SUV用タイヤの種類と性能を徹底解説
更新日:2024.09.12
※この記事には広告が含まれます
昨今の SUVブームによって、再び脚光が集まっている市場があります。それは、オフロードタイヤカテゴリーです。様々なSUVのニーズに合わせて開発されている専用タイヤですが、その種類と性能はどのようなものなのでしょうか。
文・山崎 友貴
文・山崎 友貴
“ゲタ山”から始まったSUVタイヤの性能
タイヤの基本的な性能とは何でしょう? 地面と接して摩擦力を生み、「進む」「曲がる」「止まる」「衝撃を吸収する」を支えているのが、タイヤの基本性能です。
一般的なタイヤは、舗装路で使うように考慮されており、そこに乾燥路でも濡れた路面でも安定した基本性能が発揮できるよう、溝の形状(トレッドパターン)やゴムの質(コンパウンド)を各社が工夫しているのです。
セダンやミニバン、ワゴンとSUVを比較した場合、想定上で異なるのは走行シーンです。多くのSUVユーザーは、使用の9割以上が舗装路と言われていますが、オフロードを走る可能性が皆無というわけではありません。
昨今では、摩擦係数の低い路面でも、コンピュータが判断してタイヤのトラクション(前に進む力)を発揮させるようにエンジンやブレーキなどを自動制御する「トラクションコントロール」という電子デバイスが、標準装備になっていることが多くなりました。
それ故に、一般的な乗用車用タイヤと変わらない舗装路用タイヤが標準装着となっていることがスタンダードです。
しかし、オフロードの路面の状況は多様なため、トラクションコントロールだけでは未だに対応できないことも多々あります。そこで考えられたのが、悪路専用のタイヤです。
自動車用タイヤの歴史は120年くらいですが、その黎明期から存在していたのは、実は「ラグタイヤ」や「ゲタ山タイヤ」と言われる最も基本的な悪路用タイヤです。当時の道路インフラは非常に状態が悪く、道はどこも未舗装。雨が降れば泥濘地となり、オフロードと変わりなかったからです。
ラグタイヤの形状は実にシンプルで、トレッド面に横方向の溝が左右交互に入っているだけ。ですが、未だにこのタイヤが愛用されていることからも分かるように、実は最強の悪路走破性を持っています。
溝によって立ったランドエリア(ゴムが接地する部分)の角が、滑りやすい砂利や泥、岩をガッチリと捉えて強力なトラクションを発揮します。
オンロードのコーナリングでは強いGがかかるために、横方向にずれないようにする「グリップ」が重要視されますが、オフロードでは前進するためのトラクションが重視されます。
泥では、ランドエリアの角が底の硬い部分を捉えて、柔らかい部分は溝が搔き出し、回転とともに後方に吐き出します。これは「排土性能」と呼ばれ、オフロードタイヤではトラクションと併せて重要なものとなります。
なぜなら、泥の中を走り続けていると泥がタイヤの溝に詰まってしまい、まるでドーナツのようになってしまいます。こうなるとトラクションを発揮することができないのです。
溝がダメならどこかでトラクションを…ということで考えられているのが、トレッド面の角の部分、いわゆる「ショルダー」です。ショルダーの角もトラクションを得るのに、有効な部位です。
ショルダーが角張っていれば、深い泥の溝の中で少しタイヤを曲げれば、その角が泥の壁面に当たってトラクションを得ることができるからです。最近のタイヤの中には、サイドウォールの模様や文字さえも、トラクションを稼ぐための一部に使っているものがあります。
最近では様々なトレッドパターンを持つ悪路用と言われるタイヤが登場していますが、そのどれもが基本的な性能はラグタイヤのそれに準じています。舗装路と悪路の性能バランスを考慮した結果、パターンデザインや形状、材質が進化し、見た目が現代風になっているのです。
一般的なタイヤは、舗装路で使うように考慮されており、そこに乾燥路でも濡れた路面でも安定した基本性能が発揮できるよう、溝の形状(トレッドパターン)やゴムの質(コンパウンド)を各社が工夫しているのです。
セダンやミニバン、ワゴンとSUVを比較した場合、想定上で異なるのは走行シーンです。多くのSUVユーザーは、使用の9割以上が舗装路と言われていますが、オフロードを走る可能性が皆無というわけではありません。
昨今では、摩擦係数の低い路面でも、コンピュータが判断してタイヤのトラクション(前に進む力)を発揮させるようにエンジンやブレーキなどを自動制御する「トラクションコントロール」という電子デバイスが、標準装備になっていることが多くなりました。
それ故に、一般的な乗用車用タイヤと変わらない舗装路用タイヤが標準装着となっていることがスタンダードです。
