中古で買える国産スポーツカーのおすすめランキング12選【自動車目利き人が厳選】

トヨタ 86

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「車種が多すぎて、どんな基準で買ったら良いのかわからない」「見た目優先で選んでしまうと失敗しそう」「プロがおすすめする国産スポーツカーを中古で買いたい」などなど、アタマを悩ませている方々に向けて、これまで何百車種と乗ってきた自動車ジャーナリストたちが、おすすめする国産スポーツカーを厳選してお届けします。

国産スポーツカーが欲しいけど、車種選びで迷っている、まだどんな車種を買ったら良いのかわからないという方は、愛車選びの参考にしていただければと思います。

文・三好 秀昌/松田 秀士/橋本 洋平/小野 泰治

松田 秀士|まつだ ひでし

モータージャーナリスト/レーシングドライバー

INDY500やル・マン24時間など豊富な海外レース経験と、スーパーGT選手権では100戦以上出場経験者に与えられるグレーデッドドライバーとしても表彰されている。自身が提唱する「スローエイジング」により、66歳のいまも現役のプロレーサーとして活躍中。執筆は、レース経験やメカニズム知見をもとにした幅広い知識による、分かりやすい文章表現を心がけている。昨年、中高齢者のための安全運転指南書「安全運転寿命を延ばすレッスン」(小学館)を刊行。浄土真宗本願寺派 僧侶、BOSCH認定 CDRアナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー/ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

松田 秀士

三好 秀昌|みよし ひであき

自動車評論家/ラリードライバー。

日本大学芸術学部写真学科卒業後、某出版社の契約カメラマンとして活躍するかたわら、試乗記事を国内ラリーに参戦。同時に某出版社で試乗記事も執筆するようになる。
国内でラリーの魅力に目覚め、1989年から渡英。同年よりイギリス国内選手権に三菱 ギャラン VR-4を駆って参戦。1991年には、イギリス国内選手権で年間2位の成績を収め、翌年からヨーロッパラリー選手権にステップアップ。当時のライバルには、故コリン・マクレーやトミ・マキネンなどがいた。また、この時期は自身のラリー活動と並行して、WRCに参戦する三菱ラリーアート・ジャパンのチームマネージャーも務めていた。
1995年からは、スバル インプレッサにマシンをスイッチしてWRCに参戦。1995-1996年サファリラリーグループNクラス優勝(※1995年はケニア国内選手権)を遂げ、スバルのサファリラリークラス7連覇に貢献した。
1999年のWRCサファリ参戦後、しばらく活動を休止していたが、2003年に全日本ラリー選手権2輪駆動部門に前年にデビューしたフェアレディZ(Z33)でエントリー。ターマックステージ中心の活動だったが、S30時代を彷彿とさせるカラーリングでも注目を集めた。
2007年になるとアフリカ大陸で開催されるFIAアフリカ選手権に、三菱 ランサーエボリューションで参戦。。翌2008年には、年間チャンピオンを獲得している。
などなど、華々しい経歴を持つ自動車評論家。豊富な経験による的確なドライビングと分析で、数々の自動車媒体に寄稿するかたわら、雪上ドライビングのインストラクターなども務めている。

三好 秀昌

橋本 洋平|はしもと ようへい

学生時代や自動車雑誌編者時代から数々のレースに参戦。2003年にフリーランスとなり、業界トップクラスの速さを持つモータージャーナリストとして活躍。
2013年より86/BRZレースにも参戦、2019年はクラブマンシリーズEXPERTでチャンピオンを獲得。AJAJ会員、日本カーオブザイヤー選考委員

橋本 洋平

小野 泰治|おの たいじ

長野県(の中ほど)在住の自動車ライター。自動車専門誌の編集者を経て、2010年よりフリーランスに転身。多くの自動車媒体で執筆中。クルマと二次元ワールドをこよなく愛する社会的分類上の“キモオタ”ながら、本人にその自覚はない模様。現在の愛車はポンコツドイツ車だが、基本的には雑食性のクルマ好き。

