スバル フォレスターで冬季性能を確認!雪道における「e-BOXER」のメリット・デメリットとは?
更新日:2024.09.09
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2019年の冬もスバルは雪国で公道試乗会を開催した。2018年は青森県の酸ヶ湯温泉を目的地にインプレッサとSUBARU XVというSGP(スバルグローバルプラットフォーム)に基づく新世代モデルで八甲田山エリアを走破するというプログラムだったが、2019年は山形県月山付近を肘折温泉という秘湯をチェックポイントとしてフォレスター&SUBARU XVというクロスオーバーSUVの冬季性能を確認するという内容になっていた。
文・山本晋也
文・山本晋也
スバルが「AWD」と呼ぶことのこだわり
スタート地点は山形市内。今年は暖冬気味ということで道にはほとんど雪が確認できない。しばらく走ってもドライの舗装路で、目を上にやれば青空が確認できるほど。はやく標高の高い場所に行かないと! というわけで片側2車線の気持ちよく流れている国道を急ぐ。
ちなみに、今回の試乗車は全車がブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「ブリザック VRX2」を履いていた。北海道や東北主要都市ではもちろん、日本全国でも装着率ナンバーワンというVRX2は、こうしたドライ路面での、スタッドレスタイヤと感じさせないしっかり感も魅力のひとつで、そうした部分を感じながらのドライブとなった。
ちなみに、今回の試乗車は全車がブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「ブリザック VRX2」を履いていた。北海道や東北主要都市ではもちろん、日本全国でも装着率ナンバーワンというVRX2は、こうしたドライ路面での、スタッドレスタイヤと感じさせないしっかり感も魅力のひとつで、そうした部分を感じながらのドライブとなった。
さて、まずハンドルを握っていたのはe-BOXERというモーターアシスト型のハイブリッドシステムと2.0リッターエンジンを組み合わせたパワートレインを搭載しているフォレスター「Advance」グレード。駆動システムは前後駆動力配分60:40を基本とした「アクティブトルクスプリットAWD」である。
なおAWDというのは「オールホイールドライブ」の略称で、一般的な4WD(四輪駆動)という表記を使わないのもスバルのこだわり。他社の4WDには基本は2WDでスリップしたときだけ4WDに変身するものもあるが、スバルは常時全輪駆動としている。そうした駆動システムを採用している思いをAWDという表記に込めている。
なおAWDというのは「オールホイールドライブ」の略称で、一般的な4WD(四輪駆動)という表記を使わないのもスバルのこだわり。他社の4WDには基本は2WDでスリップしたときだけ4WDに変身するものもあるが、スバルは常時全輪駆動としている。そうした駆動システムを採用している思いをAWDという表記に込めている。
さらにいえば、スバルのパワートレインは縦置きに搭載した水平対向エンジンを軸にしていることから、基本的に左右対称となっている。その基本レイアウトを「シンメトリカルAWD」と呼んでいるが、これもスバルの伝統であり、その物理的なバランスの良さは他社にはないスバルだけの魅力となっている。また、その開発の歴史は長く、「実路でどうあるべきか」を常に考えているという。
そういえば1970年代に初期の4WD(当時はパートタイム式だ)の冬季テストを山形県・月山で行なったことが、今回の試乗ステージの選定に影響しているというエピソードもあった。今回、当時の試験の様子を写した貴重なフィルムも確認したが、乗用タイプであっても悪路走破性にこだわってきたという歴史の深みを感じさせた。
そういえば1970年代に初期の4WD(当時はパートタイム式だ)の冬季テストを山形県・月山で行なったことが、今回の試乗ステージの選定に影響しているというエピソードもあった。今回、当時の試験の様子を写した貴重なフィルムも確認したが、乗用タイプであっても悪路走破性にこだわってきたという歴史の深みを感じさせた。
「e-BOXER」ならではのAWD制御とは?
そうした実路での経験は、フォレスターのe-BOXER車のセッティングにも活かされている。ハイブリッドカーというのは減速エネルギーを利用してモーターで発電する回生ブレーキという機能を持つが、それは雪道においては諸刃の剣となることもある。主にフロントで回生をするため、前輪のグリップを縦方向に使い切ってしまい曲がる力が弱くなることがある。
結果として、いわゆるアンダーステア傾向が強くなる。しかし、スバルのe-BOXERはAWDを前提としたハイブリッドシステムでもある。雪道など滑りやすい路面を走行していると検知したときには、アクティブトルクスプリット機構の締結力を強め、後輪の回生量を増やすことで前輪の負担を軽減、コーナリング性能を高めているという。
結果として、いわゆるアンダーステア傾向が強くなる。しかし、スバルのe-BOXERはAWDを前提としたハイブリッドシステムでもある。雪道など滑りやすい路面を走行していると検知したときには、アクティブトルクスプリット機構の締結力を強め、後輪の回生量を増やすことで前輪の負担を軽減、コーナリング性能を高めているという。
とはいえ、実際にはそれがパフォーマンスの差としては感じられなかった。非ハイブリッドの2.5リッター直噴エンジンを搭載する「Premium」グレードの走りと比べてもフロントの手応えがあるわけではない。むしろガソリンエンジン車のほうが雪道におけるノーズの動きはキビキビとしていた。
このあたり、車重の違い(ハイブリッド車は1650kg、試乗したガソリンエンジン車は1560kg)という要件もあるので単純比較はできないが、滑りやすい雪道でのアクティブトルクスプリット機構の制御というのはガソリンエンジン車でも行われているわけで、その緻密さはハイブリッド(電動車両)を凌駕するレベルに仕上がっているといえるのかもしれない。
しかし、坂道発進でアクセルを踏み込んだときにはハイブリッド「e-BOXER」のアドバンテージが明らかとなる。
