NISSAN SKYLINE 60TH ANNIVERSARY ファンが支えたスカイライン

アヘッド スカイライン

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もう30年も前に他界してしまったオヤジは、スカイラインを常に乗り継ぐ人だった。僕はハコスカで産院から帰宅。その後は新型が出る度に買い替えるのが我が家の恒例行事で、一緒にディーラーに行ったのを覚えている。いったいなぜそこまでスカイラインに固執したのか?

text:橋本洋平 [aheadアーカイブス vol.176 2017年7月号]
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NISSAN SKYLINE 60TH ANNIVERSARY ファンが支えたスカイライン

NISSAN SKYLINE 60TH ANNIVERSARY ファンが支えたスカイライン

●R32カルソニックGT-R
R32型スカイラインGT-Rのレースシーンにおいて忘れてはならないのが、星野一義の存在だ。星野はR32のデビューとなる1990年のJTC開幕戦をポール・トゥ・ウィンで飾ると6戦中5勝でタイトルを獲得。1993年までの4シーズン29戦を15勝した。電子制御多板クラッチの緻密な制御によって、トルクを前後輪に最適配分する4WDがR32型の武器だった。

スカイラインが60周年を迎えたといういま、それを振り返ってみたくなった。それと同時に、時代に追われて消えて行くクルマが多い中、ここまで長きに渡って同じ車名が受け継がれたのかを考えてみたい。

事の発端はきっと1964年の第2回日本グランプリにおいて、ポルシェの前を一瞬ではあるが走ったという武勇伝。日の丸を背負って世界と戦い、負けたとはいえ善戦したというところがスカイラインファンのハートをガッチリと掴んだのだろう。後にハコスカでの49連勝などがあれば、盛り上がったことは容易に想像がつく。

いずれも僕が生まれる前の話であり、後に歴史を振り返って感じたものばかりだが、書物などを読めばついついスカイラインに心を奪われる。きっとオヤジもそんな一人だったのだろう。

僕が強烈に印象に残っているレースは富士スピードウェイで行われていたインターテックだ。当時はテレビ中継が行われており、それを見ただけの話ではあるのだが、ボルボやジャガー、そしてフォードシエラといった輸入車に対して、毎回のように苦戦するスカイラインの姿を見て、子供ながらに悔しい思いをしたことを忘れてはいない。我が家のスカイラインが世界に負けたことがとにかく許せなかった。

R32型になり、GT-Rが復活したことをきっかけに連戦街道を歩んだことは誇らしかった。実は我が家の恒例行事はオヤジがいなくなったためにR31型で途切れていたのだが、それでもスカイラインが活躍しているとなれば心が躍った。日本を背負って世界を蹴散らすその姿こそ求めていたものだったからだ。
●S54A型スカイライン
東京オリンピックを目前に控えた昭和39年5月2日。鈴鹿サーキットで開催された日本グランプリにおいて、ポルシェ904をヘアピンでかわしてトップに躍り出たのは、生沢 徹の駆るスカイラインGTだった。このスカイラインは、グロリア用の2ℓ直6を積むため、ボディを延長したS54A-1型と呼ばれるホモロゲーションモデルだった。

しかし、オヤジがスカイラインファンだった理由は決してレースの活躍があったからだけではない。直列6気筒エンジンに心惹かれていたこと、さらには新しい技術が次々に搭載されることがスカイラインの凄さだと友人に誇らしげに語っていた。

力強く、けれども滑らかに回る6気筒エンジンに、いちはやくターボを搭載。後輪操舵のハイキャスを装備。普段はFR、滑り始めたら4WDになるアテーサE-TSをFRベースに載せたことも魅力的に見えた。

たまに6連奏カセットデッキだとか、GTオートスポイラーなどという疑問符が浮かぶものもあったが、少しでも他と違うものを提供しようという姿勢がスカイラインらしさだった。

新しモノ好きを唸らせる新技術を毎回提供する姿勢、そこにオヤジは惹かれたのだろう。ついつい新たな技術を試してみたいと新車購入に踏み切るのもよく理解できる。

現行スカイラインもそんな姿勢は忘れていない。ステア・バイ・ワイヤをいち早く導入。そこに新たな乗り味とこれからの世界を見据えていることを感じさせてくれる。
もしもオヤジが生きていたら、きっと手にしている1台だろう。

いまやレースの世界はスカイラインの名前を捨ててしまったGT-Rが担当している。だからレースでの活躍が市販車のスカイラインに繋がるイメージはない。

だが時代の先を見つめて最新技術を少しでも早くユーザーに提供しようという姿勢があるなら、きっとこれからもスカイラインという名前は消えることがないだろう。ただ、本音を言えばオヤジのようなファンがスカイラインの60年を支えてきたことを忘れずにいてもらいたい。

レースとの繋がりも少しは考えたほうがいい。これからも日本の誇りを守るためにも。

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text:橋本洋平/Yohei Hashimoto
自動車雑誌の編集部在籍中にヴィッツ、フォーミュラK、ロドスターパーティレースなど様々なレースを経験。独立後は、レースにも参戦する“走り系モータージャーナリスト”として活躍している。走り系のクルマはもちろん、エコカーからチューニングカー、タイヤまで執筆範囲は幅広い。「GAZOO Racing 86/BRZ Race」には、84回払いのローンで購入したトヨタ86 Racingで参戦中。


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