新車購入から26年経った今も所有する、生まれ変わっても所有したい!初代 スバル・インプレッサWRX!オーナーレビュー

初代 スバル・インプレッサWRX マリオ高野

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今回は2台所有する愛車のひとつ、初代スバル・インプレッサWRXの「買ったからこそわかる良いところ悪いところ」について報告させていただきます。新車で購入してから26年にもなるので、今さら不満もクソもないわけですが、一言でまとめると、「今度生まれ変わっても、また26年以上所有したい」と思わせてくれる奇跡のクルマです。

文/写真・マリオ高野
Chapter
WRC(世界ラリー選手権)で活躍する姿に憧れた!
頭金ゼロの7年フルローンで買ったヴィヴォオGX-Rの残債を残したまま勢いで購入
気分は、ラリードライバー!運転する度に喜びを得る毎日
まさに人生を変えたクルマ!クルマメディアの世界で働きたいと次第に芽生えた仕事への活力
購入してから26年....しかし、年月が経とうとも愛は消えない
それでも年月が経てば劣化は出るもの。初代・WRX (初期型) あるある

WRC(世界ラリー選手権)で活躍する姿に憧れた!


「GC8」と型式で呼ばれることも多い初代スバル・インプレッサWRXは、一般的なクルマ好きの間での評価はかなり高く、美点や欠点については、とっくの昔に語り尽くされておりますが、筆者個人にとってはどんなクルマだったのかを、あらためて思い出させていただきました。

ワタシが初代インプレッサWRXを購入したのは、1994年1月のこと。それまでの愛車ヴィヴィオGX-Rには大満足していたものの、WRCの影響により「WRXに乗り換えずにはいられなくなった」ことから、ヴィヴィオを新車で購入後わずか半年でWRXに乗り換えます。

今でこそ自動車ライターという職業に就いているワタシも、実はハタチで免許を取るまでモータースポーツはおろか、クルマそのものにまったく興味がないという人間だったので、ラリーやWRCのことなど存在さえ知りませんでした。


しかし、1993年7月にヴィヴィオGX-Rを買ってから足を運ぶようになったスバルディーラーでWRC(世界ラリー選手権)のことを知り、一気にその魅力にハマります。

ショールームに置かれるレガシィセダンと、その横にあるテレビモニターのWRCのビデオ映像を観て、市販車と競技マシンの共通性にまず感動。普通に売られているのと見た目は同じクルマが、世界のあらゆる道のカーブで真横を向きながら前に進む姿に大きな衝撃を受けたのです。F1ブームのさなか、サーキットを走るフォーミュラカーにはまったく興味が惹かれなかったワタシでも、セダンが道路を走るWRCは即座にグッときたのでした。

ちょうどヴィヴィオの新車1000km点検の頃に初代レガシィがWRC初優勝(1993年ニュージーランド)を遂げ、ディーラーでは「ついに悲願成就!」とお祭り騒ぎで盛り上がっていた様子は今も目に焼きついて離れませんが、自分が買ったクルマの作り手であるスバルは、自動車メーカーとしては小規模ながら世界的な競技で好成績を挙げていることがとても誇らしく思えました。そこからWRCへの興味がどんどん深まっていきます。


極めつけは、1993年の1000湖ラリーです。「WRCで勝つために生まれた」とされるインプレッサWRXのデビュー戦はあまりにも鮮烈でした。クルマに関する知識も経験も乏しいハタチの若者の目にも、トンでもない運動性能とコントロール性を備えていることが理解できたほど、当時の映像は衝撃的でした。

イン側のタイヤを浮かせてコーナリングする様子や、ジャンプ時のパワートレーン横置きベース車とは比較にならない姿勢の美しさなどに鳥肌が勃ちまくりです。羽生結弦や大谷翔平レベルの超絶アスリートが、大舞台で世界を席巻する姿に魅了されるにの近いでしょうか。そんなトンでもないクルマが、ハタチの若者(当時)にも買えるなんて!

