廉価版だからと侮るなかれ。スバルを良く知るライターが語る、スバル インプレッサG4 1.6i を愛車にした理由 オーナーレビュー

スバル インプレッサG4 マリオ高野

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1994年に新車で購入した愛車、初代スバル・インプレッサWRXの老朽化により、増車を検討。老朽化したとはいえ、高出力ターボのスポーツモデルはすでにあるので、その対極にある廉価で低スペックな実用車として、スバル・インプレッサG4 1.6i(5MT)を選択。2014年2月に新車で購入しました。個人的に好きなメーカーであるスバルの、MTが選べる当時の最廉価車です(軽自動車を除く)。

文/写真・マリオ高野
Chapter
カッコイイ!と思わずスバリストが一目惚れ
低グレードだけど、ハンドリングもエンジンもミッションも大満足!
エンジンもハンドリングも最高と褒め称えたけれど、不満もやっぱりあります

カッコイイ!と思わずスバリストが一目惚れ


先代モデルのインプレッサG4は、はじめて実車を見た時から「欲しい」と思うほど気に入っておりました。質実剛健っぽい内外装や、5ナンバー枠ではなくなったとはいえ、比較的コンパクトなボディなのに大人5人がしっかり乗れるパッケージング、素直な操縦性など、仕事で乗るたびに優れた実用車であることを確認していたのです。長距離・長時間のドライブでの疲労が少ないことも、購入対象として大きな魅力。

2014年当時のインプレッサG4の1.6リッター車には、スバル車の代名詞的装備である運転支援システムのアイサイトが装備されず、さらに最廉価グレードの「1.6i」は、アルミホイールもつかないなど、装備内容はやや寂しい仕様です。しかし、その分車両本体価格は169万円という安さ(消費税5%時代)です。軽自動車でもハイトワゴン系の上級グレードなら軽く200万円を超えることを思えば、水平対向エンジンを搭載するAWD車としては極めてお買い得なクルマといえました。


購入から早5年がすぎ、走行距離は14万キロほどになりましたが、スバル・インプレッサG4 1.6i(5MT)というクルマを一言でまとめると、「すべての性能が想定以上」という評価で揺らぎません。買う際に期待したのは実用セダンとしての実直さのみであり、たとえばファン・トゥ・ドライブ性はほとんど期待していなかったのですが、運転フィールが存外に楽しいことにビックリしました。

まず、エンジンが期待以上によく回り、しかも回転フィールが気持ち良いことは最大の想定外。FB16型と呼ばれるNAの1.6リッターエンジンは、AT(CVT)で乗るとごくごく普通の実用エンジンという感じで、低速トルクが厚くて乗りやすいことは実感済みでしたが、その反面、味わいは薄く、フィーリング面で高得点が与えられる類いのエンジンではないと認識していました。

「先代インプレッサは、エンジンが普通すぎてツマラナイよね」などと思っている人はきっと多いことでしょう。かくいうワタクシ自身もそう思っておりました。しかし、先代インプレッサのエンジンも、実はMTで乗ると別モノのように刺激的で、痛快な回転フィールが得られるユニットなのです!


今ドキのAT(CVT)は制御が賢く、エンジンが効率的に高トルクを発揮する回転域を常にキープするように変速するので、スポーツ性の高さを意識したモデルでない限り、多少アクセルを多めに踏み込んでもエンジンが高回転までビュンビュン回るようなことはなくなっております。

先代型インプレッサシリーズの場合、2リッター車ではAT(CVT)でも任意で変速できるパドルシフトが備わるので、比較的ドライバーの任意で回転数をコントロールすることができますが、1.6リッター車は「D」と「L」の2レンジしか選択できず、アクセルを全開にし続けない限り、高回転域をフル活用することができません。そこに古いタイプのクルマ好きは物足りなさを覚えるものです。そもそも、ソツのない足として使う実用車にエンタメ性は期待できないものと諦めるのが普通でしょう。

しかし、MTのインプレッサを買うと、それが覆されたのです!


ドライバーの任意で高回転キープができるMTなら、無駄に上まで回し切る自由が得られるおかげでエンジンの印象が激変します。低回転域では多少眠たい感じがしますが、3500回転あたりから音質が高周波系に変わり、電気モーターのようと形容される水平対向エンジンらしいスムーズ感が炸裂! このトルク特性のメリハリ感は、トルクが増幅されるAT(CVT)では感じにくいのです。ラクができる分、うま味は薄れてしまうわけですね。

MTなら可能な、レッドゾーン手前の回転域を延々とキープする蛮行を繰り返しても振動が過度に大きくなることはなく、「エンジンに無理をさせている」という罪悪感を抱くことも一切なく、清涼感のある緻密なメカニカルサウンドを聴き続けられるのです。同クラスの他銘の実用車向け直列4気筒エンジンとは明らかに一線を画す甘美なポイントがここにあり!

スバルの水平対向エンジンは、スポーツ性を意識していない廉価な実用車向けであっても、機械としての素性の良さは隠しきれずというわけです。MTで乗れば本領を発揮するということに感動しました。

低グレードだけど、ハンドリングもエンジンもミッションも大満足!


