Rolling 40's Vol.91 20年先のバイク選び

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東京モーターサイクルショー2016も終わった。私は昨年からヘルメットインカム「ビーコム」のウェブコマーシャルを担当している御縁で、昨年今年と、同社のブースでトークライブを行った。

text:大鶴義丹 [aheadアーカイブス vol.161 2016年4月号]
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Vol.91 20年先のバイク選び

Vol.91 20年先のバイク選び

打ち合わせで公開前日から各社ブース設営準備中のビックサイトを訪れ、一般来場者と違う視線でモーターサイクルショーに関わった。この経験はバイクメディアに大きく関わる私にとって意味のある経験になっている。

それはお客様が知る必要のない、またはお客様には知られたくない「バイク業者の意図」がよく分かるようになったからだ。

この「意図」の個々の深い部分に関しては、私にも守秘義務のようなものがあるので詳細には書かないが、業界全体が進もうとしている方向性を語るのは問題ないだろう。

一番分かりやすいのは、モーターサイクルショー全体を見て回ったお客様なら誰もが感じることだと思うが、「違法改造部品」は当然のこと、以前は許されていたようなグレー的なものまで徹底的になくなっていることである。これは業界全体が足並みを揃えている「指針」であり、私たち昭和組には隔世の感でもある。

以前のモーターサイクルショーはカスタムバイクの祭典であり、日本全国のカスタムショップのバイクが展示されていたり、大小カスタムパーツメーカーのブースが所狭しと縁日のように並んでいた。しかし今年のモーターサイクルショーにそんな風景はない。大雑把に言うと、2年に一度行われる普通のモーターショーとあまり変わらない風景なのである。

もちろんカスタムパーツメーカーのブースも幾つかはあるのだが、「改造」というよりは「カスタムアイテム」の展示という雰囲気である。もちろん全てリーガル大前提なのは言うまでもない。これは四輪のオートサロンも同様で、昭和組からすると物悲しくもあるが、今のご時世では正しい流れなのだろう。

また昨今のバイクのトータルでの高性能化やハイテク化においては、無駄な改造は改悪でしかなく、昭和的な改造遊びが分け入る隙間もないのが現実なのかもしれない。

しかしバイク乗りたちの、改造への偏愛が完全には無くなる訳もない。そんなはぐれ者たちの受け皿となっているのが「旧車系」である。四輪でも同じような流れがあり、'70年代'80年代のバイクが今新たにブームとなっているのは、雑誌などのカスタム記事を見ても明らかであろう。

しかし私自身の個人趣味でもある旧車カスタムに関しては、私は反対に冷めた目線で接している。理由は簡単で、旧車カスタムなんてものはニッチの極みでしかなく、一部の変質的な連中が小さな世界で楽しんでいれば良いと思っているからだ。

だから私は普通のバイク乗りに対して自分の旧車カスタム愛好なんてものを大っぴらに話したりすることもない。話したとしても、今までの経験では変な顔をされるだけである。

一方、バイク乗り趣味趣向の混乱に乗じて勢いを増しているのが、外車勢である。この躍進は販売台数を見れば明らかだ。

信頼性は未だに国産車の方が一歩先んじているはいるが、国産車のワンパターンデザインや野暮ったさに飽き飽きしている「お小遣いのある昭和組」はかなりの勢いで外車に流れている。

そういう私もオフロードでは、ハスクバーナのエンデューロレーサー乗りであり、トランポ移動前提でのみ許される、多くの犠牲と引き換えの究極性能を楽しんでいる。もちろんナンバー付きでの話だ。こういうものは国産メーカーが絶対に発売出来ない世界観なのは言うまでもない。

国産車の独壇場であったオンロードスーパースポーツを楽しんでいた者たちも、ここ数年で多くがドゥカティ、BMW、KTM、アプリリア、トライアンフ、アグスタ、などに流れていった。

外車のネックであった信頼性の飛躍的な向上が第一であるが、もう一つの理由は、新しい日本車をさらに改造してお金が掛かるなら、最初から改造してあるような「車格」の外車スーパースポーツを大人買いした方が良いということに気が付いたのである。

私のように国産四気筒スーパースポーツに対して昭和的偏愛を持っている輩でも、最近では、ドゥカティやKTMに食指を伸ばしているような次第である。この流れはさらに加速していくであろう。

もう昭和の香りのするあの懐かしい世界は、旧車カスタムのニッチな世界だけの「オタク的」なものになっていくのかもしれない。

だが、旧車カスタムを第一線で突き進んでいる私が言うのも変な話であるが、これからの時代はそれでいいと思う。30年前のバイクなんていう骨董品を大事に磨いているような行為自体があまり「健康的」なものではない。

1984年に16歳になったときの自分は、'84年製の新車を元気良く乗り回していたし、それが一番楽しかったはずである。あの時代から30年前のバイクと言えば1954年製のバイクということであり、16歳の私は、そんな骨董趣味を笑い飛ばすだろう。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968
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