縮しようとして、コンロッドが曲がったり折れたりするなど、エンジン内部に致命的な損傷(ウォーターハンマー現象)を与えます。

    水没中に無理にエンジンを始動・稼働させようとすると、このウォーターハンマー現象を引き起こす危険性が極めて高まります。

  • 電装系ショートと感電・火災リスク 

    近年のトラックは、エンジン制御や安全装置などに多くの電子制御装置(ECUなど)が使われており、これらは水に非常に弱いです。水没により電気系統がショートすると、メーターパネルや灯火類、各種センサーなど様々な装備が故障する可能性があります。ショートが原因で配線が発熱して発火したり、漏れた燃料などに引火して車両火災に至る恐れもあります。

    特に、いすゞ『エルフEV』のようなバッテリー式電動トラック(EV)や、ハイブリッドトラック(HEV)が水没した場合は、細心の注意が必要です。 これらの車両は、駆動用に数百ボルトにも達する高電圧のバッテリーシステムを搭載しており、損傷した部分や水に触れることで、命に関わる深刻な感電事故のリスクが伴います。絶対に車両本体や、車体に見えるオレンジ色の高電圧ケーブル類には触れないでください。

    このような危険性があるため、車両が浸水した、あるいはその恐れがある場合は、すぐにエンジン(またはシステムの電源)を停止し、絶対に再始動しようとしないでください

  • 内装腐食・カビ・悪臭の二次被害 

    運転席やキャビン内に水が浸入すると、シートや内張り、フロアカーペットなどが汚水を吸い込み、乾燥させてもカビや雑菌が繁殖して、不快な悪臭の原因となります。

    また、フロア下の金属部品や配線類にサビや腐食を発生させます。特に、海水(塩水)をかぶった場合は、塩分が金属の腐食を急速に進行させるため、エンジンやトランスミッション、フレームといった重要部品にまで深刻なダメージが及ぶケースもあります。

いすゞトラック水没時の正しい対処ステップとNG行動

  • 絶対にしてはいけない再始動・自力脱出 

    浸水に気付いたら、あるいは冠水路を走行中にエンジンが停止したら、それ以上エンジンを絶対にかけない(再始動を試みない)でください。これは最も重要な鉄則です。

    水に濡れた電気系統やエンジン内部の状態で無理に始動を試みると、前述の電装系ショートによる火災や感電、あるいはエンジン内部の致命的な損傷(ウォーターハンマー)を引き起こす危険があります。
    また、自力で無理に車を動かそうとすることも、さらなる損傷を招く可能性があるため避けるべきです。

  • プロに任せる!水没直後の行動チェックリスト 

    まずは、ご自身の安全確保を最優先してください。水位が上昇しているなど、危険を感じる場合は、ためらわずに車を離れ、速やかに安全な場所へ避難しましょう。 その上で、動かなくなった車は専門家に任せるのが最も賢明です。
    ご加入の任意保険に付帯するロードサービスや、JAF、専門のレッカー業者などに連絡し、車両の移動を依頼してください。

    ご自身で無理に対処しようとせずプロに任せることで、感電や火災といった二次被害や、車両へのさらなるダメージを防ぐことができます。

修理か廃車か?いすゞトラック水没後の判断基準と費用目安

トラックが水没した場合の被害の程度は、どこまで水に浸かったかという「浸水深」によって大きく異なります。

  • タイヤの半分程度までの浅い浸水: このレベルであれば、エンジンや車内の主要な電気系統への影響は少ない可能性があります。しかし、ブレーキ装置やホイールベアリング、サスペンションの部品などが水に浸かるため、これらの部品の分解・清掃・グリスアップや、場合によっては交換が必要になることがあります。修理費用も比較的安価で済む傾向があります。
  • フロア(キャビン床面)まで浸水: キャビン内部まで水が入ると、フロアカーペットやシート、内装材の交換、そしてフロア下にある多数の電子制御ユニット(ECU)や配線コネクターの交換が必要になる可能性が高まります。カビや雑菌の繁殖による悪臭の問題も深刻で、たとえ乾燥させても衛生面や快適性は著しく損なわれます。このレベルになると修理費用は高額になり、廃車を選択するのが賢明な場合が多くなります。
  • エンジンルームやダッシュボードまで浸水: エンジンやトランスミッションといった主要機関や、ダッシュボード内の複雑な電気系統まで水が達した場合、修理は極めて困難かつ高額になります。修理費用は数百万円以上に達し、車両の価値を上回ることも珍しくありません。この場合は、修理を断念し、廃車や後述する買取を検討するのが現実的です。

水没トラックでも売れる!買取で損しないためのポイント

水没によりエンジンがかからなくなったり、深刻なダメージを受けたりしたトラックでも、専門の買取業者に売却できる可能性があります。廃車にする場合は、解体費用やリサイクル料金など、所有者が費用を負担しなければならないケースもありますが、買取であれば逆にお金を受け取れるかもしれません。

水没車を専門に扱う買取業者は、修理して再販する独自のノウハウを持っていたり、まだ使えるエンジンや部品を取り出して再利用したり、あるいは鉄資源として海外の販路に流したりするなど、様々な方法で価値を引き出すことができます。

修理不能と諦めてしまう前に、まずは複数の水没車対応の買取業者に査定を依頼し、比較検討してみることをお勧めします。



水害は保険でカバーできる?いすゞトラックの補償範囲

加入している自動車保険の車両保険で、水没による車の損害が補償されるケースがあります。 一般的に、台風、洪水、高潮、豪雨による浸水・冠水被害は、車両保険(いわゆるフルカバータイプ)の補償対象となります。

一方で、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする水没や損害は、通常の車両保険では免責事由(保険金が支払われないケース)と定められており、基本的に補償対象外です。このリスクに備えるためには、多くの保険会社が提供している「地震・噴火・津波危険 車両全損時一時金特約」(名称は保険会社により異なります)を別途付帯する必要があります。
この特約があれば、車両が「全損」と判断された場合に、契約時に定めた定額の一時金(例:50万円など)を受け取ることが可能です。

また、車両保険の契約プランによっては、補償範囲を限定した「エコノミー型」などで、台風や洪水による水害(単独事故扱いとなるため)も補償の対象外となる場合があるため、ご自身の契約内容と補償範囲を、事前に保険証券や約款でしっかりと確認しておくことが重要です。

まとめ:水没からいすゞトラックを守る予防策と備え

  • ハザードマップの確認と危険箇所の回避

    日頃から、自治体が公開しているハザードマップなどで、冠水しやすい低地やアンダーパス、河川沿いの道路などを確認しておきましょう。大雨の際は、これらの危険な場所に近づかないようにすることが基本です。道路がすでに川のようになっている場合は、トラックであっても絶対に進入せず、迂回するか安全な場所で待機しましょう。

  • 高台など安全な場所への事前避難

    台風の接近や集中豪雨が予想される場合は、可能であれば事前にトラックを高台など、浸水の恐れがない安全な場所に移動させて駐車し、被害を未然に防ぎましょう。

  • 保険の確認と緊急連絡先の準備

    万一に備えて、ご自身のニーズに合った車両保険に加入し、必要であれば地震・噴火・津波に備える特約の付帯も検討しておきましょう。
    また、加入している保険会社の事故受付窓口や、JAF、いきつけの整備工場などのロードサービスの連絡先を、スマートフォンや手帳などに控えて手元に用意しておくと、いざという時に落ち着いて行動できます。
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