埋もれちゃいけない名車たち VOL.7 デートカーという存在「HONDA PRELUDE」

アヘッド HONDA PRELUDE

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クルマというのは、乗り手のライフスタイルや趣味嗜好のようなものを、図らずも表現してしまうようなところのある乗り物だ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.123 2013年2月号]
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VOL.7 デートカーという存在「HONDA PRELUDE」

VOL.7 デートカーという存在「HONDA PRELUDE」

例えばハイブリッドカーを選べば〝ECOに対する意識が高く、最新技術への理解も深いヒト〟と何となくカテゴライズされるようなところもあるし、逆にこの時勢で馬鹿でかいアメ車などをわが物顔で転がしていれば〝ちょっとアウトローだけど、わりとリッチなヒト〟と思われがち、といった具合に。

今とは比較にならないほど若者達の関心がクルマに向いていた1980年代頭くらいまでは、そういう意味合いも含めて、若者の多くがスポーツモデルに乗りたがっていた。

もちろん全員がそういうわけでもなかったけれど、〝スポーティーカー〟や〝高性能車〟というのは気持ちの中で〝硬派〟というキーワードとどこか直結してるような感じがあって、それがカッコイイ、そう見られたいと感じてる男達も少なからず存在してたのだ。

2代目ホンダ・プレリュードがポロッとデビューしたのは、そんな時代。1982年の11月のことだった。2ドアのスペシャルティクーペという位置づけこそ変わらなかったが、初代と較べたら明らかにワイド&ローで、見るからに低くとられたノーズの先にリトラクタブルヘッドランプを備えたその姿カタチは、とにかくスタイリッシュ。

インテリアも含め、全く汗臭さみたいなものを感じさせない都会的で柔らかでスポーティなその雰囲気は、それまでの日本車にはちょっとない類のものだった。

車速感応型パワステで街中ではハンドルが驚くほど軽く、日本で初めて4輪ABSを備え、とイージードライブ仕様。しかも、必要充分以上にスルスル走ってはくれるけれどエンジンはパワフルとはいえず、おまけに運転席から助手席のリクライニングを調整できるフェミニストっぽい機構がついていたりもした。

硬派ぶりたい時代遅れな男達からは「軟弱な!」の声が結構あがったりもしたが、クルマはデビューと同時に快調な売れ行き。若い娘達もオトナの女達もプレリュードの助手席に乗りたがり、走り屋っぽいクルマこそカッコイイと盲信していた一部の男達は、価値観を根底から覆されてガッカリした。

「誘われるならプレリュードがいいよね」という言葉は当たり前のようにあちこちで聞こえ、スポーツカーやファミリーカー以外に、新たに〝デートカー〟というジャンルを生み出した。

ホンダはその後、'87年にフラッグシップのレジェンドにクーペをラインアップ、それがお洒落な(?)不倫を題材にしたテレビのトレンディドラマ─死語だけど─に使われたことから〝不倫カップル御用達〟と命名されたこともある。そうした恋愛のワクワク感をどこか意識させるようなクルマ造りに長けていた時代があったのである。

いい時代だった…でそれを終わらせて欲しくないと感じてるのは、僕だけじゃないだろうと思う。

HONDA PRELUDE

▶︎ホンダの小型スペシャルティクーペであったプレリュードがフルモデルシェンジを受け、2代目に進化して登場したのは1982年のこと。

最大のキモは精神的なコンセプトはそのままに、スタイリングを大胆に刷新したこと。幅広く、そして低く構えたフォルムは上品かつクリーンな印象で、その雰囲気が時代にマッチしてヒットと呼ばるほどの売れ行きを見せた。

搭載エンジンは1.8ℓのNA125psで、決して遅いクルマではなかったが、飛ばすことより隣に座る人と心地よくクルージングしたくなるような乗り味であった。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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