埋もれちゃいけない名車たち VOL.9 和み系の大衆車「RENAULT TWINGO」

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2013年の開幕戦オーストラリアGPでポールポジションを獲得したのは、3年連続チャンピオンのS・ベッテルだった。2番手にM・ウェバーがつけて、レッドブルが最前列を独占。3番手には、マクラーレンからメルセデスに移籍したL・ハミルトンがつけた。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.125 2013年4月号]
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VOL.9 和み系の大衆車「RENAULT TWINGO」
RENAULT TWINGO

VOL.9 和み系の大衆車「RENAULT TWINGO」

今年もレッドブルの年と決めつけるのは早合点で、優勝したのは7番手からスタートしたロータスのK・ライコネンだった。そのライコネンは2周目に一見強引とも思える大胆さで出遅れたハミルトンを追い抜き、4番手に浮上した。先頭を走るのは相変わらずベッテルだが、2番手、3番手はF・マッサとF・アロンソのフェラーリ勢に変わっていた。
 
ライコネンがトップに立ったのは、上位3台よりタイヤ交換のためのピットストップが1回少なかったからだ。ライコネンのロータスが「タイヤにやさしい」仕上がりなのも一理あるが、繊細なドライビングがポジションアップを助けた。

仕掛けるべきタイミングでは大胆に仕掛け、相手が見えない状況では、タイヤをいたわりながらも攻めに攻めてラップタイム短縮を図った。腕っぷしの強さだけではなく頭脳と器用さで手に入れた勝利だった。
 
開幕戦では、いや翌週に開催された第2戦マレーシアGPでも、名門マクラーレンの不調ぶりが際立った。マクラーレンのスロースターターぶりはここ数年、慣例と化している感があるが、今季は特にひどい。マシンの設計コンセプトを大胆に変更したのが最大の原因だろう。

開幕前のテストでは、「まだクルマのことが理解できていません」と、あるエンジニアが説明してくれた。昨年型よりも高性能なマシンを設計したものの、車両のキャラクターを使い手が完全に理解できていないため、実力を引き出しきれていないのが実状。

2戦が終了した時点のランキングは6位だが、例年どおり、あるグランプリから突然力をつけて上位を脅かす存在になるだろう。問題はそれがいつなのかだ。

マクラーレンに代わって存在感を見せつけているのがメルセデスだ。昨年はタイヤを傷めやすい傾向があり、予選は良くてもレースでペースが上がらない悩みを抱えていた。その悩みが新型マシンでは解消。新天地の居心地がいいのか、ハミルトンがチームを引っ張る格好で快調な滑り出しを見せている。
 
第2戦マレーシアはレッドブルがワンツーフィニッシュを達成して、早くも初戦の取りこぼしを帳消しにした。だが、ベッテルがチームの決めごとを破ってウェバーを抜いてしまい、ドライバー間に不穏な空気が漂う始末。

チームはレース後の記念撮影をキャンセルした。かつてのセナとプロストの冷えた関係を思い起こす読者もいることだろう。力と力のぶつかり合いはチーム同士だけではなく、チーム内のドライバー同士でも起こりうる。そんなF1の原点を再認識させてくれる、2013年シーズンの幕開けである。

RENAULT TWINGO

初代ルノー・トゥインゴは1992年のパリ・サロンで発表され、翌年から発売されたAセグメントの大衆車。スペース効率追求のための全く新規に設計されたプラットフォームを持つ意欲作で、広大な室内空間と多彩なシートアレンジになどによる実用性の高さが特徴。

古くから定評のある1.2リッターOHVエンジンは52psながら実用トルクはしっかりとあり、車体が860kgと軽いこともあって、実にルノーらしい懐の深いシャシーとの組み合わせで、活発な走りを提供してくれる。小型実用車として手抜かりのないモデルだったのだ。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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