頭金ゼロの7年フルローンで買ったヴィヴォオGX-Rの残債を残したまま勢いで購入


頭金ゼロの7年フルローンで買ったヴィヴォオGX-Rの残債は、まだ6年半以上残っていましたが、WRX分のローンをもうひと山組んでも、当時の収入でギリギリ支払えるとの算段がつきます。1994年当時のWRX(標準仕様)は、メーカーオプションのエアコンとABSをつけても250万円ほど。用品と諸経費込みでも300万円以下で買えたので、若者でも経済的な事故歴がなく、就業さえしていればヴィヴィオとの二重ローンが組めた時代でした(ただし所有権はクレジット会社)。

実家住まいながら親に経済力がなく、日々の生活費も用立てねばならない状況だったので、その後の支払いはとても苦しく、職場に返済金滞納・および催促の電話がかかってくることもしばしば。

歳が若いので保険代は高く、バカみたいにアクセルを踏むので燃費は悪く、性能維持のため高性能オイルを2ヶ月未満で交換。さらにホイールやマフラーを交換したりもするので、買ってから5年ぐらいはずっと火の車と化していましたが、初代WRXはそんな経済的な辛さを補ってあまりある魅力にあふれたクルマでした。


ワタシのWRXは初期型(アプライドA型)なので、最高出力は240馬力、最大トルクは31.5kg-mと、今の高性能車と比べれば大した数値ではありません。しかし、当時の記憶では、上り坂では掛け値なしに「離陸してまう!」と恐怖感を抱くほど加速は強烈。

1230kgという車重の軽さに加え、今の高性能車と違ってターボラグが非常に大きいことが、印象加速の強さを高めたのでしょう。低めのギヤでアクセルを踏み倒したときの高回転域の炸裂感もハンパなく、どれだけお金がなくても、アクセルを踏み倒すことだけはやめられない止まらない。まさに麻薬のようなエンジンだと、気持ち良すぎることに恐ろしさを感じていました。


また、乗せた人のほぼ全員が「未曾有の加速!」などと感嘆する様子も快感です。当時はまだ一般的にも「速い=良いクルマ」という感覚が根強かったので、「タカノはハタチやのにすごいクルマを買いよった」(大阪の会社)などと職場で話題に。

ハンドリングについても陶酔しきりです。当時は奈良県で暮らしていたので、自宅の近くはワインディングだらけ。WRXの美点を味わい尽くすのに絶好の環境でした。

四駆ゆえに基本は安定志向なので、加速力が凄まじいながらも、無知な若者がちょっと蛮勇を振るう程度では危険な挙動に至ることはありません。当時の国産2リッター車では珍しい「4センサー4チャンネル式」の高精度なABSの制御機能も高く、危険回避能力の高さに救われたことは数知れず。

気分は、ラリードライバー!運転する度に喜びを得る毎日


タイトなコーナーでは、奇跡的なマグレにより荷重移動がうまくいくと、フロントを軸にリヤが軽く流れて素早く向きが変わる特性が発揮されるなど、ビデオやテレビで観るWRCマシンさながらの挙動にも感激しました。「俺にはラリードライバーの素質がある」、「今の俺はカルロス・サインツのように乗れている」などと勘違いさせてくれるほど、高性能車を自在に扱えてる感に浸れたのです。

今も昔もドラテク技量は低いので、たいした走りをしていたわけではありませんが、峠道を走っていると、自分の五感のすべてがクルマの運転操作だけに集中する、いわゆる「ゾーンに入った」状態に突入することもしばしば。クルマを運転することで得られるエクスタシーを覚えます。

まさに人生を変えたクルマ!クルマメディアの世界で働きたいと次第に芽生えた仕事への活力


日常生活でどれだけ嫌なことがあっても、WRXで峠を走っている間は何もかもすべて忘れ、頭の中が真っ白になることで、どれだけ救われたでしょうか。ただひたすら運転という行為のみに没頭できることに、走りながらヨダレを垂らし、腰が抜けそうになるほどの幸福を感じていました。

ワタシの人生において、特に大きな事件や出来事があったわけではありません。しかし、若い頃はメンタルが弱く、時には本気で自殺を考えるようなことも少なくなかったのですが、WRXで峠を走ると、そういうネガな思考が解消されるのです。前述したように、運転操作以外のすべてを忘れて頭が真っ白になることで、心がリセットされるとでもいいましょうか。


