ランドローバーとレンジローバー
更新日:2024.09.09
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昨年の4月、ウィリアム王子とキャサリン妃のロイヤルウエディングが英国で行われた。そのパレードの様子を世界に伝える映像には、王室関係者の乗る高級車に寄り添って走るレンジローバーの姿があった。
text:桜間 潤 写真提供:Land Rover Japan [aheadアーカイブス vol.112 2012年3月号]
text:桜間 潤 写真提供:Land Rover Japan [aheadアーカイブス vol.112 2012年3月号]
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ランドローバーとレンジローバー
華やかな式典にいきなり現れた大柄なSUV。なぜ、レンジローバーが英国王室の晴れの舞台に起用されたのか、その理由を知るためには、歴史を少々遡らなくてはならない。
現在、レンジローバーは、ランドローバーの中のひとつのカテゴリーとして位置づけられる。ランドローバーとは、1948年に誕生したイギリスの自動車メーカーのことだ。
当時のイギリスは、二次大戦の戦勝国だったが、経済的には疲弊し切っていた。結果、国家の再建を支えるクルマの必要に迫られ、アメリカのジープのように多目的に使える四輪駆動車として開発されたのがランドローバー シリーズⅠだった。
シリーズⅠは、軍用に供される一方、民間では農業をはじめ、さまざな産業分野の実用車として利用された。アフリカでは、サファリを行うためのクルマとしても活躍。シリーズⅠはその後モデルチェンジを繰り返し、シリーズⅡ、シリーズⅢ、そして現在では「ディフェンダー」という名前に変わりながらも生産され続けている。
実用車としてイギリス国民に愛されたシリーズⅠ、シリーズⅡだったが、外板むき出しの車内や堅い乗り心地は、あまりにも武骨過ぎた。時代は'60年代も半ばを過ぎ、戦後の混乱も収まった頃である。
オフロード性能はそのままに、もっと快適なクルマこそ必要とされるとランドローバーは考えた。そして、'70年、イギリス国民の前にお披露目されたのがランドローバーのラグジュアリーモデル、「レンジローバー」だった。
外板をリベット留めしただけのシリーズⅡとは対照的に、レンジローバーは高級車のような作り込みがされていた。デザインは従来の“四輪駆動車は実用車”という概念を打ち破るものがあり、工業製品としては唯一ルーブル美術館に収蔵されていることからも、その高い評価が分かる。
販売価格ゆえに一般庶民のためのクルマとは言えなかったが、意外だったのは、貴族階級に属するような人たちもがこぞってレンジローバーを手に入れようとしたことだ。彼らは広い所有地を見回るためのクルマとして、レンジローバーがうってつけと考えたのである。それは、英国王室の人たちも同様だった。
レンジローバーの性能は、ただ単にオフロードも走れる高級車ではなかった。オフロードでの能力は非常に高く、事実、第一回と第三回のパリ・ダカール・ラリーでは優勝を果たし、道なき道を走破するアドベンチャー、『キャメルトロフィー』でも競技車両としてスマトラ島やパプアニューギニアのジャングルを走破した。次第にランドローバーの「レンジローバー」は、イギリス国民の誇りとなっていったのだ。
また、エリザベス女王の戴冠式でランドローバーの初期型シリーズⅠが使われた経緯もあり、純英国メーカーのランドローバーは、レンジローバーの登場により、よりいっそう王室との繋がりを強めていく。
英国には、英国王室御用達の証となる「ロイヤル・ワラント」というものが存在する。これは、エリザベス女王、エディンバラ公、チャールズ皇太子らに物品を納めるブランドの中から厳選される。
対象となるのは食品から工業製品までさまざまだが、ロイヤル・ワラントを与えられるには厳しい審査を受けなくてはならない。ひとつのワラントを授けられるだけでも名誉なのだが、レンジローバーを有するランドローバーは、三人それぞれから与えられる栄誉に浴している。
英国王室を筆頭にイギリス国民から愛されるメーカーがランドローバーであり、その象徴としてレンジローバーというクルマがある。イギリス最高式典のロイヤル・ウェディングにレンジローバーが登場したのは、そんな背景があったのだ。
現在、レンジローバーは、ランドローバーの中のひとつのカテゴリーとして位置づけられる。ランドローバーとは、1948年に誕生したイギリスの自動車メーカーのことだ。
