メルセデス・ベンツの歴代 (初代から現行4代目) Aクラスを解説!

メルセデス・ベンツ Aクラス A200d 宮越孝政

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現行Aクラスでで4代目を数えるメルセデス・ベンツ Aクラスは、FFコンパクト向けのプラットフォームで第2世代の「MFA2(Modular Front-drive Architecture 2)」と呼ばれるアーキテクチャを使い仕立てられたコンパクトハッチ(セダンも用意する)となっている。CクラスやSクラスなどでも使われている先進安全装備を備えることで小さくても高い安全性能と、メルセデス・ベンツで初めて対話型インフォテイメントシステムの「MBUX(Mercedes Benz User Experience)」を搭載するなど、最新技術が満載された注目モデルだ。今回は、メルセデス・ベンツ Aクラスを解説していこう。

文 ・塚田 勝弘/写真・萩原 文博

塚田 勝弘|つかだ かつひろ

自動車雑誌、モノ系雑誌の新車担当編集者を約10年務めた後に独立し、フリーランスライターとしても10年が経過。自動車雑誌、ライフスタイル雑誌、Web媒体などで新車試乗記事やカーナビ、カーエレクトロニクスなどの記事を展開している。

塚田 勝弘
Chapter
メルセデス・ベンツAクラスの歴代Aクラスを振り返る
メルセデス・ベンツ 初代Aクラス、2代目Aクラスにはサンドイッチ構造を採用した
メルセデス・ベンツ 2代目Aクラスは、ひと回り大きくなって登場
メルセデス・ベンツ 3代目Aクラス「MFA1」プラットフォームを採用した
メルセデス・ベンツ 4代目Aクラス(現行Aクラス)は、対話型インフォテイメントシステム「MBUX」やダウンサイジングエンジンを採用した意欲モデル
メルセデス・ベンツに期待される要素が詰まったAクラス

メルセデス・ベンツAクラスの歴代Aクラスを振り返る

初代Aクラスは、北欧で行われた自動車雑誌のエルクテスト(ヘラジカを避けるレーンチェンジのテスト。ムーステストとも呼ぶ)で横転事故という不名誉な結果を残してしまった。それでもメルセデス・ベンツは、その後足まわりを改良し、電子制御デバイスにより車両安定性を図るなどにより、初代Aクラスはその後ヒットモデルに成長している。

なお、このエルクテストは、初代Aクラスだけでなく世界中の自動車メーカーの開発に影響を与え、電子制御デバイスの普及にもひと役買っている。

メルセデス・ベンツ 初代Aクラス、2代目Aクラスにはサンドイッチ構造を採用した

1997年(日本は翌年)に誕生した初代Aクラスは、サンドイッチ構造と呼ばれる二重のフロア構造になっていて、さらに室内のスペースを確保すべくトール系(背高系)として、わずかに3.6mを超える全長でありながら大人4人が座れるパッケージングを実現していた。
それは、燃料電池にも対応するための構造だったが、フロアは上げ底感があり、独特な乗車姿勢でもあった。また、地上から床面までが高いことで乗降性も良好とはいえなかった。なお、2001年には、ホイールベースを延ばしたロングボディ仕様もリリースされている。

搭載されたエンジンは、1.6L、1.9L、期間限定の「A210L エボリューション」には、2.1Lユニットが搭載されていた。

メルセデス・ベンツ 2代目Aクラスは、ひと回り大きくなって登場

2代目は、2004年にフルモデルチェンジを受け、日本には翌年導入されている。全長3850mm×全幅1765×全高1595mmと、初代よりもひと回り大きくなりながらもサンドイッチ構造は踏襲していた。

乗降性、上げ底感のあるフロアによる独特な乗車姿勢など、Aクラスらしさを残しながらも、145mmも伸張されたホイールベースの恩恵により、とくにリヤシートのフットスペースが拡大し、さらにラゲッジスも387Lの荷室容量になり余裕を増している。
また、インテリアの質感向上も著しく、メルセデスを名乗るにふさわしいものになった。また、エンジンは、フロアパネルの傾斜に沿って58°前傾させて搭載され、そのフロアパネルの傾斜が独特な乗車姿勢を生み出していた。

エンジンは、1.7L、2.0Lターボで、トランスミッションは先代の5速ATからCVTに変更されている。また、サスペンションに油圧可変式ダンパーを備えた「セレクティブダンピングシステム」が採用されるなど、新設計されている。

メルセデス・ベンツ 3代目Aクラス「MFA1」プラットフォームを採用した

2012年(日本は翌年)に発売された3代目Aクラスは、サンドイッチ構造と別れを告げ、「MFA1」プラットフォームを使ったCセグメント級に上級移行している。Cセグメントハッチバックで自他共にベンチマーク(指標)と認めるフォルクスワーゲン・ゴルフに真っ向勝負をかけたことになる。