しかし、オフロードの路面の状況は多様なため、トラクションコントロールだけでは未だに対応できないことも多々あります。そこで考えられたのが、悪路専用のタイヤです。
自動車用タイヤの歴史は120年くらいですが、その黎明期から存在していたのは、実は「ラグタイヤ」や「ゲタ山タイヤ」と言われる最も基本的な悪路用タイヤです。当時の道路インフラは非常に状態が悪く、道はどこも未舗装。雨が降れば泥濘地となり、オフロードと変わりなかったからです。
ラグタイヤの形状は実にシンプルで、トレッド面に横方向の溝が左右交互に入っているだけ。ですが、未だにこのタイヤが愛用されていることからも分かるように、実は最強の悪路走破性を持っています。
溝によって立ったランドエリア(ゴムが接地する部分)の角が、滑りやすい砂利や泥、岩をガッチリと捉えて強力なトラクションを発揮します。
オンロードのコーナリングでは強いGがかかるために、横方向にずれないようにする「グリップ」が重要視されますが、オフロードでは前進するためのトラクションが重視されます。
泥では、ランドエリアの角が底の硬い部分を捉えて、柔らかい部分は溝が搔き出し、回転とともに後方に吐き出します。これは「排土性能」と呼ばれ、オフロードタイヤではトラクションと併せて重要なものとなります。
なぜなら、泥の中を走り続けていると泥がタイヤの溝に詰まってしまい、まるでドーナツのようになってしまいます。こうなるとトラクションを発揮することができないのです。
溝がダメならどこかでトラクションを…ということで考えられているのが、トレッド面の角の部分、いわゆる「ショルダー」です。ショルダーの角もトラクションを得るのに、有効な部位です。
ショルダーが角張っていれば、深い泥の溝の中で少しタイヤを曲げれば、その角が泥の壁面に当たってトラクションを得ることができるからです。最近のタイヤの中には、サイドウォールの模様や文字さえも、トラクションを稼ぐための一部に使っているものがあります。
最近では様々なトレッドパターンを持つ悪路用と言われるタイヤが登場していますが、そのどれもが基本的な性能はラグタイヤのそれに準じています。舗装路と悪路の性能バランスを考慮した結果、パターンデザインや形状、材質が進化し、見た目が現代風になっているのです。
車と共に多様化するオフロードタイヤ
前項で紹介したラグタイヤは、未だに自衛隊車両や工事用車両で使われています。しかし、四輪駆動車は高速化されてSUVとなり、SUVでもオンロード志向、オフロード志向のモデルが分かれています。
ユーザーも多様化し、オフロードタイヤは単純なパターンだけで済ませることができなくなっていきます。
その結果、80年代から登場し始めたのが、A/T(オールテレーン)とM/T(マッドテレーン)です。さらに90年代以降にはH/T(ハイウェイテレーン)という新種も加わりました。各種の指向性を簡単に説明すると、下記のように並べることができます。
ユーザーも多様化し、オフロードタイヤは単純なパターンだけで済ませることができなくなっていきます。
その結果、80年代から登場し始めたのが、A/T(オールテレーン)とM/T(マッドテレーン)です。さらに90年代以降にはH/T(ハイウェイテレーン)という新種も加わりました。各種の指向性を簡単に説明すると、下記のように並べることができます。
←舗装路向き 未舗装路向き→
H/T A/T M/T
H/T A/T M/T
ご覧の通り、どちらの性能もバランスよく備えているのが、A/Tタイヤです。舗装路で必要なグリップや排水性能を確保しつつ、前述のような悪路に必要な性能も持っています。またスノータイヤとしても使うことができます。
万能性を持ったタイヤですが、裏を返せば、どの性能も平均的ということになります。もし「未舗装路は走らない!舗装路での快適性と安全性が欲しい」ということあれば、迷わずH/Tタイヤを選びましょう。
H/Tタイヤは昨今の高速化しているSUVの走行性能を考えたタイヤであり、スピードレンジが高めに設定されています。ワインディングロードのコーナーも安心して走れます。乗り心地や静粛性という点でもA/Tタイヤよりもラグジュアリーです。
その対極にあるのが、M/Tタイヤです。M/Tタイヤはまず、激しいオフロード走行にも耐えられるように、ゴムが厚く頑丈にできています。特にサイドウォールは岩などにぶつかっても簡単に切れないように、ガードが付いているモデルもあります。
またホイールとの接合部であるリムも、すぐにホイールから外れたり、空気が漏れないように厚めに作られています。これは未舗装路を走る時に、トラクションを少しでも高めるために空気圧を落として走る場合があるからです。
