埋もれちゃいけない名車たち VOL.4 モーターサイクル・カー”の過激さ「RADICAL SR4」

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モーターサイクルの魅力は、まずはオープンエアの心地好さと、自らの身体で大気を切り裂いていくかのようなダイナミズム。そして自分とマシンの一体感に、だからこそ味わうことのできるヒラリ感。それが全てと言うつもりは毛頭ないけれど、それらがモーターサイクルの魅力の中の最も大きな要素であることに異論を唱える人は、おそらくいないだろう。

text:嶋田智之  [aheadアーカイブス vol.120 2012年11月号]
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VOL.4 モーターサイクル・カー”の過激さ「RADICAL SR4」
RADICAL SR4

VOL.4 モーターサイクル・カー”の過激さ「RADICAL SR4」

そんなところから、軽快かつダイナミックな乗り味を持つオープンスポーツカーは、〝モーターサイクルのような〟というような表現で賞賛されることも少なくない。ところが単なるたとえではなく、本当にモーターサイクル用のエンジンとミッションを搭載したスポーツカーというのが存在するのを御存知だろうか?
 
マクラーレンでF1の設計をしていたゴードン・マレーが手掛けた、ヤマハFZR1000のエンジンとミッションを葉巻型の車体にミドシップマウントした〝ロケット〟というスポーツカーが1992年から市販されていたし、ケータハムも2000年に、ホンダのCBR1100XXブラックバード用ユニットを積んだスーパーセヴンを、少数ではあるが製造した。

日本製スーパーバイクのインライン4エンジンはシャープでハイパワーで軽量コンパクト、完成度の高いクロースレシオのシーケンシャルミッションと組み合わせられていて、大メーカー製ゆえに各部の耐久性が高いうえに万が一トラブルに見舞われても安価、生産量もそれなりにあるわけだからパーツの入手の面でも問題が少ない。

これは見事な発想の転換だと唸らされるのだけど、実はクルマのエンジン/ミッションとして使うのに、意外や適しているのである。
 
その発想をレーシングマシン造りに採り入れたのが英国のラディカル・スポーツカーズだ。ル・マン24時間レースなどを走るプロトタイプスポーツのような車体のミドにスーパーバイク用のエンジン/ミッションをマウントしたマシンを開発し、当初はワンメイクレース用として販売していたが、2003年からはそのストリート仕様を市販化。

それが〝ラディカルSR4〟である。そのまま競技にも使える完成度の高いシャシーとサスペンションにスズキ・ハヤブサの1.3リッターを組み合わせた、公道を走るレーシングカーだ。490㎏の重量に200馬力だから、パワーウエイトレシオでいうなら2.45㎏/psとフェラーリ458イタリアの2.42に迫る勢い、つまり慣れない人には衝撃的なくらい速いわけだ。
 
このマシンは日本にも数台が上陸、合法的にナンバーを所得している。今やエミッションに関するレギュレーションが変更になり、スーパーバイク用エンジンを搭載したモデルはナンバーの所得が不可能になってしまった。

公道用としてはフォード製ユニットを搭載したさらに強力なモデルが用意されるが、あの強烈なレスポンスと超高回転型フィールの楽しさは味わえない。少々寂しいな、と思う。

RADICAL SR4

1997年に設立されたラディカル・スポーツカーズ社が製作した、スーパーバイクのエンジンを搭載したミドシップのスポーツカー。当初はレースカーのみだったが、2003年からは保安部品などを備えた公道走行用のモデルの販売も開始した。

ストリート仕様もガッチリと組まれた鋼管スペースフレームや車高、減衰力、スタビなど全てが調節可能なサスペンション、FRP製のオープンコクピットボディなどはレース仕様と全く共通。まさにラディカル=過激、である。

○問い合わせ:S.T.O. http://www.sto-radical.com

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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