2.5リッターエンジン車では、さすがのブリザック VRX2も横方向にスリップしてしまう感覚があるが、モーター駆動をうまく利用したe-BOXERではアクセルペダルの操作に対する応答遅れが少なくなっていることもあって、しっかりと路面をグリップして坂を登っていく。モーターならではの「素早く、緻密な駆動力」は雪道で明確なメリットとなることが確認できた。
このあたり、車重の違い(ハイブリッド車は1650kg、試乗したガソリンエンジン車は1560kg)という要件もあるので単純比較はできないが、滑りやすい雪道でのアクティブトルクスプリット機構の制御というのはガソリンエンジン車でも行われているわけで、その緻密さはハイブリッド(電動車両)を凌駕するレベルに仕上がっているといえるのかもしれない。
しかし、坂道発進でアクセルを踏み込んだときにはハイブリッド「e-BOXER」のアドバンテージが明らかとなる。
2.5リッターエンジン車では、さすがのブリザック VRX2も横方向にスリップしてしまう感覚があるが、モーター駆動をうまく利用したe-BOXERではアクセルペダルの操作に対する応答遅れが少なくなっていることもあって、しっかりと路面をグリップして坂を登っていく。モーターならではの「素早く、緻密な駆動力」は雪道で明確なメリットとなることが確認できた。
さらにフォレスターに備わる「X-MODE」機能を使うと、よりスリッピーな路面に合わせてモーター駆動の比率を高めることでリニアリティを増しているという。今回はX-MODEを使うまでもない道路状況だったが、深雪などでの走破性が高いというアドバンテージは、クロスオーバーSUVとしてe-BOXER車を選ぶインセンティブになるだろう。
生産休止の問題とは果たして何だったのか
ところで、最近のスバルといえば生産に関わるいくつかの問題がニュースとなった。完成検査や排ガスの抜き取り検査における不適切行為は、ブランドへの信頼性を揺るがすものであり、その対策として企業風土の改革が進められている。
また2019年に入ってからは、ステアリング系パーツの問題により、スバルの国内生産が停止したこともあった。その結果としてインプレッサ、SUBARU XV、そしてフォレスターのリコールも発表されている。
今回、雪上で試乗する前に、リコールにつながったステアリングシステムの問題について、何が原因で、どのような対策をしたのかを尋ねた。雪道での車両性能がどうであろうと安心して乗っていられる信頼性を取り戻しているのかを確認したかったからだ。
まずリコールについてはすでに発表されているように、平成30年12月28日~平成31年1月16日の期間に製造された約780台が対象。限られた期間の問題というわけだ。その原因については、サプライヤーの限られたラインにおいて、限られた日数で生産されたパーツに限ったトラブルだったという。具体的には特定の1本の生産ラインにおける特定のロット(数日分の生産品)に限って起きた問題ということだ。
もちろん、こうした原因解明はすぐに出来たわけではない。そのためには一週間程度の生産休止という自動車メーカーとしては大きな犠牲を払っている。
今までのスバルであれば、生産しながら原因を解明する、つまり「走りながら考える」ということをしていたかもしれない。実際、一週間も生産を止めるというのは売り上げに対する影響も大きい。さらにいえば、生産上の都合があったとはいえ、リコールを実施するインプレッサ、SUBARU XV、フォレスター以外のモデル(レガシィ、レヴォーグ、86/BRZなど)についても生産を止めることになってしまった。
ここまで品質管理を徹底するという姿勢が生まれてきたことは、企業風土の改革が進んでいることの証左であろう。一度失った信頼を取り戻すことは容易ではないし、ブランドについた傷は簡単には治らない。しかし、ステアリング系パーツのトラブルにまつわる対応を聞けば、その険しい道を乗り越えていけるという確信を持つことができた。
また2019年に入ってからは、ステアリング系パーツの問題により、スバルの国内生産が停止したこともあった。その結果としてインプレッサ、SUBARU XV、そしてフォレスターのリコールも発表されている。
今回、雪上で試乗する前に、リコールにつながったステアリングシステムの問題について、何が原因で、どのような対策をしたのかを尋ねた。雪道での車両性能がどうであろうと安心して乗っていられる信頼性を取り戻しているのかを確認したかったからだ。
まずリコールについてはすでに発表されているように、平成30年12月28日~平成31年1月16日の期間に製造された約780台が対象。限られた期間の問題というわけだ。その原因については、サプライヤーの限られたラインにおいて、限られた日数で生産されたパーツに限ったトラブルだったという。具体的には特定の1本の生産ラインにおける特定のロット(数日分の生産品)に限って起きた問題ということだ。
もちろん、こうした原因解明はすぐに出来たわけではない。そのためには一週間程度の生産休止という自動車メーカーとしては大きな犠牲を払っている。
今までのスバルであれば、生産しながら原因を解明する、つまり「走りながら考える」ということをしていたかもしれない。実際、一週間も生産を止めるというのは売り上げに対する影響も大きい。さらにいえば、生産上の都合があったとはいえ、リコールを実施するインプレッサ、SUBARU XV、フォレスター以外のモデル(レガシィ、レヴォーグ、86/BRZなど)についても生産を止めることになってしまった。
ここまで品質管理を徹底するという姿勢が生まれてきたことは、企業風土の改革が進んでいることの証左であろう。一度失った信頼を取り戻すことは容易ではないし、ブランドについた傷は簡単には治らない。しかし、ステアリング系パーツのトラブルにまつわる対応を聞けば、その険しい道を乗り越えていけるという確信を持つことができた。
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山本晋也
自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。