トレッド面も溝が深く広く掘られており、トレッドのゴムも硬めです。そのため、舗装路を走ると乗り心地が硬く、深い溝からロードノイズと呼ばれる耳障りな音が出ることがあります。舗装路でのグリップの限界も、H/Tに比べると低めです。
また重量が重くなるため、オンロードでサスペンションの動きが悪くなるというデメリットもあります。しかし最近では、設計時のコンピュータ解析やゴム配合の技術が進み、乗り心地やロードノイズ、グリップという性能がどんどん向上しています。
30年前は日常では辛くて仕方がなかったM/Tタイヤですが、現在のものはそこまで我慢を強いられることはありません。ただし、限界性能はH/TやA/Tよりも低いのので、十分に留意して運転する方が無難です。
M/Tタイヤは昨今、SUVのドレスアップ目的で装着する人が増えており、今後はもっと身近なものになっていくかもしれません。ちなみにM/Tタイヤはアイスバーンには弱いのですが、新雪や深雪では安定した性能を発揮します。
自分の愛車にどのタイプを選ぶかと悩むようであれば、とりあえず標準装着と同じタイプのタイヤを選ぶのが無難です。性能のいいタイヤがアフターマーケットにはありますので、乗った時のフィーリングは必ず向上するはずです。
オフロードや雪を少しでも考慮したいという人は、A/Tタイヤを履いておけば安心でしょう。僕も愛車にはA/Tタイヤを装着していますが、舗装路、降り始めの雪道、オフロードで不足を感じたことがありません。
どの性能も平均的ですが、そこに車両の電子デバイスが加わりますので、大抵の場所は不安なく走ることができます。
万能性を持ったタイヤですが、裏を返せば、どの性能も平均的ということになります。もし「未舗装路は走らない!舗装路での快適性と安全性が欲しい」ということあれば、迷わずH/Tタイヤを選びましょう。
H/Tタイヤは昨今の高速化しているSUVの走行性能を考えたタイヤであり、スピードレンジが高めに設定されています。ワインディングロードのコーナーも安心して走れます。乗り心地や静粛性という点でもA/Tタイヤよりもラグジュアリーです。
その対極にあるのが、M/Tタイヤです。M/Tタイヤはまず、激しいオフロード走行にも耐えられるように、ゴムが厚く頑丈にできています。特にサイドウォールは岩などにぶつかっても簡単に切れないように、ガードが付いているモデルもあります。
またホイールとの接合部であるリムも、すぐにホイールから外れたり、空気が漏れないように厚めに作られています。これは未舗装路を走る時に、トラクションを少しでも高めるために空気圧を落として走る場合があるからです。
トレッド面も溝が深く広く掘られており、トレッドのゴムも硬めです。そのため、舗装路を走ると乗り心地が硬く、深い溝からロードノイズと呼ばれる耳障りな音が出ることがあります。舗装路でのグリップの限界も、H/Tに比べると低めです。
また重量が重くなるため、オンロードでサスペンションの動きが悪くなるというデメリットもあります。しかし最近では、設計時のコンピュータ解析やゴム配合の技術が進み、乗り心地やロードノイズ、グリップという性能がどんどん向上しています。
30年前は日常では辛くて仕方がなかったM/Tタイヤですが、現在のものはそこまで我慢を強いられることはありません。ただし、限界性能はH/TやA/Tよりも低いのので、十分に留意して運転する方が無難です。
M/Tタイヤは昨今、SUVのドレスアップ目的で装着する人が増えており、今後はもっと身近なものになっていくかもしれません。ちなみにM/Tタイヤはアイスバーンには弱いのですが、新雪や深雪では安定した性能を発揮します。
自分の愛車にどのタイプを選ぶかと悩むようであれば、とりあえず標準装着と同じタイプのタイヤを選ぶのが無難です。性能のいいタイヤがアフターマーケットにはありますので、乗った時のフィーリングは必ず向上するはずです。
オフロードや雪を少しでも考慮したいという人は、A/Tタイヤを履いておけば安心でしょう。僕も愛車にはA/Tタイヤを装着していますが、舗装路、降り始めの雪道、オフロードで不足を感じたことがありません。
どの性能も平均的ですが、そこに車両の電子デバイスが加わりますので、大抵の場所は不安なく走ることができます。
見た目のデザインで買うというのも、決して悪い方法ではないと思います。メーカーやモデルなど、なかなか性能差が分からない場合は、気に入ったタイヤでいいのではないでしょうか。最近のタイヤは、どのモデルも十分な日常性能を持っているからです。
ただし、モデルによる性能差やデメリットを十分に販売店で説明してもらってから購入することをオススメします。
ただし、モデルによる性能差やデメリットを十分に販売店で説明してもらってから購入することをオススメします。