小野 泰治
Chapter
【目利き人】松田 秀士氏が選ぶ!国産スポーツカーのおすすめトップ3
直6を積んだFRスポーツが復活。トヨタ スープラ RZ
新しいスポーツカーのカタチ。ホンダ NSX
誰でも、どこでも速い!真のスーパーカー。日産 GT-R
【目利き人】三好 秀昌氏が選ぶ!国産スポーツカーのおすすめトップ3
いつまでも色褪せないスパルタンなモデル。トヨタ カローラ レビン/スプリンター トレノ(TE27)
最近、人気再燃中!?スバル アルシーオーネSVX
クルマの対話を楽しめる国産スーパーカー。ホンダ NSX-R
【目利き人】橋本 洋平氏が選ぶ!国産スポーツカーのおすすめトップ3
トヨタ 86&スバル BRZ
マツダ ロードスター
ホンダ S660
【目利き人】小野 泰治氏が選ぶ!国産スポーツカーのおすすめトップ3
“おたのしみ”は、むしろこれから?|初代 トヨタ86&スバルBRZ
古典的ラグジュアリークーペの「ラストワン」|レクサス RC
クーペの皮を被ったスーパースポーツ日本代表|日産 GT-R

【目利き人】松田 秀士氏が選ぶ!国産スポーツカーのおすすめトップ3

直6を積んだFRスポーツが復活。トヨタ スープラ RZ

現行モデルとなる5代目がデビューしたのは2019年。先代(4代目)の生産終了が2002年なので、じつに17年ぶりの復活ということになります。

ただし現行スープラは、トヨタオリジナルのクルマではありません。BMW社との共同開発によって生まれたモデルなのです。このため製造もオーストリア。BMW Z4の姉妹車ということになります。

ラグジュアリーなオープンモデルのZ4に対し、スープラはルーフを持つ走りを重要視した純スポーツモデルで、歴代スープラの伝統ともいえる直列6気筒エンジン、そしてFRという駆動型式も受け継がれています。

エンジンは、BMW製の3.0L直列6気筒ターボに、2.0Lの直列4気筒ターボのSZもラインアップされます。

ホイールベースとトレッドの比率を1.6以下にすることが、スポーティなハンドリングに寄与することからスープラではその比率を1.55とし、アジリティのあるハンドリングを実現しています。

筆者は愛知県にあるトヨタの下山テストコースでスープラ RZを走らせたのですが、とにかくステアリングを切り込めばどこまでも良く曲がり込む印象でした。

エンジンとプラットフォームはZ4と共通ですが、開発はそれぞれ別々に行っていること、またオープンとクローズドという異なるボディ形態であることから、BMWとはひと味違ったクルマに仕上がっています。

新しいスポーツカーのカタチ。ホンダ NSX

NSXは、ホンダによる本格派ミッドシップスポーツカーです。

初代はバブル末期の1990年にデビュー。アイルトン・セナが開発テストに参加するなど、注目を集めました。

エンジンは、高級セダンのレジェンドに使用されていた3.0L V6エンジンをチューンして、FFと同じように横置きでミド(車体中央)に搭載されていました。当時のフェラーリよりも高性能を目指したのです。

その2代目となる現行モデルは、2016年に発売されました。エンジンは同じくV6ですが3.5Lのツインターボ。これを初代の横置きから縦置きに変更しています。

そのスペックは、最高出力373kW(507ps)/6,500-7,500rpm、最大トルク550Nm/2,000-6,000rpmというもの。

それにハイブリッドシステムが導入され、エンジンとともにリヤを駆動する1つと、さらにフロント左右に1つずつ、合計3つのモーターが装備されます。モータ出力はフロントが27kW(37ps)/73Nm×2基。リヤが35kW(48ps)/148Nmです。

