落下物を踏んで跳ね上げ、後続車に当てたら責任は誰?【2025年最新】
更新日:2025.07.22

※この記事には広告が含まれます
高速道路や一般道を走行中、落下物(道路上に落ちている物体)に遭遇することは珍しくありません。とくに高速走行中の落下物跳ね上げ事故は深刻な被害につながるおそれがあります。もし自分の車が道路上の落下物を踏んで跳ね上げ、その物が後続車に当たってしまったら... いったい誰が責任を負うのでしょうか。本記事では、この疑問に答えるために最新の法律や保険の知識を解説します。併せて、落下物とは何か、事故時の責任の所在や保険の適用、そして予防策についても詳しく見ていきましょう。
- Chapter
- 落下物とは?
- 落下物を落とすのは違法――道路交通法と罰則
- 運転者の義務:積載物の落下防止措置
- 落下させた場合の罰則と責任
- 落下物事故の責任は誰に?ケース別の考え方
- 基本原則:落下させた「落とし主」の責任
- ケース①:先行車が落下物を踏み、それが後続車に当たった場合
- ケース②:道路上に落ちていた落下物を後続車が自ら踏んだ場合
- 現実的な問題と自己防衛の重要性
- 保険では何が補償される?自賠責と任意保険の適用
- 基本:自賠責保険と任意保険の役割分担
- 自分の車の損害:車両保険の適用範囲に注意
- 相手(落とし主)が判明している場合の対応
- 自分や同乗者がケガをした場合の補償
- 落下物事故を防ぐために:運転中の注意ポイント
- 落下物を見つけたら?
- まとめ
落下物とは?
落下物とは、本来は車両に積んでいた荷物や部品などが走行中に道路上に落ちてしまったものを指します。典型例として、トラックから落ちた積荷や走行中に外れたタイヤ・部品などが挙げられます。
高速道路会社の統計によれば、2022年に全国の高速道路で処理された落下物は約31万件にも上り、内訳はプラスチック・ビニール・布類が最多、次いでタイヤ等の車両部品類、木材類の順でした。
これは一日あたり約840件、10分に約6件もの危険物が路上に落ちている計算になります。小さなビニールシートや木片など一見些細な物でも、タイヤに絡まったり後続車に飛来して事故の原因になり得ます。落下物は他人事ではなく、ドライバー全員が常に注意を払うべき危険だと言えるでしょう。
高速道路会社の統計によれば、2022年に全国の高速道路で処理された落下物は約31万件にも上り、内訳はプラスチック・ビニール・布類が最多、次いでタイヤ等の車両部品類、木材類の順でした。
これは一日あたり約840件、10分に約6件もの危険物が路上に落ちている計算になります。小さなビニールシートや木片など一見些細な物でも、タイヤに絡まったり後続車に飛来して事故の原因になり得ます。落下物は他人事ではなく、ドライバー全員が常に注意を払うべき危険だと言えるでしょう。
落下物を落とすのは違法――道路交通法と罰則
運転者の義務:積載物の落下防止措置
言うまでもなく、落下物の賠償責任は基本的に落とし主が負います。道路交通法では、運転者には「積載物の転落や飛散を防ぐため必要な措置を講ずること」との義務が定められています。
特に高速道路では、あらかじめ積載状態を点検して落下防止策を講じる義務(同法第75条の10)も規定されています。
万一荷物を落としてしまった場合は、速やかに落下物を除去するなど、道路上の危険を防止する措置を取らなければなりません。
特に高速道路では、あらかじめ積載状態を点検して落下防止策を講じる義務(同法第75条の10)も規定されています。
万一荷物を落としてしまった場合は、速やかに落下物を除去するなど、道路上の危険を防止する措置を取らなければなりません。
落下させた場合の罰則と責任
これらの義務に違反すると、処罰の対象となります。その責任は「行政」「刑事」「民事」の3つの側面に分かれます。