当時のイギリスは、二次大戦の戦勝国だったが、経済的には疲弊し切っていた。結果、国家の再建を支えるクルマの必要に迫られ、アメリカのジープのように多目的に使える四輪駆動車として開発されたのがランドローバー シリーズⅠだった。
シリーズⅠは、軍用に供される一方、民間では農業をはじめ、さまざな産業分野の実用車として利用された。アフリカでは、サファリを行うためのクルマとしても活躍。シリーズⅠはその後モデルチェンジを繰り返し、シリーズⅡ、シリーズⅢ、そして現在では「ディフェンダー」という名前に変わりながらも生産され続けている。
実用車としてイギリス国民に愛されたシリーズⅠ、シリーズⅡだったが、外板むき出しの車内や堅い乗り心地は、あまりにも武骨過ぎた。時代は'60年代も半ばを過ぎ、戦後の混乱も収まった頃である。
オフロード性能はそのままに、もっと快適なクルマこそ必要とされるとランドローバーは考えた。そして、'70年、イギリス国民の前にお披露目されたのがランドローバーのラグジュアリーモデル、「レンジローバー」だった。
外板をリベット留めしただけのシリーズⅡとは対照的に、レンジローバーは高級車のような作り込みがされていた。デザインは従来の“四輪駆動車は実用車”という概念を打ち破るものがあり、工業製品としては唯一ルーブル美術館に収蔵されていることからも、その高い評価が分かる。
販売価格ゆえに一般庶民のためのクルマとは言えなかったが、意外だったのは、貴族階級に属するような人たちもがこぞってレンジローバーを手に入れようとしたことだ。彼らは広い所有地を見回るためのクルマとして、レンジローバーがうってつけと考えたのである。それは、英国王室の人たちも同様だった。
レンジローバーの性能は、ただ単にオフロードも走れる高級車ではなかった。オフロードでの能力は非常に高く、事実、第一回と第三回のパリ・ダカール・ラリーでは優勝を果たし、道なき道を走破するアドベンチャー、『キャメルトロフィー』でも競技車両としてスマトラ島やパプアニューギニアのジャングルを走破した。次第にランドローバーの「レンジローバー」は、イギリス国民の誇りとなっていったのだ。
また、エリザベス女王の戴冠式でランドローバーの初期型シリーズⅠが使われた経緯もあり、純英国メーカーのランドローバーは、レンジローバーの登場により、よりいっそう王室との繋がりを強めていく。
英国には、英国王室御用達の証となる「ロイヤル・ワラント」というものが存在する。これは、エリザベス女王、エディンバラ公、チャールズ皇太子らに物品を納めるブランドの中から厳選される。
対象となるのは食品から工業製品までさまざまだが、ロイヤル・ワラントを与えられるには厳しい審査を受けなくてはならない。ひとつのワラントを授けられるだけでも名誉なのだが、レンジローバーを有するランドローバーは、三人それぞれから与えられる栄誉に浴している。
英国王室を筆頭にイギリス国民から愛されるメーカーがランドローバーであり、その象徴としてレンジローバーというクルマがある。イギリス最高式典のロイヤル・ウェディングにレンジローバーが登場したのは、そんな背景があったのだ。
▶︎ランドローバー シリーズⅠのプロトタイプ。不足していた鉄に代わり、豊富に残っていたアルミを外板に使っていた。
▶︎ランドローバーはシリーズⅠの時代から、英国軍の正規軍用車として採用され続けている。エリザベス女王の戴冠式では、パレード用の車両にもなった。
▶︎階級を超え、ランドローバーはさまざまな人に愛用された。チャーチル元首相もそのひとり。
▶︎キャメルトロフィーでは第2回大会からランドローバーやレンジローバーを競技車輌として採用し続けた。
▶︎初代のレンジローバーは'70年に登場。'96年の生産終了まで、じつに四半世紀にわたって作られ続けた。
▶︎初代を引き継いだ第二世代のレンジローバーは4WD車では電子デバイスを採用した先駆けだった。
▶︎ランドローバーの現ラインアップ中、もっともコンパクトなモデルがフリーランダー2である。
▶︎'48年登場のシリーズⅠの流れを汲むのがディフェンダー。英国軍の正規軍用車両でもある。
▶︎ディスカバリー4は3列シートを持ち、定員は7人。オフロード性能を最大限高めているのがランドローバーのこだわり。
▶︎現在のレンジローバーのトップモデルがレンジローバー ヴォーグだ。ラグジュアリーSUVの頂点に立つ。
▶︎レンジローバー・ヴォーグに対し、オンロードでのスポーティさを兼ね備えたのがレンジローバー スポーツ。
▶︎今年3月3日に国内発売となったレンジローバー イヴォーク。3ドアモデルと5ドアモデルの2種類が用意されている。価格は450万円〜。