フロントの左右のモーターは、コーナリング中にはコーナー外前輪を内輪よりおおきく駆動してトルクベクタリングによる高いコーナリング速度を実現。

またコーナリング中は内輪側モーターに回生(発電)をさせてよりコーナリングを補助し、回生した電力で外輪を駆動するというスーパースポーツでありながらも環境にも配慮したモデルとなっています。

神戸の六甲山で行われた試乗会ではじめて触れたNSXは、あまりステアリングを切り込まなくても面白いようにコーナリングし、とてもピュアで楽しめるハンドリングでした。

ハイブリッドなので、市街地ではエンジンが掛からずモーターだけで走行するシーンも多く、またサスペンションのコンフォートモードは、この手のスポーツカーとしてはとても乗り心地が良いのです。このモデルは北米で生産されています。

誰でも、どこでも速い!真のスーパーカー。日産 GT-R

GT-R(R35)のデビューは、2007年。それ以前に販売されたスカイラインGT-R(R32~R34)とは、設計を含めてまったくの別モデルです。

プラットフォームは、日産の他のどの車種とも供用しない専用設計。そのコンセプトは「誰でも、どこでも、いつでも運転できるスーパーカー」で、運転しやすくどのような気象、路面条件でも安定した走行が楽しめるとしています。

エンジンはFR車と同じようにフロントに縦置きで、通常エンジンのすぐ後ろに繋がるトランスミッションは分離され、後輪のアクスル(駆動軸)上にマウントするトランスアクスル型式をとっています。

エンジン出力軸とトランスミッションはプロペラシャフトで繋がり、単体なので低くマウントすることが可能となり、後輪により荷重を掛けることができます。つまり後輪のトラクションレベルが上がり安定性は増します。

エンジンスペックは、発売当初は最高出力353kW(480ps)/6,400rpm、最大トルク588Nm/3,200-5,200rpmでしたが、毎年年次改良を重ね、現在では419kW(570ps)/6,800rpm、637Nm/3,300-5,800rpmまで高められました。

ドイツからベルギーにかけての試乗会ではアウトバーン速度無制限区域(ドイツ)で、日本のJARI高速周回路でそれぞれ300km/hオーバーを体験しましたが、非常に安定して走行できることを確認しました。

デビュー当初から同じプラットフォームを踏襲。14年経っても超一線級のスーパースポーツであることは、まさに技術力の証ですね。

【目利き人】三好 秀昌氏が選ぶ!国産スポーツカーのおすすめトップ3

いつまでも色褪せないスパルタンなモデル。トヨタ カローラ レビン/スプリンター トレノ(TE27)

ここ最近のスポーツカーは電子制御でコントロールされていて、誰でも安全に速く走れるのが特徴です。ただあまりにもがっちり固められていて、ドライバーがクルマをコントロールするという意味では、やや窮屈な感も否めません。

そんななかでエポックメイキングだったクルマが。1972年に登場したトヨタ カローラ レビン/スプリンター トレノです。

TE27という型式番号のほうが、クルマ好きにはピンとくる通称「ニーナナ」は、もともと1.2L直列4気筒エンジンが搭載されていたボディに、ソレックスキャブ2基をセットした1.6L DOHC直列4気筒エンジンを‘ぶち込み‘、太いタイヤがはけるようオーバーフェンダーまで装着したスパルタンなモデルでした。

1.6Lエンジンの最高出力115ps/6,400rpm、最大トルク14.5kgm/5,200rpmは、いま見ればたいしたものではありませんが、フロントにストラット、リアにリアリーフリジッドという組み合わせのサスペンション形式では、フロントヘビーなボディとパワーを受け止めるにはあまりにもプアで、まともに曲がる操縦性ではありませんでした。

だから、当時TE27で速く走れたドライバーは、クルマを無理やり曲げるためにドリフト走行を多用していたのです。

そんなジャジャ馬なTE27ですが、ソレックスキャブの吸気音を含め、独特の雰囲気がある素晴らしいクルマです。

最近、人気再燃中!?スバル アルシーオーネSVX

2台目はスバルのスペシャリティカーとして、1991年に発売されたアルシーオーネSVXです。いまでもたまに街で見かけると、ジウジアーロデザインの流麗なフォルムに見とれてしまいます。