さらに、落下物が原因で人を死傷させた場合には「過失運転致死傷罪」が適用され、最大で7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金という、非常に厳しい罰則が科される可能性があります。
- 行政処分(違反点数と反則金)
- 刑事罰(懲役または罰金)
さらに、落下物が原因で人を死傷させた場合には「過失運転致死傷罪」が適用され、最大で7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金という、非常に厳しい罰則が科される可能性があります。
- 民事上の責任(損害賠償)
落下物事故の責任は誰に?ケース別の考え方
基本原則:落下させた「落とし主」の責任
まず大前提として、落下物事故の第一義的な責任は、物を落とした「落とし主」にあります。落とし主が判明している場合は、その運転者が損害賠償責任を負うことになります。
問題となるのは、高速道路などで「落とし主が誰だか分からない」というケースです。この場合、責任の所在は状況によって非常に複雑になります。
問題となるのは、高速道路などで「落とし主が誰だか分からない」というケースです。この場合、責任の所在は状況によって非常に複雑になります。
ケース①:先行車が落下物を踏み、それが後続車に当たった場合
道路上の落下物を先行車が踏みつけ、弾き飛ばされた物が後続車に当たって損害を与えた、というケースです。この場合、原則として第一の責任は特定できない「落とし主」にあります。
その上で、先行車と後続車の双方に過失(不注意)がなかったかが問われます。
ただし、夜間や雨天であったり、落下物が小さく発見困難であったりした場合は、双方ともに回避が不可能だったとして、誰の責任も問われない(=後続車が自費で修理する)と判断されることもあります。
その上で、先行車と後続車の双方に過失(不注意)がなかったかが問われます。
- 先行車の過失
- 後続車の過失
ただし、夜間や雨天であったり、落下物が小さく発見困難であったりした場合は、双方ともに回避が不可能だったとして、誰の責任も問われない(=後続車が自費で修理する)と判断されることもあります。
ケース②:道路上に落ちていた落下物を後続車が自ら踏んだ場合
先行車は関係なく、自分が走行中に道路上の落下物に気づかず、踏んだり衝突したりして自分の車が損傷したケースです。この場合も、本来は「落とし主」に責任があります。
しかし、落とし主が不明である以上、運転者自身にも「前方をよく見ていなかった」という前方不注意の過失が問われることになります。保険実務上、落とし主不明の落下物による単独事故は、残念ながら運転者自身の責任として扱われるのが一般的です。
しかし、落とし主が不明である以上、運転者自身にも「前方をよく見ていなかった」という前方不注意の過失が問われることになります。保険実務上、落とし主不明の落下物による単独事故は、残念ながら運転者自身の責任として扱われるのが一般的です。
現実的な問題と自己防衛の重要性
このように、落下物事故の責任はケースバイケースで判断されますが、最大の課題は「落とし主を特定するのが極めて困難」である点です。
現実には、落とし主が特定できず、被害者が泣き寝入り(車両保険を使うか、自腹で修理する)となるケースが後を絶ちません。ドライブレコーダーで物が落下する瞬間や、落とし主の車両ナンバーが記録されていない限り、加害者不明の事故として扱われ、誰にも賠償を求めることができないのが実情です。このため、十分な車間距離の確保や、ドライブレコーダーの設置といった自己防衛策が非常に重要になります。
現実には、落とし主が特定できず、被害者が泣き寝入り(車両保険を使うか、自腹で修理する)となるケースが後を絶ちません。ドライブレコーダーで物が落下する瞬間や、落とし主の車両ナンバーが記録されていない限り、加害者不明の事故として扱われ、誰にも賠償を求めることができないのが実情です。このため、十分な車間距離の確保や、ドライブレコーダーの設置といった自己防衛策が非常に重要になります。
