私の永遠の1台 VOL.11 ランドローバー レンジローバー

アヘッド レンジローバー

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命を落としてもおかしくないほど、無知で未熟なまま飛び込んでしまった私を、サハラ砂漠は容赦ない厳しさで迎え、ギリギリのところで生かし、最後は温かく包んで送り返してくれた。あんなにも〝生きること〟に貪欲になったのは、後にも先にも、あの猛烈に熱く乾いた大地にいた20日間だけだ。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.170 2017年1月号]
Chapter
VOL.11 ランドローバー レンジローバー
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ほんとうに暑いところで生きるには、長袖の服を着なければならないことも、この先が安全かどうかを測るには、目を凝らして地面の轍を探すことから始める術も、砂丘が刻一刻と姿を変えていくことさえも、サハラ砂漠に行かなければ知らなかった。自分の中に貯めてきたモノが何ひとつ役立たない無力さに、愕然としたものだった。

でもいちばん私の心を揺さぶったのは、進路を見失って絶望感に襲われながら、マシンを降りて砂の上にへたり込んでいる時だった。

どこからともなく現れたのは、ベルベル人という砂漠の原住民とおぼしき小さな子ども。視線を強く感じて顔をあげると、私の目をギュッと真っ直ぐに、一点の曇りもなくギラギラと輝く瞳が見つめていた。

裸足で着るものもままならず、ただそこに無言で立っていた子どもは、全身からもうもうと〝生きる意志〟を放っているようだった。その気迫に私はハッと我に返り、前に進まなければと立ち上がった。

あの子は、生きようとしなければ生きられない世界に自分がいることを、すでに理解していたのかもしれない。きっと再会は叶わないだろうあの瞳を、私は今でも鮮明に思い出す。

そんな、私の人生に強烈な爪痕を残してくれたサハラ砂漠を再び訪れた時、私は幸運にもレンジローバーのステアリングを握っていた。国際試乗会だったから、もちろん安全に配慮した試乗コースが定められ、先導車もサポートカーも通訳もいる万全の体制だった。

とはいえ、ここがあの時と同じサハラ砂漠なのだろうかと疑いたくなるほどに、微塵の怖さも不便もなく、見るものすべてが美しいと感じる余裕さえある。

世界中のあらゆる悪路と極限状態を走り抜くための、タフな骨格とシャシー、最新のテクノロジーは、45年にも渡る4×4一筋の歴史と実績が結集したもの。砂嵐がこようと、スコールで一瞬にして地面が沼地に変わろうと、何メートルの砂丘が立ちはだかろうと、レンジローバーの内側にさえいれば大丈夫。そんな大きな安心感が、私の心を解き放ってくれたのだ。

また私はいつか、サハラ砂漠へ行くだろう。その時に一緒にいて欲しいのが、レンジローバーだ。どんな道だって、誰かに守られながら走ればそこは美しい道になる。それを実現してくれる唯一の1台が、私の永遠の1台だ。

ランドローバー レンジローバー

ラグジュアリーかつ無敵の走破性を備えたSUVとして、1970年に誕生。現行モデルは4代目にあたる。オールアルミのモノコックボディと、どんな路面状況にも対応する先進自動制御技術の「テレインレスポンス」が特徴。

エンジンは3.0ℓV6スーパーチャージ、5.0ℓV8スーパーチャージのガソリンエンジンと、3.0ℓV6ターボのディーゼルエンジンから選択が可能。上質でエレガントな内外装からオフロードの貴公子の異名をとる。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

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