内容もスペシャルで、フロントに3.3Lの水平対向6気筒エンジンに、リヤ寄り駆動(フロント35:リヤ65)のトルク配分と4WS(4輪操舵)を組み合わせた電子制御4WDを装備

室内の装備も豪華で、当時としてはヘビー級(約1.6t)のボディでしたが、サーキット走行では4WDなのにリヤタイヤをスライドさせながら気持ちよく走れたのには驚きました。

このクルマが悲運だったのは、登場がバブル景気がはじけたころだったことです。

また乗った人が少なかったために、このクルマの良さが世のなかに伝わらなかったということもあります。当時のスバルの販売力が、非常に弱かったというのも一因でしょう。

近年は、ジウジアーロによるデザインや大排気量の水平対向6気筒エンジンなどが再評価され、軽くレストアして乗る人が増えています。

クルマの対話を楽しめる国産スーパーカー。ホンダ NSX-R

最後は、ホンダ NSX-Rです。これは日本が誇る、真のスーパーカーの1台です。

その凄さは外からは見えない部分に隠されています。もちろん目に見える部分でも、オールアルミニウムのモノコックボディ、素晴らしいエキゾーストノートを奏でるスペシャルなエンジン、スパルタンなバケットシートなどなどありますが、このクルマの真骨頂は操縦性にあります。

ミドシップレイアウトのクルマの操縦性は、シャープでシビアなコントロールが必要と言われています。

この高価なNSX-Rで、テールスライドなんてしようと思う人はそうそういないでしょう。ここからは私がミニサーキットで経験した、驚くべきドリフトコントロールのしやすさについて解説します。

NSX-Rは全開走行からブレーキング、荷重が前にあるときに少しステアリングを切り込むとリヤタイヤがスライドし始めます。

普通のミッドシップカーでは、ここからのカウンターステアもアクセリングもものすごく繊細なものが必要です。雑に扱えば、簡単にスピンします。ところがNSX-Rは、その状態からアクセルを全開にできるのです。

アクセルを踏み込むと、リヤタイヤにズンッと荷重が移動し、スライドするよりも、トラクションでどんどん前に進んでいくのです。アクセルを踏むことにより逆にスピンしない操縦性なのです。

そのときのフィーリングは、まさに「クルマと対話」する、です。開発した人々は称賛に値します。

コツさえつかめば、たぶん誰でもこの感触は体感できます。そこに踏み込むのは大変ですが、驚くような奥深さを秘めているのがNSX-Rというクルマなのです。

【目利き人】橋本 洋平氏が選ぶ!国産スポーツカーのおすすめトップ3

トヨタ 86&スバル BRZ

新型の登場で話題沸騰中の86&BRZは、基本的には旧型をベースに磨き込まれたことで、さらに魅力的なスポーツカーへと生まれ変わりました。エンジンは2Lから2.4Lへ。ボディはインナーフレーム構造とすることで、飛躍的にボディ剛性をアップしたことなどがトピックスとして挙げられます。

しかし、裏を返せばそれ以外の基本的な構造については旧型と同様の部分が多く存在しています。もちろん、新型で投入されたパーツは、旧型であったウイークポイントを消し、ブラッシュアップされたものばかり。旧型は新型に性能面で遠く及ばないということは明らかでしょう。

しかし、だからといって旧型の魅力が無くなってしまったわけじゃありません。むしろ、新型が登場したことで、チューニングの幅が広がってくるであろうことは容易に想像がつきます。いわゆる新型車両のパーツを流用するチューニングがこれから流行る可能性があると思えるのです。

例えば旧型はMTの耐久性が懸念されていましたが、それならばシンクロを改めるなどした新型のMTに載せ換えてリフレッシュ&チューニングするということも可能になってくるということ。これまでにはない世界が見えてくると言う意味でも、旧型は魅力的に見えてこないでしょうか?

