吉田 恒道|よしだ つねみち

1980年代、大学卒業後ファッション・モード専門誌「WWD Japan」編集部勤務を皮切りに編集者としてのキャリアを積む。その後、90年〜2000年代、中堅出版社ダイヤモンド社の自動車専門誌・副編集長に就く。以降、男性ライフスタイル誌「Straight’」(扶桑社)など複数の男性誌編集長を歴任し独立、フリーランスのエディターに、現職。著書に「シングルモルトの愉しみ方」(学習研究社)がある。

吉田 恒道
Chapter
後部座席は商品価値

後部座席は商品価値

必要性すら問われかねない小さなリアシートが、なぜ今でも一部のモデルに採用されているかといえば、純粋なスポーツカーであったとしても、リアシートがあること自体に商品価値があるためでしょう。

例を挙げるならば、ポルシェ911はもともとリアシートを持っていることが個性のひとつとなっています。エンジンをフロントでなく車体中心部分に設置するミッドシップのスポーツカーでは、構造上リアシートを用意するのは基本的に困難です。

しかし、リア側にオーバーハングが突出した、リア・オーバーハングにエンジンを積む911であれば、リアシートを搭載することができます。

逆に言えば、ポルシェの911が4人分の座席を搭載していること自体が、リアエンジンであることをさりげなく主張していると捉えることもできるのです。

さらに、4シーターのモデルが存在するからこそ、リアシートを外した2シーター仕様が、ピュアスポーツカーとしてのスパルタンさを強調できるという一面もあるでしょう。
もちろん、狭小とはいってもリアシートがあることで、人を乗せることも可能であり、荷物を載せるためのスペースとしても活用することができます。

フェラーリやランボルギーニといったスーパースポーツを、何台も所有する資産家であればともかく、国産の2リッタークラスのクーペを選ぶようなユーザーには、リアシートの有無は重要な要素でしょう。

仮に、1人で運転を楽しむつもりであっても、2人しか乗れない車と2+2によって4人乗ることができる車を比較すれば、前述したように万が一の場合でも人や荷物を乗せることができる利便性があります。

ピュアスポーツカーが2シーターであることを1つのアイデンティティとしているように、2+2のりのスポーツカーもまた、4人乗れることを商品価値にしているのです。
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細