「キーッ」とか「キュルキュル」といったタイヤのスキール音。発生のメカニズムは?

走行 タイヤ

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サーキットを走る車からは、エキゾーストサウンドの他にも「キーッ」とか「キュルキュル」というような高い音が、あるとき聞こえてきませんか?これらは、タイヤがもつグリップ力の限界に近づいたときに発生する「スキール音」と呼ばれるものです。今回は、このスキール音の発生メカニズムについてご紹介します。

文・吉川賢一
Chapter
スキール音とはどんな音か?
スキール音の発生メカニズム
どういった条件だと鳴りやすいのか?
最近のクルマは、スキール音は出にくい?

スキール音とはどんな音か?

タイヤが発生する音は、主に以下の3つに分けられます。

・パターンノイズ…トレッドパターンの溝の中の空気が、走行中に圧縮され、解放されるときの「シャー」という騒音
・ロードノイズ…路面の凹凸によるタイヤの振動が車体に伝わり、車室内において「ゴー」「ガー」と聞こえる騒音
・スキール音…急旋回や急発進、急ブレーキ時に、タイヤから発生する「キーッ」とか「キュルキュル」といった周波数800Hz前後の騒音(タイヤが鳴くとも言います)。スキール音はグリップ力の弱いタイヤほど、発生しやすくなります。また、タイヤがグリップ限界を超えそうなタイミングのサインとなるので、サーキットだけでなく、一般道においても大切な情報となります。

スキール音の発生メカニズム

急旋回や急発進、急ブレーキ時には、タイヤのトレッド面と路面間に滑りが発生します。このとき、滑り速度に対して、トレッドエレメントと路面間の摩擦力が急激に変化し、滑りと停止を繰り返す、「スティック・スリップ」という自励振動が起こります。

このトレッドエレメントの自励振動が、空気に伝わり、「スキール音」を発生させるのです。劣化したワイパーブレードのビビリ音も、同様の現象です。

例えると、硬めの消しゴムを机に押し付けて、滑らせているときに音が鳴る状態です。その際、消しゴムはその接触面が徐々に削れていくように、実車のタイヤも徐々に削られていきます。そのため、走行後のタイヤからはゴムが溶けたような、焼けたような臭いがします。

どういった条件だと鳴りやすいのか?

「スキール音」は、路面状況やタイヤの種類、状態によって、発生しやすさが変わってきます。劣化したタイヤは、トレッド面の柔軟性が少なく、硬化しているため、グリップ力が低下して「スキール音」が発生しやすくなります。また、タイヤの溝が減っていたり、空気圧が不足している場合も、同様に発生しやすくなります。

スキール音が出やすいタイヤということは、曲がるときにコーナリングフォースが出にくい、つまり曲がりにくいタイヤということです。この状態で乗り続けると、スキール音の問題でなく、交差点で上手に曲がれない、飛び出してきたものをよけることが出来ないなど、緊急回避のハンドル操作がしにくくなります。

最悪の場合、タイヤがバーストするなど、安全上の重大な問題を引き起こす可能性があります。タイヤの空気圧や劣化具合をチェックして、調整するか、適正なタイヤに交換することが、最善の対策です。

最近のクルマは、スキール音は出にくい?

立体駐車場内の低ミュー路面では「キュッ」となることがありますが、最近のクルマは多少の急旋回や急発進、急ブレーキをしても、「スキール音」が発生しにくいです。

なぜなら、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)や、タイヤのスリップを検知して駆動力を制御するTCS(トラクションコントロール)、そして車両のスリップを感知して挙動を安定方向にするVDC(Vehicle Dynamics Control※メーカーによって呼び名が異なります)を装備しており、タイヤがグリップ限界に近づかないように、適正に車速をコントロールしているからです。


タイヤを「キーッ」とか「キュルキュル」と鳴らせながら走っているのを見ると、一見、派手な運転には見えますが、上手な運転とは、スキール音が鳴る一歩手前になる様に、車速をうまくコントロールすることです。

また、面白半分にスキール音を出すような運転をすると、騒音問題や迷惑運転になるばかりか、安全運転義務違反になりますので、注意しましょう。

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