さらに、新型が登場したことで中古車価格もこなれてくることは容易に想像がつきます。いま最初期型の2012年モデルの通称A型は、MTモデルで10万キロ以下、そして修復歴ナシという条件でも100万円を切るものが登場しています。

これから新型への代替えユーザーも多く出てくるでしょうから、価格が下がってくることも考えられるため、リーズナブルにFRスポーツカーの世界を楽しむにはもってこいではないでしょうか?

旧型はA型からH型まで進化する過程で、部品の小変更を繰り返していますから、それらを追うように部品交換するのも面白いでしょう。リフレッシュを行いながらメーカーが行ったチューニングを味わい、愛車を成長させて行く……そんな遊び方ができるという点を見ても、いま最もアツイ中古スポーツカーは86&BRZだと思えるのです。

社外のチューニングパーツに関しても、他の車種とは段違いと思える充実ぶり。ターボもスーパーチャージャー排気量アップだって可能です。さらにはレース、ドリフト、ラリーといったあらゆる競技で活躍していただけに、シャシー周りのアイテムも豊富に存在します。

FRテイストを存分に味わいつつドライビングを学ぶことができ、さらにクルマイジリも楽しめてしまう。こんなスポーツカーがリーズナブルに味わえるようになったのだから、オススメしないわけにはいきませんよね。

マツダ ロードスター

86&BRZと甲乙つけがたい存在がロードスターです。オープン2シーターということで、あらゆる方々にオススメとは言い難い成り立ちではありますが、4人乗りを諦めることさえできれば、それ以外の使い勝手はなかなか。トランクもそれなりに荷物が積めるので、旅行へ行くのだって躊躇するようなことにはならないでしょう。

魅力はなんといっても軽量であること。最軽量モデルは1トンを切るほどですから、86&BRZよりも200kg以上軽いです。おかげで走りは軽快で爽快! 手の内に収めやすく、マツダが言う通りに人馬一体感はかなり色濃く反映されています。

1.5Lエンジンは非力ではありますが、使い切る愉しみというか、回し切る愉しみが程よいスピードで味わえてしまうところがマル。速さはないけれど、クルマのすべてを使って走っている感覚が味わえるところがロードスターの良さだと思います。

それでも物足りない方々には、2Lモデルもラインアップしているところが抜かりナシ。ルーフは幌ではなく電動となるRF(リトラクタブル・ファストバック)となり、重量が重くなってしまいますが、力強く速さを手にしたことは間違いありません。

当初はあまり高回転が回らないエンジンでしたが、マイナーチェンジを受けて1.5Lモデルと同様の7500rpmまで回せるようになったこともあり、2Lモデルのネガは消えつつあります。軽くなくても良いかなという方であれば、RFを選択するのもアリではないでしょうか。

現在の中古車市場では86&BRZに比べるとやや割高という状況。しかし、走りの良さだけでなく、オープンを味わえると言うオマケもありますので、そこを差し引けば納得できるかもしれません。夏場はしんどいですが、秋になれば紅葉狩りをしながらワインディングを走るのは最高。

冬になればヒーターを付けておけば露天風呂につかっているような感覚でドライブすることも可能です。まだオープンカーを所有したことがない方々には、ぜひその世界を味わって欲しい。とても貴重な世界観がそこに広がっていると思います。

ホンダ S660

来年で生産終了されるというアナウンスがあってからというもの、中古車価格が跳ね上がりつつあるS660。以前は100万円台前半のものも存在していた時期があったが、いまでは最低ラインで150万円からという状況であり、購入するハードルが上がってしまいました。しかし、このクルマの魅力は相変わらずです。

コンパクトであり維持費も安い軽自動車でありながら、ミドシップレイアウトを達成。かつて同様のレイアウトでビートというクルマも存在しましたが、その時とは全く違うスポーツ性を手にしているところがS660の魅力だと考えます。

