埋もれちゃいけない名車たち VOL.6 感銘を与えた小さなベンツ「MERCEDES-BENZ 190E」

アヘッド ベンツ

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日本に上陸して半年少々の2代目Bクラスが概ね好評で、間もなく導入となる3代目Aクラスに至っては前評判のあまりの高さにちょっとした驚きすら覚える、昨今の小さなメルセデス・ベンツ達。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.122 2013年1月号]
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VOL.6 感銘を与えた小さなベンツ「MERCEDES-BENZ 190E」

VOL.6 感銘を与えた小さなベンツ「MERCEDES-BENZ 190E」

上級のメルセデスたちとは趣の異なるそのカジュアルな雰囲気にも全く違和感がなくなって久しいし、AやBが値段相応以上の価値を提供してくれるのは確かだとも思う。が、もうちょっと昔の〝小さなメルセデス〟は、とてもそうしたレベルに収まるタマじゃなかった。

1982年に発表され、日本では1985年から販売が開始された、メルセデス・ベンツ190シリーズ。

現在ではマニアの間で〝W201〟という型式で呼ばれることが多いモデルだが、メルセデス初の普及モデルとして登場したこの190シリーズは、当時の日本がバブル景気に沸き立っていた時代だったことも大いに影響してかなりの数が輸入され、BMW3シリーズの〝六本木のカローラ〟に対する〝赤坂のサニー〟、または〝小ベンツ〟と呼ばれるほど人気を博した。

その理由は輸入開始当時の値段が535万円と、絶対的には安くないがメルセデスとしては相当にリーズナブルだったことと、5ナンバー枠にピタリと収まる車体が日本の交通事情にピタリとマッチしていたこと、何より車体が小さい以外は何ひとつ上級メルセデスと変わらない味わいを持っていたこと、などである。

スタイリングが当時の最上級だったW126型Sクラスの流れを汲んだ、クラスを超越する威風堂々とした雰囲気だったのも無視することはできないだろう。

メイングレードだった、2リッター直4SOHCの115psエンジンを積む190Eに初めて乗ったときのことは忘れられない。インテリアの見た目や触感のクオリティもさることながら、操作系の機能性も車体のシッカリ感も走らせているときの安定感や安心感も、何もかもが上級メルセデスをそのまま移行した感じ。

目をつぶって運転したらSクラスにでも乗ってるかのように錯覚するんじゃないか? とすら感じられたほど、実に高級感・高品質感のある乗り味を持っていた。

W126はもとより、このW201、そしてその3年後に登場するミディアムクラスのW124/S124辺りまでのメルセデスは、コストなんて考えてないんじゃないか? と思えるほどの凄まじくオーバークオリティなクルマ作りがなされていたことで知られている。

たとえば段差をトンと超えたときのゴムブッシュがたわむ感じにすら「高価なゴムを使ってるんだろうな…」と感銘を受けるほどに。だから今でもシッカリと手を入れてやりさえすれば、ほとんど新車に近い味わいを取り戻すことだってできる。

今やそんなクルマ作りが量産車に許されるはずもない。現代のメルセデスの小型車たちも価格分以上に充分高品質であり高性能でもある。解ってるのに、つい良き時代を振り返ってしまう自分がいる。

MERCEDES-BENZ 190E

それまで小さくても全長4,700㎜、全幅1,750㎜以上だったメルセデスのラインアップに、全長4,420㎜、全幅1,678㎜という明確にコンパクトなサイズのW201型190シリーズが加わったのは1982年のこと。

取り回しがいいボディに加え、上級モデルに劣らない質実剛健な作りと安全性能などが評価されて、世界中でヒットを収めた。また高性能モデルがツーリングカー・レースで活躍を収め、従来のメルセデスには希薄といえるスポーティなイメージを作り上げた、記念碑的存在でもある。1993年にCクラスにバトンタッチした。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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