Rolling 40's Vol.89 神髄、買いません

Vol.89 神髄、買いません

Rolling

16歳よりバイクに乗り続けてきたアンチエイジング作用だと周りにはうそぶいているが、バイクのことばかり考えているのは本当のことだ。

そんな勢いなので、今年の東京モーターサイクルショーも去年に続いてトークライブイベントに参加する。テーマは今の時点ではバイクライフ全般ということくらいしか決まっていないが、話すことは幾らでもあるので心配は要らないだろう。

モーターサイクルショーの仕事はとても楽しい。それは来客としての視線に加え、出展側の視線でもバイクに関わることが出来るからだ。

公開前日からリハーサルなどで現場に入ることになるのだが、忙しく働いている出展者さんたちの後ろ姿に、彼らがどんな思いでバイク文化を世界に向けて発信しようとしているかを生々しく知ることになる。

これは、出展側になった者だけが知ることのできる「特典」で、そのバックヤード的な光景を見ることができるだけでも、この仕事に関わった価値はあるというものだ。

お客様のためのショーなのは至極当然ではあるが、出展関係者が出展すること自体を楽しんでも間違いではないはずだ。モーターサイクルショーをお客様同様に楽しみにしている者の発信を、お客様に受け止めていただければ最高のシステムになるのではないだろうか。

「排他主義」

バイクに乗ることは、今となっては若者の専売特許ではない。モーターサイクルショーの会場を見渡せば、ハッキリ言ってアラフィフ、アラカンだらけである。アラフォーなんてひよっこ扱いと言ってもいいような状況である。

'80年代バイクブーム直撃世代としては、バイクと言ったら若者という擦り込みが抜けていないが、週末のSAに集まった大型バイクを駆る荒くれたちも、ヘルメットを脱いだらみんな優しそうなオッチャンだらけというのは今や有名な話。

下の世代が育たないと嘆く方も多いが、最近の私の考えは、今の若者たちがバイクなどに乗るはずもなく、その必要もないという感じだ。この考えに至ったのは、サーフィンを長年やっている仲間たちの「格言」がヒントになっている。

サーファーの世界というのは自然とシンプルに向き合う反面、その精神論的な部分においてはとても複雑な世界である。世界大会のような競技的側面もあるが、一つとして同じ形がない波というモノと、一期一会にどう接していくかというような精神世界的な側面が強い。

だからサーファーというのはローカリズムが強く排他的でもある。良い波が人知れず立つようなエリアはシークレットと呼ばれ、地元のサーファー以外は入れないようなことが当たり前にあったりする。

田舎臭い理不尽なローカルルール以外の何ものでもなく、決して褒められたものではないが、同時にそれだけ猛々しくこだわれる姿勢に納得する部分もある。

裾野を広げたり体系化したいのは商売をしている輩の欲でしかない。そんなことより、その世界を分かる奴だけで納得できることを続けたいということだろう。

それとまったく同じとは言わないが、バイクの世界にもそういう排他的な部分がないとは言えない。上手いか否かということがどれだけ大事かは個々の世界観であり、それを正面に出す気はないが、そういう猛々しい部分が必要であるということも分かっている。

またバイクというのは、一部の特化した競技以外は、教えたり教えられるものでもないという持論がある。昔ながらの板前の世界のように、上手い人の真似をしながら覚えていくしかない。乗りたいという気持ちがあるかないかだけであり、バイクをおりてしまう者を止められる訳もなく、また自分がおりたい時に誰かに文句を言われたくもない。

そうして結局、偏屈なサーファーのように、分かる奴だけで納得することをやり続けたいという答えに行き着いた。

「神髄、買いません」

最近SNSで「バイクの神髄を分かっているんですか」というような少し意地悪な質問をベテラン風な方から受けたことがある。少し考えた挙句、私は神髄なんて分からないし、神髄に行き着く気もありませんと答えた。

私は武道家でも修験道の求道者でもなく、単なるバイク好きのアラフィフである。それに無駄に面倒なことが一番嫌いだ。好きなバイクを、同じ世界観を見ることのできる仲間と乗り続けたいだけなので、別に神髄や奥義に辿り着く気など一つもない。たとえそれが量販店で1万円で売っていても買う気もない。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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