絶滅の自動車用空冷エンジン。その魅力はなんだったのか

スバル360

※この記事には広告が含まれます

現在の自動車用エンジンは、例外なく水冷式です。過去には、空冷エンジンを積んだ車も多く存在していましたが、時代とともに淘汰されてきました。しかし、そんな時代だからこそなのか、空冷エンジンにこだわるマニアも多くいるようです。今回は、そんな空冷エンジンの魅力について紹介していきます。

文・吉川賢一
--------------------------------------------------------------------------
いつもCarMeをご覧いただき誠にありがとうございます。
一部、記事内容を修正いたしました。
読者の皆様ならびに関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
(2018年8月16日)
Chapter
空冷エンジンの仕組み
なぜ、空冷エンジンがなくなってしまったか?
空冷エンジンのメリットとは何か?

空冷エンジンの仕組み

※画像はスバル360

多くの空冷エンジンは、シリンダーヘッドやシリンダーブロックに冷却用のフィンを取り付けて表面積を広げて、冷却効率を高めています。空冷エンジンには、自然空冷と強制空冷があり、自然空冷はその名の通り、走行風をエンジンに当てて冷却するもので、オートバイに多く見られる形式です。

一方、強制空冷は、エンジンで駆動するファンで吸い込んだ外気をエンジンに当てて冷却する仕組みで、エンジンルームのある車が多く使っていました。

なぜ、空冷エンジンがなくなってしまったか?

中古車市場におけるポルシェ911シリーズは、1997年まで製造されていた空冷式ポルシェが人気を集めています。これは空冷式エンジンが、もう製造されることのないであろう、というのが理由のひとつのようですが、なぜ空冷エンジンがなくなってしまったのでしょうか。

◎エンジンの冷却が安定しない
空冷式は、基本的に冷却を外気に委ねるため、たとえ大きなファンで強制的に冷却したとしても、それには限界があり、エンジンの温度管理は一筋縄ではいきません。また、シリンダーを3つ以上直列に並べた場合、真んなかのシリンダーと両サイドのシリンダーに温度差が生まれてしまいます。そのためポルシェの6気筒は、各気筒ごとにシリンダーを持っていました。

◎排ガス規制に対応できない
環境問題で、近年はエンジンの温度管理に対する要求が厳しくなっています。いかにムラなく、エンジン全体を均等にスムーズに冷やすかが、排ガス対策としての課題です。その結果、冷却性能に課題がある空冷式は、温度管理がしやすい水冷式に取って代わられました。

◎空冷式は騒音が大きい
空冷式のエンジン音は大きいです。それに対し、エンジンの周りをウォータージャケットで覆っている水冷式は、騒音が小さくなります。

空冷エンジンのメリットとは何か?

これだけ課題の多い空冷式エンジンですが、メリットもあります。

◎独特のエンジン音
特に空冷ポルシェでは、澄んだ金属音と乾いたマフラーの合わさった音がファンには人気です。水冷式に比べて騒音は大きいのですが、その独特のエンジン音は、ポルシェファンにとっては空冷式エンジンのメリットにもなるでしょう。

◎構造がシンプル
バイクのように自然空冷式であれば、エンジンの外部に冷却フィンを取り付け、直接走行中の空気を当てることでエンジンを冷却することができ、比較的シンプルで軽量な構造にできます。レイアウトの関係で自然空冷式ができない場合には、ファンを使って強制空冷を行うことになります。

◎製造や修理の手間がかからずパーツの点数も少なくてすむ
空冷式はシンプルな構造ゆえに、エンジンの部品や冷却用のラジエーターが不要など、パーツの点数が少なくすむことがメリット。パーツ点数や冷却水のぶん、重量を軽くすることができます。

◎冷却水の交換費用はかからない
水冷式は、防錆性があり凍結しにくいロング・ライフ・クーラント(LLC)と呼ばれる冷却水を使用しています。現在は寿命がだいぶ延びましたが、それでも車検をする2年に1回はLLCの交換が必要です。空冷式は冷却水がなく、交換の手間はかかりません。


独特のサウンド、構造がシンプルでメンテが楽などのメリットもある空冷エンジン。素材や技術の進歩によって見直され、もし復活する日が来たら、ファンとしてはとても嬉しいですね。

【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細