ターボを装着して力強く、速さを手にしたこと。そして6MTを搭載したこともトピックのひとつ。短いストロークで小気味よくシフト可能なそれは、走る愉しみを存分に味わうことが出来るアイテムとなっています。

走れば軽量でありながら高剛性を達成したボディと、引き締められた足回り、そしてハイグリップラジアルタイヤを装着することで、コーナーリングスピードはかなり速いことが特徴的。

クラス上のクルマでもコーナーなら負けることがないでしょう。ミドシップらしい運動性能の高さがありつつ、難しさがなく仕上げられたところはかなりフレンドリー。けれども、その実力を本当に味わうのであれば、サーキットに連れ出す必要があるほどの次元の高さだと思います。

その走りがある一方で、ロードスターと同様にオープンエアが愉しめるところもこのクルマの魅力のひとつ。

ルーフトップの幌は、完全に取り外した後に折り畳み、フロントのボンネットの中に収納するのがやや面倒ですが、それを解き放ってリアのガラスも電動で開けてしまえば、フルオープンカーほどの開放感ではありませんが、適度な風を感じることができるでしょう。

その状態にすると実質トランク無しという状況になり、収納は壊滅的ではありますが、今ではルーフ後端にバックを搭載できるオプションなども存在。アフター品でもキャリアをエンジンフードの上に取り付けるキットなども販売されているため、工夫次第では積載性を確保することだって可能です。

小さいからこその良さがある一方で、それ故に使い勝手では我慢が強いられるところもあるのが実情ですが、そこを乗り越えればこれほど面白い軽自動車は存在しません。消滅するとなり価格が高騰するのも仕方がないかな、と思える一台です。

【目利き人】小野 泰治氏が選ぶ!国産スポーツカーのおすすめトップ3

“おたのしみ”は、むしろこれから?|初代 トヨタ86&スバルBRZ

86、BRZともに新車はすでに第二世代がデビュー済みですが、ここで採り上げるのはエンジンが2リッターとなる初代の方。水平対向の自然吸気エンジン+FR駆動、という段階ですでに独自性は十二分ですが、初代で魅力的なのは幅広いユーザー層とカスタマイズに代表される“拡張性”の高さが見込めることです。

モデルライフが長めなこともあって、ユーズドモデルは絶対的なタマ数に加え価格面での選択肢も豊富。また、モータースポーツのベース車にもなっていることからハード面はもちろん、オプティカル面でのカスタマイズ手段にも事欠きません。

それだけに高年式なユーズドを「素」のまま愉しんでもよし、手頃な価格となる初期モデルをベースに好みの1台を仕上げてもよしという状況になっています。

その走りについては、すでに多方面で紹介済みなので繰り返しませんが、いまやFFしか知らないクルマ好きも存在する状況にあってFRらしさをアピールする資質は十分すぎるほど。

積極的に回す歓びが見出せるエンジンのパフォーマンスも過不足がなく(硬派には物足りないかもしれませんが)、ハイパワーなスポーツモデルにありがちな“乗せられている”感覚がない点も魅力のひとつと言えるでしょう。

2016年に実施されたマイナーチェンジ以前に86についてはハンドリングに演出過剰な部分があり、個人的にはドライビングゲームのような印象を抱いた記憶がありますが、そのアップデート後は持ち前の素性の良さを実感できるようになっています。

そもそもの話、最終型はともかく初期モデルに関しては多かれ少なかれ“車齢”を感じさせる点があって当然ですから、気に入らないところはカスタマイズしてしまえばいいだけのこと。

見方によっては、クーペ云々よりコツコツと好みの1台を仕上げていける環境こそが86とBRZにおける醍醐味と言えるかもしれません。もはや分類としては「先代」ですが、両者の初代における「おたのしみ」はむしろこれからなのです。