もしWRXに乗っていなかったら、果たして自分はどうなっていたのだろうかとよく考えます。自殺までいかずとも、良からぬことをやらかした可能性は高かったでしょう。大げさに思われるでしょうが、WRXは自分にとって「命の恩人」であるといっても過言ではありません。

初代WRXによってクルマを運転することの喜びを知り、その喜びを誰かに伝えたくて、やがてクルマメディアの世界で働きたいと願うようになり、関西から上京して、生活のすべてを一変。

それまでは、仕事で幸せを感じることはほとんどなく、陰々滅々とした日々がずっと続いていましたが、クルマメディアの仕事に就いたとたん、目の前が明るくなり、仕事で幸せを得られるようになりました。WRXは、自分の人生を激変させ、大きな幸福をもたらしてくれたクルマであるともいえるのです。

購入してから26年....しかし、年月が経とうとも愛は消えない


すべて書けばキリがないのでかなり割愛していますが、ワタシがWRXを買ってからスバルはWRC参戦の黄金期を迎え、WRXというクルマが一躍脚光を浴びるようになっていくことも筆舌に尽くし難い喜びであり、誇りでありました。

初代WRXを所有していると、どうしても過去の栄光にすがる後ろ向きな感傷に浸りがちですが、WRXというクルマは、世代を重ね時代が変わっても「世界で戦う」姿勢を貫いてくれています。そんなところも長く所有したくなる要因なのです。

今ではWRXは4世代目となり、WRC撤退から早11年が過ぎました。それでも、今年もニュルブルクリンク24時間レースに挑戦して、大快挙ともいえる好結果を残しているなど「世界で戦う」姿勢を継続。それは初代モデルのオーナーとしても誇らしいことです。世界で戦うことをやめたとき、WRXはWRXでなくなるのでしょう。


月日が流れ、走行距離も伸びて各部が劣化してくると、壮絶なエンジンパワーも甘美なハンドリングもそれなりに低下しました。ハンドリングに関しては、ブッシュなどの消耗品を換えても、かつてのような鋭さはなかなか戻りません。

時代とともに自分の感覚も変わったのでしょうか。それでも、いまだにエンジン本体は快調で、20万キロを過ぎてもブローなどは起こさず。前期型のミッションは「ガラスのミッション」としても有名ですが、高額な高性能オイルをマメに交換してきたせいか、いまだに保っています。エンジンとミッションの結合部分からのエンジンオイル漏れを直すため、ミッションは一度降ろしています。

また、購入してから10数年経ってから初めて本格的な雪上路や氷上を走る機会を得ましたが、低ミュー路では、各部の劣化が進んだ状態でも抜群に楽しい!クローズドコースの雪上/氷上なら、カウンターを当てながらアクセルを全開にしてコーナーを立ち上がる快感が!

まさに「WRC感」が誰でも満喫できるのです!最近の世代のクルマと違ってVDC(横滑り防止機能)はないので電子制御の介入が気になることはなく、パワーもあり過ぎない上に車重が軽いので、雪上/氷上で遊ぶには最高です。

それでも年月が経てば劣化は出るもの。初代・WRX (初期型) あるある


最後に、初代WRX(アプライドA型)の不満点は以下の通り。すでにマニアの間では語り尽くされたことでもありますが、「初代WRX初期型あるある」的にお読みいただければ幸いです。

・四駆なのに直進安定性はあまりよくない
・高速域では重いはずのフロントが浮き気味となる(フロントまわりの空力?)
・パワステポンプや排気管の遮熱板など、直して直してもまた同じように壊れる(寿命が短い)部分が少なくない(いつまで経っても対策がなされない)
・エンプティランプ(燃料残量警告)がない
・マフラーだけ異様に錆びるのが早い(スバル車全般に渡って長年解消されない)
・世界的名車のほまれが高く、いまだに人気も高いので、補修パーツを再販してほしい

「低速トルクが細い」「エンジンオイルがよく漏れる」「ヘッドライトが暗い」「燃費が」など、1992年発売当時のクルマとしては仕方がない、と思えることは割愛しております。

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