名車スカイラインの生みの親「桜井 眞一郎」氏はどんな人物なのか!?

日産 スカイライン 初代

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1957年4月、国内トップクラスのエンジン性能と、頑丈なボディに凝った足まわりを纏った「プリンス・スカイライン」が発表されました。このクルマに大きく携わり、初代から続く長い歴史をもつスカイラインの生みの親とされる人物が「桜井眞一郎」です。今回は、戦後日本の大衆車文化の中で、スカイラインを生み出した桜井眞一郎についてご紹介していきます。

文・赤井福

赤井 福|あかい ふく

大学卒業後、金融業に従事。その後、6年間レクサスの営業マンとして自動車販売の現場に従事する。若者のクルマ離れを危惧し、ライターとしてクルマの楽しさを伝え、ネット上での情報発信を行っている。

赤井 福
Chapter
桜井眞一郎がスカイラインと出会うまで
移動手段のクルマからハイパフォーマンスへ
「人に語りかけるクルマ」とは?

桜井眞一郎がスカイラインと出会うまで

横浜国立大学を卒業後、自動車に携わる仕事をしたかった桜井は、22歳で建設会社へ就職します。そこで彼は、日本初のコンクリートミキサー車開発に携わりますが、クルマへの情熱が捨てきれず、わずか1年でプリンス自動車(現:日産自動車)へ転職しました。

極貧会社であったプリンスの中でも、既存車の改良に精を出し、その後、初代スカイラインに車両設計として携わります。2代目からは開発主管として、7代目の開発まで20年以上、スカイラインに携わり続けます。

仲間から「鬼」と呼ばれていた桜井は、部下にも厳しかったようです。一番弟子であり、後任としてスカイラインの開発責任者となった伊藤修令は、設計図面に対して「誰もが分かりやすいように、魂を入れて線を引け」と口うるさく言われたと語っています。

移動手段のクルマからハイパフォーマンスへ

1950年代後半の日本は、クルマ文化の創世記でした。国産車メーカー各社が、多くの人にクルマに乗ってもらえる社会を目指して、研究開発をしてきました。当時、国産車は輸入車と比べて、デザイン・性能のどちらをとってもアメリカ車に全く歯が立たず、安いだけが取り柄という状況でした。

その中で1957年に産声を上げたのがスカイラインです。当時は、移動の手段でしかなかったクルマを、ハイパフォーマンスモデルとして売り出すことは新しいことでした。

桜井眞一郎の「私はクルマからの情報が多く、おしゃべりなクルマが好きなんです」という素敵な言葉があります。この信念が、クルマづくりの根幹となり、日本のモータリゼーションの進化につながったのです。

「人に語りかけるクルマ」とは?

スカイラインのデザインは秀逸でした。当時のアメリカ車を思わせる流麗かつシャープなデザインで、見るものを虜にしました。スカイラインの特筆すべき部分はデザインのみにあらず、桜井氏が徹底的にこだわりをもったのが、ボディ剛性とサスペンションです。

セミモノコックの頑丈なボディに、フロントはダブルウィッシュボーンのサスペンション、リアには国産初となる「ドディオンアクスル」が採用されました。ドディオンアクスルは車軸とサスペンションが一体ではなく、独立懸架式と同じような構造となり、タイヤやボディが路面から受ける力に応じてサスペンションが独立して上下運動を起こす装置です。

しっかりと動くサスペンションと、頑丈なボディは、ドライバーに多くのインフォメーションを与えてくれます。それが、「人に語りかけるクルマ」ということを表し、現在のクルマづくりにも通じます。
桜井氏は、「市販車は乗りやすくコントロールしやすいものでなければならない」「ドライバーとクルマが対話する」といった、現代における人車一体の思想をしっかりと持っていました。初代スカイラインの中には、そんな彼のこだわりが随所に見られます。

実際に筆者は以前、カーディーラーのイベントで「トヨペットクラウン」と「スカイライン」を乗り比べる機会がありました。

クラウンはどんな動きをさせてもいい意味で普通であり、ドライバーも同乗者もクルマに乗せられているという感覚が拭えませんでしたが、スカイラインは路面の凹凸や、タイヤのグリップ、荷重変化などをしっかりとステアリングとシートに伝えてくれる、操縦が楽しいクルマだったことが今でも感覚として残っています。

現代におけるクルマづくりの基本概念を、およそ60年も前から実現させてきたスカイライン。そして、そのスカイラインの父である桜井眞一郎は、日本の自動車産業の転換点を作りました。

数値にとらわれず、自分の感覚や感性を最大に高め、「人に語りかけるクルマ」を作った桜井眞一郎氏の功績は、今後も日本の自動車産業に受け継がれていって欲しいものです。
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