古典的ラグジュアリークーペの「ラストワン」|レクサス RC

ミドル級以上のラグジュアリークーペ市場は、いまやメルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ勢が掌握。そんな中、孤軍奮闘しているのが日本のレクサスで、ミドル級にはRC、その上のアッパーラグジュアリー級にはLCが用意されています。

後者については、その大胆な姿カタチから紛れもない“指名買い”銘柄となるので、ここでは比較的身近な存在といえるRCをオススメのレクサス製クーペとして採り上げましょう。

その外観は、古典的2ドアクーペの流儀を踏襲したシルエットとなる一方、ディテールは近年のレクサス・デザインらしくなかなかに個性的。ライバルとなるメルセデスのEないしはCクラス・クーペ、BMW4シリーズ・クーペ、アウディA5クーペあたりと比較しても存在感では決して負けていません。

スタイリングの好みは人それぞれとはいえ、とりあえず市場の定番となるドイツ勢に対するオルタナティブ資質は十二分と言える出来栄えです。そして何より、RCにはそれらのライバルにはもはや存在しない仕様が用意されることも積極的に選ぶべき理由として挙げられるでしょう。

その仕様とは、自然吸気のマルチシリンダーエンジン搭載車。標準的なRCでは3.5リッターのV6が、スポーツ性を重視した高性能版のRC Fには5リッターのV8エンジンが採用され、もはや古典的とも言えるスポーティなエンジンの息吹が愉しめるのです。

前述のドイツ勢が番外編となるメルセデスAMGやBMW M、アウディRSまで含めも軒並みターボ化されていることを思えば、RCがいまの時代においていかに貴重な存在であるかがご理解頂けるはずです。

もちろん単純な速さや経済性など、合理性の面から自然吸気エンジンを選ぶべき理由などありません。ですが電動化が待ったなしの状況にある現在のクルマ界を思えば、RCの自然吸気エンジン搭載車は、まさに今のうちの乗っておくべきクーペと言うことができるのです。

クーペの皮を被ったスーパースポーツ日本代表|日産 GT-R

ルーツとなる「スカイラインGT-R」にならって2ドアのクーペボディ形態を採用するGT-Rですが、中身は紛れもない本格派のスーパースポーツ。

外観も本来ならスタイリッシュな風情が強調されるべきクーペの流儀とは一線を画する“異形”ぶりで(海外では日本生まれにちなんで「ゴジラ」の異名も与えられているとか)、その意味で個性的な選択肢のひとつであることは間違いありません。

とはいえ、このクルマの真骨頂が見ためではなくハードウェアにあることに異論を差し挟む人はいないでしょう。

市販車のデビューが2007年末と、そのモデルライフは世界的に見てももはや長寿な部類。当初のライバルとされたポルシェ911が現在までに997型→991型→992型と2回も代替わりしていることを思うと、中にはスポーツモデルとしての衰えを心配する人がいるかもしれません。

しかし、絶対的なパフォーマンスは常に一線級が維持されてきました。熟練の職人が組み上げる3.8リッターのV6ツインターボエンジンは、初期の480㎰から現在は600㎰にまでアウトプットが向上。

トランスアクスルレイアウトで搭載される6速DCTミッション、フロントがダブルウイッシュボーン、リアはマルチリンクとなる足回り、さらには基本骨格に至るまでが年を追うごとにアップデートされ、単なる速さだけでなくプレミアムなスポーツカー資質をも獲得。

初期のモデルは、特に一般の路上だと荒々しい一面を垣間見せましたが現在ではGTカーとしても通用する質感を兼ね備えています。

とはいえ、このクルマの真価を実感する場面はクルージング時や日常域でないことは言わずもがな。特に積極的に操った際の路面に張り付くようなトラクション性能はGT-R独自のもので、走りのキャラクターという点でもエッジの立った出来栄えと言えます。

間もなく登場する2022年モデルがラスト、とも言われるGT-Rですからクルマ好きなら一度はその独自の世界を堪能しておいて損はないはずです。
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