そんなエンジンの旨味を引き出してくれる5MTのギアボックスも悪くありません。シフト操作時のストローク量や節度感はほどよく、長年にわたり改良を重ねてきた完熟モノならではの絶妙な塩梅。縦置き搭載ならではのダイレクト感がえられるのも、このクラスでは稀有な存在です。

効率的に高トルクが発揮される回転域である3500~4500回転あたりのスイートスポットをまさぐりやすいギヤ比の設定も絶妙。5速ということで、6速に比べると高速巡行時の燃費では不利になると思いきや、スバル車としてはかなりハイギアードなので、80~90km/h巡行時にはリッターあたり20kmを超える燃費を記録することも可能。

2019年6月現在でもなお、歴代スバルAWD車でもっとも低燃費なクルマだったりします。さらに、最高出力はわずか115馬力ながら、絶妙なギア比のおかげで高速域では意外と力強く巡行できるのも隠れた美点。新東名高速や東北道の一部で実施されている120km/h区間では、実質130km/hあたりまで取締りの対象にならずに巡行できますが、その速度域になると、5速でちょうど効率よく高トルクが発揮される回転域になるので、存外に非力感や痛痒感を抱かずに巡行できるのです。

ギアボックス自体の基本設計は昭和まで遡るほど古く、比較的最近になってハイテクを駆使した新しいMTギアボックスを採用しているトヨタやマツダと比べると悔しさが禁じ得ませんが、MTギアボックスの善し悪しは、新しさやギアの段数で決まるものではないという事実を教えてくれるミッションなのでありました。


そして、ハンドリングについても想定外の美点だらけで感動の連続。最廉価グレード1.6iのタイヤサイズは195/65R15で、タイヤはグッドイヤーのエクセレンスという、設計年次がやや古めのタイヤが装着されますが、サスペンションの路面追従性が良いおかげでタイヤの性能を最後の一滴まで使い尽くしやすく、峠道はもちろん、ミニサーキットでもコーナーで腰砕け感が出たりしないなど、意外に不満なく走ることができます。ブレーキはフロントが14インチで、サーキット走行時などでは耐熱キャパの小ささが顔を出しますが、制動力そのものに不満はありません。

さらに、最廉価グレード1.6iの5MT車は電動パワステではなく油圧式のパワステを採用し、ギア比は16.5対1とかなりスローな設定ながら、スポーツ走行時でもハンドリングのダルさが嫌になるようなことはありません。氷上や雪上走行時など、カウンターステアを当てまくるような場面では、ステアリングを回す量の多さがわずかに気になる程度。

むしろ油圧式ならではのしっかりとした手応えも相まって、なかなか味わい深いステアリングフィールであると今も感心しております。


スポーツ性はまったく期待できないはずの、廉価な実用小型セダンを買ったというのに、エンジンとミッション、そしてハンドリングが存外に秀逸なおかげで、これを買ってからサーキット走行にハマるというまさかの副産物も得られました。通算20回以上サーキットを走っているなど、それなりに酷使をしながら走行距離が14万キロに達しても劣化の類いが少ないことも美点といえます。

あと、フロントシートは見た目には地味ながらかけ心地が良く、少なくともワタクシの体型にはピッタリにて、長距離運転時での疲労が少ない点も大きな魅力。1日に1000kmほどの長距離を走ることも苦にならないロングドライブ耐性の高さは、同クラスの他銘車では得られないものでしょう。

アイサイト無しでもそう思えるのだから、スバルの廉価車の実力は素晴らしいと称えたくなります。

現行型のインプレッサにMTがあれば即座に乗り換えるのですが、どうやらスバルの実用グレードのMT車はしばらく出ない気配なので、愛車1号の初代WRXともども、朽ち果てるまで乗り続ける所存にて。

エンジンもハンドリングも最高と褒め称えたけれど、不満もやっぱりあります


最大の不満は、「横風にめっぽう弱く、高速巡航中に風の影響を受けやすい」こと。車重の軽さやタイヤの細さなど、最廉価グレードならではの難点かも知れません。

他にも細かな不満はいくつかありますが、車両価格の安さを思えば不満ゼロといっても過言ではなく、どれもたいした問題ではありません。細かな不満としては、具体的に以下の不満点が挙げられます。

・エアコンのコンプレッサーの作動音がやたら大きい
・塗装の質が悪く、飛び石などで小傷がつくとすぐにサビが浮く
・季節により外装の樹脂部分が変形し、謎の穴があく(フロントガラスの根元あたり)

そんな些細なことより、もっと根本的な不満として「廉価グレードにしかMTが設定されなかった」のを強く挙げたいところ。ワタクシのようなマニアは装備がショボイ最廉価グレードでも喜んで買いますが、一般的なユーザーはさにあらず。たとえMTが欲しくても、1.6リッター車にしか設定がなく、装備内容も寂しいものとなれば、MTを諦めるのも無理はありません。

先代インプレッサにはMTがあったにも関わらず、ほとんど売れなかったのは、MTが選べる仕様の内容に魅力がなかったことも大きいはず。もっとスポーツ性を高めたグレードや仕様でMTが選べたなら、違った結果となったかも知れません。愛車に乗りながら日々思う不満は、そのことに尽きます。

といいながらも、そんな残念なグレード設定のおかげで、自分の愛車先代インプレッサG4のMTは極めて希少な存在。「レアなクルマに乗っている」と自己満足していたり、密かな優越感が得られていることに実はニンマリしているという矛盾もあるのですが・・・(笑)

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