Rolling 40's Vol.92 かぶき者の悩み
更新日:2024.09.09
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年以上、これだけバイクで遊んでいると毎シーズンごとに色々な変化がある。基本的にオンロードもオフロードもやる「両刀使い」なのは基本として、その中でも大きなバイクが良かったり、小さなバイクが良かったり、国産の安定感に惚れ抜いたり、外車のエキセントリックさに刺激を受けたりなど色々だ。
text:大鶴義丹 [aheadアーカイブス vol.162 2016年5月号]
text:大鶴義丹 [aheadアーカイブス vol.162 2016年5月号]
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- Vol.92 かぶき者の悩み
Vol.92 かぶき者の悩み
去年は外車オフロードレーサーのエキセントリックさに振り回されながらも、可能な限り楽しんだシーズンだったと思う。実戦テクニック的な意味においても、実生活に支障のない範疇で追及できたと思う。
またバイクを上手く操るために、フィジカル面での改善を行ったことも大きいだろう。それは同時に無意味な怪我の予防になるということも知った。
今年は新たに我が家に参入した、ホンダ・CRF1000L・アフリカツインというアドベンチャーバイクの存在感が心地よい感じだ。
アドベンチャーバイクというのはBMWのGSシリーズが開祖であるが、そのジャンル自体に、お金のある中高年の道楽というイメージが強かったのは否めない。
まあ実際に200万円以上もする、通勤には使えないくらいに巨大なオフロードとオンロードの「ハーフ美女」を囲うのだから、それなりのお小遣いが必要なのに説明が要らないだろう。
だから私たち「本気組」は嫉妬が8割の斜めの目線で見ていたのが正直なところだ。若い時からバイクを操る鍛錬や苦労をすっ飛ばして、お金でそこに至る過程を買ってしまい、冒険的な「雰囲気」だけをアピールしているように見えてしまうのだ。
大人になってバイクに目覚めたお金持ちからしたら、単なる嫉妬だろと一蹴されてしまうが、バイクにはどうしてもその手の「本質論」が必要なのだ。危険で無意味な存在だからこそ、それをどれだけ乗れるかが大事なのである。
無意味なものにどれだけ情熱を注いでいるかの愚かさ自慢という側面もあるだろう。歌舞伎の語源でもある、奇妙や異常な振る舞いをして男気を見せる「かぶく」という言葉に近いかもしれない。
そこがフェラーリやポルシェなどの高級スポーツカー好きの世界とは絶対的に違う部分だ。そこには財力の誇示という要素が多く介入してくる。だから素晴らしい性能やデザインを愛でる貴族的文化はあっても、それを駆る肉体を語る要素は少ない。
そういう意味でも避けていたアドベンチャー系という高級バイク。実際に250万円もするオフロードバイクが中古で15万円の小型オフロード車に子ども扱いをされてしまうシーンも何度も観てきた。
そういうシーンを観るのが私は一番嫌いだ。もし自分がその250万円のバイクのオーナーなら狂い死にしてしまうだろう。私たちのようなバイク好きが、一番カッコ悪いとする一瞬であると同時に、もっとも美談ともしている「下剋上」でもある。
だがそんな私のアドベンチャーバイクに対する考え方を変えさせたのは、仲間の駆る20年以上も前の、BMW・R100GSラリー仕様(1000cc)である。
これは今のR1200GSアドベンチャーのように巨大ツアラー化する前の、パリ=ダカール・ラリーで高い評価を受けたR80GS(1980年)の血統を受け継いだ本格的な大型エンデューロマシンである。
私は自分のホンダCRF250Lでそのマシンと初めて一緒にオフロードを走った時に心底驚いた。
正直、私は日本の細いオフロードではその手のマシンは上手く走れる訳がないと思っていた。砂漠や広大なステージでない限りは250ccのオフロードマシンが最適であると、自分の経験からも心底信じ切っていた。
「だがそのマシンは違った…」
極端な廃道や獣道、トライアル的なステージ以外での普通のオフロードならば、乗り方を覚えさえしたら、大きなアドベンチャー系でも楽しく走れるのである。小型マシンより難しい点は多々あるが、要は乗り手次第なのである。
国際ラリーなどの経験もあるオーナーから、色々とアドベンチャー系話を聞くうちに私の中でアドベンチャー系への興味が沸き起こった。
もっとも惹かれたのは、アドベンチャー系が小型オフロードよりもオフロードでの走破性が高い低いという比較論ではなく、高速道路での移動が極端に楽だという点であった。
確かにオフロードがメインのツーリングとは言え、移動に使う8割はオンロードである。その移動が苦になるのが小型オフロードバイクのもっとも不利な部分なのだ。トレーラーやワゴン車でトランポするという方法を取っている方もいるが、気ままな林道遊びには大がかり過ぎる。
