F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1 Vol.35 予測不能の2013年シーズン

アヘッド vol.35 予測不能の2013年シーズン

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2013年のF1シーズンは3月17日のオーストラリアGPで幕を開ける。以前は一度開発したマシンを複数年にわたって使い続けるのが一般的だったが、それでは競争力を保てなくなり、1980年代頃からはシーズンごとに新型を設計するのが通例になっている。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.123 2013年2月号]
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Vol.35 予測不能の2013年シーズン

Vol.35 予測不能の2013年シーズン

▶︎写真は、新型車のモノコックに合わせて「シート合わせ」を行うシーン。ドライバーに着座姿勢をとらせ、硬化する液体樹脂で型どりを行う。その型を三次元スキャンしてデータ化し、シートを成形する。写真・Sauber F1 Team


市販車に例えれば毎年フルモデルチェンジするようなもので、当然、お金はかかる。それはチームとて承知だが、新規に開発しなければ差をつけられてしまうので、開発の手を緩めるわけにはいかないのだ。

という事情をルール統括側は察知し、テストに制限を設けることで少しでもコスト削減に結びつくよう配慮している。2013年シーズンの場合、開幕までに認められたテストはスペインのヘレスとバルセロナで行われる都合3回。これら3回、合計12日間の走行で初期トラブルを洗い出し、マシンの素性が狙いどおりかどうかを確認するわけだ。

だから、参戦11チームは大忙しである。1回目のテスト直前に新型マシンを完成させ、3つのテストすべてを有効に使うのが正攻法だが、異なる考え方もある。テストを休んでも、新型車の設計に時間を費やした方が得策とする考えだ。

ラップタイム向上に最も影響力のある空力性能は、時間をかけるほど良くなる性質があるため、できるだけ開発に時間を費やしたい。早く完成させて熟成に時間をかけた方がいいのか、設計に時間を費やしてポテンシャルを高めた方が得策なのか。どちらにも一長一短はあり、悩みどころなのだ。

今季の例では、ウィリアムズが1回目のテストをスキップし、2回目のテストから新型マシンを投入する決断を下した。この作戦が吉と出るか凶と出るかを観察するのも、シーズン序盤の見どころのひとつだろう。

2014年からパワーユニットのフォーマットが大幅に変わる(1.6L・V6直噴ターボ+運動&熱エネルギー回生システムを搭載)ため、2009年以降のエンジン(2.4L・V8自然吸気)&空力フォーマットで戦うのは今季が最後になる。最後にひと花咲かせようと目論むチームもあるだろうが、2013年型の開発と並行して2014年型の開発も進めなければならず、予算や人員の配分が難しい。

規則が大幅に変わった2009年にレッドブルが大きく躍進したように、2014年は中下位チームにとって飛躍の大きなチャンス。テストで他のチームの走りと対比させた結果、「見込みなし」と判断した場合、2013年の開発には力を入れず、一気に2014年の開発にシフトする可能性もある。

3年連続チャンピオンのレッドブルを筆頭に、マクラーレン、フェラーリの3強がシーズンをリードすると予測するのは簡単だが、しぶとい走りが光るライコネンが引っ張るロータスや、引退したシューマッハの代わりに加入したハミルトンを擁するメルセデスAMGの変貌ぶりにも注目。

2012年シーズン同様、予測不能なシーズンになること間違いなしである。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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