保険では何が補償される?自賠責と任意保険の適用
基本:自賠責保険と任意保険の役割分担
まず、すべての自動車が加入を義務付けられている自賠責保険(強制保険)は、対人事故の損害のみを補償する保険です。そのため、落下物によって車が損傷するなどの「物損」被害は、自賠責保険の対象外となります。
車両や物への損害は、任意で加入する任意保険でカバーすることになります。他人の車に損害を与えてしまった場合は自分の「対物賠償保険」から、自分の車が受けた損害の修理については自分の「車両保険」で補償を受けるのが基本です。
車両や物への損害は、任意で加入する任意保険でカバーすることになります。他人の車に損害を与えてしまった場合は自分の「対物賠償保険」から、自分の車が受けた損害の修理については自分の「車両保険」で補償を受けるのが基本です。
自分の車の損害:車両保険の適用範囲に注意
自分の車が落下物に当たって壊れた場合、車両保険に加入していれば修理代は補償されます。ただし、保険の種類や事故の状況によって適用範囲が異なるため注意が必要です。
- ケース①:前を走る車から落ちてきた物に当たった場合
- ケース②:すでに道路上に落ちていた物に衝突した場合
相手(落とし主)が判明している場合の対応
落下物の落とし主が特定でき、その相手に賠償請求できる場合は、通常、相手方が加入している任意保険の「対物賠償保険」から賠償金が支払われます。
とはいえ、現実には落とし主が見つからないことも多いため、事故に遭った際はドライブレコーダーの映像や現場の写真を確保し、必ず警察に届け出て「交通事故証明書」を取得しておくことが、後の手続きのために非常に重要です。
とはいえ、現実には落とし主が見つからないことも多いため、事故に遭った際はドライブレコーダーの映像や現場の写真を確保し、必ず警察に届け出て「交通事故証明書」を取得しておくことが、後の手続きのために非常に重要です。
自分や同乗者がケガをした場合の補償
万が一、落下物事故で運転者自身や同乗者がケガをしてしまった場合は、自分が加入している「人身傷害保険」を使えば、相手が不明な事故であっても治療費などが補償されます。
この場合も、保険金の請求には「交通事故証明書」が必須となるため、たとえ軽微な物損事故であっても、必ず警察を呼んで事故の届出を行うようにしましょう。
この場合も、保険金の請求には「交通事故証明書」が必須となるため、たとえ軽微な物損事故であっても、必ず警察を呼んで事故の届出を行うようにしましょう。
落下物事故を防ぐために:運転中の注意ポイント
- 車間距離を十分にあけて走行する
- 積み荷が不安定そうな車には近づかない
- 路肩寄りを走らない
- 小さな物でも可能な限り踏まない
落下物を見つけたら?
そして、走行中に落下物を発見したらどうするか。高速道路でビニール袋やタイヤ、木材などの落下物を見つけても、自分で降りて回収しようとしてはいけません。代わりに道路緊急ダイヤル(#9910)や最寄りの非常電話で場所を通報し、道路管理者に処理を任せてください。
また、荷物を落としてしまった車の運転者も、安全を確保して停車し、警察や道路管理者に速やかに連絡する義務があります。万一落下物との接触で車が走行不能になった場合は、ハザードを点けてできるだけ路肩に寄せ、乗員はガードレールの外側など安全な場所に退避した上で、#9910や非常電話で救援を求めましょう。
また、荷物を落としてしまった車の運転者も、安全を確保して停車し、警察や道路管理者に速やかに連絡する義務があります。万一落下物との接触で車が走行不能になった場合は、ハザードを点けてできるだけ路肩に寄せ、乗員はガードレールの外側など安全な場所に退避した上で、#9910や非常電話で救援を求めましょう。
まとめ
全国で年間31万件もの落下物が処理されている現実を踏まえ、落下物事故は決して珍しくない身近なリスクです。日頃から車間距離の確保と周囲への注意を怠らず、万一の際も慌てず対処すれば、落下物事故を防ぎ、安全なドライブにつながります。