Aクラスに限らず、フォード・フォーカス、プジョー308、ルノー・メガーヌ、アルファロメオ・ジュリエッタ、トヨタ・カローラスポーツなど、同クラスのモデルはゴルフを意識せざるを得ない。唯一のFRだった当時のBMW 1シリーズが我が道を行くというライバル関係だった。
今でも十分にスポーティと表現できる先代Aクラスは、全高を160mmも下げたことでロー&ワイドなフォルムを手にしつつ、空力性能の向上(Cd値0.26)を獲得している。全長は400mm以上ストレッチされ、ホイールベースは130mmもワイドになっている。
インパネは、先に登場したBクラスと似たデザインで、一気にモダンでスポーティな雰囲気をまとっている。

一方で、荷室容量は通常時341Lと、背を大きく低くしたことで先代よりも減少している。なお、2008年登場のゴルフⅥ(日本は翌年)は、荷室容量が350Lで、当時のCセグメントハッチバックは、350L前後というモデルが主流だった。
エンジンは、7速DCTとの組み合わせになる1.6Lターボ、2.0Lターボを用意。なお、AMG仕様はコラムシフトではなく、フロアシフトになり、さらにAMGシフトスピードも搭載されている。
 
なお、日本ではアニメを駆使した「NEXT A-Class」キャンペーンを展開することで、若い層の獲得にも余念がなかった。

メルセデス・ベンツ 4代目Aクラス(現行Aクラス)は、対話型インフォテイメントシステム「MBUX」やダウンサイジングエンジンを採用した意欲モデル

写真:宮越孝政
さて、現行Aクラスは、2018年に発売された現行Aクラスは、エンジンを1.4Lにダウンサイジング。136PS/200Nmというアウトプットだが、ダウンサイジングされても高速道路、郊外路、山岳路でも動力性能に不満を抱くことはほぼなく、想像よりも軽やかかつスポーティな振る舞いを見せる。
また、冒頭で紹介したように新プラットフォームの「MFA2」を使い、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リヤをトーションビームとするのが基本的な構造だ。ただし、リヤサスペンションは、AMGモデルと4MATIC(AWD)にマルチリンクを使っている。

ゴルフⅦも上位グレードと下位グレードでリヤサスペンションの使い分けを行っているが、Cセグメントでフォード・フォーカスが仕掛けたリヤサスペンションのマルチリンク化への対応は、ゴルフ、Aクラス共に似通っているようで興味深い。なお、トーションビームとマルチリンク搭載車を乗り比べると、乗り心地や高速域でのハンドリングはさすがにマルチリンクに分がある。
A200d
さらに、現行Aクラスには、「OM654q」型の2.0L直列4気筒ディーゼルターボが設定されている。こちらは、先進的な排ガスの浄化処理システムが用意されるなど、フォルクスワーゲンのディーゼルゲートで端を発したディーゼルエンジンへの懸念払拭などが徹底して行われている。

非常にコストが掛かったディーゼルエンジンといえる。150PS/320Nmというアウトプットだが、ガソリンエンジンの「A180」系よりも「A200d」は、110kg重いこともあって劇的なほど速さ(差)を感じさせるわけではない。それでもパーシャル域からの加速、高速道路の合流時や高速巡航などで、ディーゼルエンジンのトルク感は十分に伝わってくる。
AMG A35 4MATIC Edition 1
さらに、「AMG A35 4MATIC」、「AMG A45S 4MATIC+」には、2.0Lガソリンターボエンジンを用意。前者は306PS/400Nm、後者は421PS/500Nmというハイスペックが与えられている。筆者は前者の「AMG A35 4MATIC Edition 1」に試乗する機会があったが、「A35」でも公道では十二分にホットな走りが堪能できる。

「A45S」は、街中だけでなくサーキット走行も見据える人に向く超ハイパフォーマンスモデルといえるだろう。
また、現行Aクラスの目玉である対話型インフォテイメントシステムの「MBUX」は、運転中でもナビやオーディオ、エアコンの一部操作が音声でコントロールできるため、慣れてしまえば非常に便利だ。

メルセデス・ベンツに期待される要素が詰まったAクラス

最大のライバルであるゴルフは、8世代目の導入が控えている。また、BMW1シリーズもFF化されるなど、競争の激しさは変わっていない。Aクラスの美点である高速域の操縦安定性や「MBUX」、AMGとディーゼルエンジン車を含めた多彩なバリエーションが最大の美点だろう。

レーダーとカメラを組み合わせた「インテリジェントドライブ」などの安全装備も用意されていて、メルセデスに期待される仕上がりでオーナーを迎えてくれそうだ。
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