クリープ現象とは?速度や原因を解説【プロが解説】

ブレーキペダル

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AT比率が97%以上ともいわれる日本の自動車社会において、駐車場などのシチュエーションにおいてはアクセルを踏まずに、ブレーキから足を離すことで速度を調整しているというドライバーが大半だろう。このアクセルを踏まなくともクルマが動いてしまうことを「クリープ現象」という。では、そのクリープ現象は、なぜ起こってしまうのだろうか。

文・山本晋也
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クリープ現象とは車が微速で動いてしまうこと
クリープ現象はトルクコンバーターの構造から起きてしまう
クリープ現象を再現する電動車両

クリープ現象とは車が微速で動いてしまうこと

オートマチックトランスミッション(AT)においてDレンジ(前進)やRレンジ(後退)に入れて、すべてのペダルから足を離すと、ごく低速で前進・後退をする。この「クリープ現象」を運転に利用するのは、いまさら指摘されることもない、当然の話となっている。

アクセルを踏まなくともブレーキペダルから足を離せば、微速で動き出す。そのまま放っておくと徐々にスピードは上がっていき、平たんな場所であれば10km/h程度の速度は十分に出せる。下り坂などでは、どんどん速度が増していくこともある。

クルマによっては後退時などに速度リミッターが入っていたりすることもあるが、とくに制御がなければクリープであっても意外にスピードは出てしまうものだ。

クリープ現象はトルクコンバーターの構造から起きてしまう

さて、アクセルを踏まなくともクルマが動くということは、エンジンとタイヤがつながりっぱなしになっているということだ。

クリープ現象のあるATはエンジン(原動機)とトランスミッション(変速機)を切断するクラッチ機構というものはない。エンジンとトランスミッションの間には「トルクコンバーター」という装置が置かれている。

トルクコンバーターは向かい合った羽根によって構成される「流体継手」と呼ばれる伝達機能と、トルク増幅効果を持っている。その構造を記すのは略すが、エンジンの回転で羽根(カップリング)を回し続けることになるので、エンジンがかかっている限り、アイドリングであっても駆動トルクはトランスミッションに伝わってしまう。

このトルクコンバーターは、クリープ現象によるマイルドな発進性やトルク増幅効果を活かした走り出しの力強さなどが評価され、ステップATやCVTと組み合わされていることが多い。

そのためAT大国といえる日本の自動車社会ではクリープ現象を利用して微速前進・後退することは標準的となっているのだ。ちなみに、トルクコンバーターの中はエンジンがかかっている限り、ATフルードが攪拌されており切断できない。

アイドリングでの攪拌による駆動力がクリープ現象を生み出している。なお、ATにはN(ニュートラル)ポジションといってエンジンがかかっていても、駆動力が伝わらないポジションがある。これはトルクコンバーター以降の変速機構においてつながりを切断するようにすることで実現しているのだ。

クリープ現象を再現する電動車両

こうしてトルクコンバーターを用いたATではクリープ現象が必ず発生してしまう。

副次的な要素だが、クリープ現象を利用してブレーキペダルの操作だけで微速での前進・後退を操るという運転スタイルが広まっていった。そのため本来であればクリープ現象が発生しないデュアルクラッチトランスミッション(DCT)や電気モーター駆動のハイブリッドカーやEVでも2ペダル車であれば、市場はクリープ現象を求めるようになっている。

そうした背景もあり、現在ではトルクコンバーターを用いていない2ペダル車であっても、多くが疑似的にクリープ現象を再現するような制御を与えられている。

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