埋もれちゃいけない名車たち VOL.8 白眉の音色「ALFA ROMEO 147」

アヘッド ALFA ROMEO 147

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クルマを走らせる楽しさ、気持ちよさを決定づける無視することのできない要素として、コクピットに流れるエンジンのサウンドがある。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.124 2013年3月号]
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VOL.8 白眉の音色「ALFA ROMEO 147」
ALFA ROMEO 147

VOL.8 白眉の音色「ALFA ROMEO 147」

時としてオペラの終曲のように高らかに響き渡って全身を痺れさせたり、あるいはヴァイオリンソロのビブラートのように柔らかく心の隅をくすぐっていくそれは、ドライバーが指揮者になってスロットルペダルやギアシフトを駆使して紡ぎ出す、アコースティック・ミュージック。

自らの手足で思いのままに描き出したその旋律は、ドライバーを本能的な歓喜の世界へとダイレクトにいざなってくれる。であるがゆえに、その音質は極めて重要だ。闇雲に静かであればいいってものでもないのである。

とはいえ〝音〟の好悪は実にパーソナルなものだから、何をもって〝いい音〟であるかを断定するのは難しい。それでも多くのクルマ好き達がほぼ間違いなく〝いい音〟認定をするブランドなりエンジンなりがあって、スーパーカー系以外のブランドでいうならば、アルファロメオはその筆頭といっていいだろう。

何せ1950〜80年代には、ファミリーサルーンどころか商用車にまで快音を唄わせるDOHCエンジンを搭載していたほどの、ちょっと特異なメーカーなのだからして。

メーカーの統合が進んだ現在となってはブランドごとの勝手気ままなエンジン開発なんて許されるはずもなく、だいぶ大人しくなってしまったが、それでも結構いい線をいってると思うし、何より今ならば、ちょうど手頃な価格帯でしびれるような素晴らしいサウンドを奏でるエンジンを積んだモデルをユーズドカーで手に入れることだってできる。


その筆頭は、このアルファ147だろう。2000年から2010年にかけて生産されていた147は、3ドアと5ドアのいわゆる2ボックスカー。そのスタイリングこそ個性的ではあるが、有り体に言えば実用車のカテゴリーに属するモデルだ。けれど、日本仕様のメインとなった、2.0ツインスパーク・エンジンが素晴らしかった。

1969㏄の直列4気筒DOHCで、1シリンダーあたり2本のプラグを持つこのエンジンは、150ps/18.4㎏mを発揮。充分な速さを味わわせてくれるが、それにも増して蠱惑的なのは室内で聴くサウンド。ちょっと上手く表現できないのだが、喩えるなら「ロロロ…」のような〝R〟系の小気味の良いビートに「フォー…」というような〝F〟系が和音のように微かに混ざり合い、気分を蕩かせる調べになってドライバーに伝わってくる。

その夢見心地ともいえる興奮を、実用的な2ボックス・ハッチの使い勝手とともに、いつだって思いのままに味わい尽くせるのだ。つまりは〝非日常〟と〝日常〟の見事なまでの両立。それはフェラーリにもランボルギーニにもできない芸当である。

このクルマほど転がしてるだけで熱い気分にさせてくれる実用ハッチは、他にはないんじゃないかと僕は思う。

ALFA ROMEO 147

アルファロメオ147は、それまでのボトムレンジだった145の後継モデルとして2000年のパリ・サロンでデビューした。FWDの2ボックス・ハッチバックという実用スモールカーの不文律を踏襲しながら、サスペンションを新設計するなどして刺激に満ちたシャープなハンドリングを実現。

アルファロメオらしいスポーツ性を持つモデルとして人気を博した。日本にもレスポンスとサウンドに優れる2.0ツインスパーク・エンジンを中心にそれなりの数が輸入され、ユーズドカー市場では価格も現実的な人気車種となっている。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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