そして実際にホンダ・CRF1000L・アフリカツインで高速道路の移動の快適さを体験してしまった後では、人間とはダメなもので、小型オフロード車での高速道路の片道100キロ移動も面倒になってくる。
しかし小型オフロードバイクの走破性は、軽量故に転倒も辞さず、それはそれで代えがたいものがあり、今年のシーズンも悩みは尽きることがない。
またバイクを上手く操るために、フィジカル面での改善を行ったことも大きいだろう。それは同時に無意味な怪我の予防になるということも知った。
今年は新たに我が家に参入した、ホンダ・CRF1000L・アフリカツインというアドベンチャーバイクの存在感が心地よい感じだ。
アドベンチャーバイクというのはBMWのGSシリーズが開祖であるが、そのジャンル自体に、お金のある中高年の道楽というイメージが強かったのは否めない。
まあ実際に200万円以上もする、通勤には使えないくらいに巨大なオフロードとオンロードの「ハーフ美女」を囲うのだから、それなりのお小遣いが必要なのに説明が要らないだろう。
だから私たち「本気組」は嫉妬が8割の斜めの目線で見ていたのが正直なところだ。若い時からバイクを操る鍛錬や苦労をすっ飛ばして、お金でそこに至る過程を買ってしまい、冒険的な「雰囲気」だけをアピールしているように見えてしまうのだ。
大人になってバイクに目覚めたお金持ちからしたら、単なる嫉妬だろと一蹴されてしまうが、バイクにはどうしてもその手の「本質論」が必要なのだ。危険で無意味な存在だからこそ、それをどれだけ乗れるかが大事なのである。
無意味なものにどれだけ情熱を注いでいるかの愚かさ自慢という側面もあるだろう。歌舞伎の語源でもある、奇妙や異常な振る舞いをして男気を見せる「かぶく」という言葉に近いかもしれない。
そこがフェラーリやポルシェなどの高級スポーツカー好きの世界とは絶対的に違う部分だ。そこには財力の誇示という要素が多く介入してくる。だから素晴らしい性能やデザインを愛でる貴族的文化はあっても、それを駆る肉体を語る要素は少ない。
そういう意味でも避けていたアドベンチャー系という高級バイク。実際に250万円もするオフロードバイクが中古で15万円の小型オフロード車に子ども扱いをされてしまうシーンも何度も観てきた。
そういうシーンを観るのが私は一番嫌いだ。もし自分がその250万円のバイクのオーナーなら狂い死にしてしまうだろう。私たちのようなバイク好きが、一番カッコ悪いとする一瞬であると同時に、もっとも美談ともしている「下剋上」でもある。
だがそんな私のアドベンチャーバイクに対する考え方を変えさせたのは、仲間の駆る20年以上も前の、BMW・R100GSラリー仕様(1000cc)である。
これは今のR1200GSアドベンチャーのように巨大ツアラー化する前の、パリ=ダカール・ラリーで高い評価を受けたR80GS(1980年)の血統を受け継いだ本格的な大型エンデューロマシンである。
私は自分のホンダCRF250Lでそのマシンと初めて一緒にオフロードを走った時に心底驚いた。
正直、私は日本の細いオフロードではその手のマシンは上手く走れる訳がないと思っていた。砂漠や広大なステージでない限りは250ccのオフロードマシンが最適であると、自分の経験からも心底信じ切っていた。
「だがそのマシンは違った…」
極端な廃道や獣道、トライアル的なステージ以外での普通のオフロードならば、乗り方を覚えさえしたら、大きなアドベンチャー系でも楽しく走れるのである。小型マシンより難しい点は多々あるが、要は乗り手次第なのである。
国際ラリーなどの経験もあるオーナーから、色々とアドベンチャー系話を聞くうちに私の中でアドベンチャー系への興味が沸き起こった。
もっとも惹かれたのは、アドベンチャー系が小型オフロードよりもオフロードでの走破性が高い低いという比較論ではなく、高速道路での移動が極端に楽だという点であった。
確かにオフロードがメインのツーリングとは言え、移動に使う8割はオンロードである。その移動が苦になるのが小型オフロードバイクのもっとも不利な部分なのだ。トレーラーやワゴン車でトランポするという方法を取っている方もいるが、気ままな林道遊びには大がかり過ぎる。
そして実際にホンダ・CRF1000L・アフリカツインで高速道路の移動の快適さを体験してしまった後では、人間とはダメなもので、小型オフロード車での高速道路の片道100キロ移動も面倒になってくる。
しかし小型オフロードバイクの走破性は、軽量故に転倒も辞さず、それはそれで代えがたいものがあり、今年のシーズンも悩みは尽きることがない。
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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968
text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968