F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1 Vol.40 1.6ℓターボエンジン戦争勃発
更新日:2024.09.09
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ホンダは6月14日、前の月に行ったF1参戦記者会見を補完する目的で合同取材会を設けた。まず開発状況だが、「基本的な設計をスタートしたばかり」だと、F1参戦活動の責任者を務める新井康久 本田技術研究所 取締役専務執行役員 四輪レース担当は説明した。第1号エンジンができあがるのは秋を見込んでいるという。
text:世良耕太 photo:Renault [aheadアーカイブス vol.128 2013年7月号]
text:世良耕太 photo:Renault [aheadアーカイブス vol.128 2013年7月号]
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- Vol.40 1.6ℓターボエンジン戦争勃発
Vol.40 1.6ℓターボエンジン戦争勃発
▶︎ルノーは2014年にF1に導入する1.6ℓ・V6ターボエンジン「Energy F1」を早くも発表。すでに、ワークスパートナーのレッドブルと来季もエンジン供給を続ける契約を結んだほか、今季フェラーリエンジンを搭載しているトロ・ロッソにも新たに供給予定。一方、今季ルノーのエンジンを搭載しているウィリアムズは来季からメルセデスへの変更を発表。ロータスについてはまだ明かされていない。ルノー大使を務めるアラン・プロスト(左端)も発表会に駆けつけた。
このことから分かるのは、2015年のF1復帰が急な決断だったことである。「F1をやりたくて入ってきた社員が研究所にはたくさんいる」し、その社員は「常にF1をやりたくて仕方ない」状況であったにせよだ。
ホンダは'08年限りでF1からの撤退を発表したが、'11年の半ばにはF1のエンジン開発に携わっていた若手エンジニアを中心に「高効率レースエンジン」の検討をスタートさせている。
F1のエンジンは'14年から1.6ℓ・V6直噴ターボになるが、検討したのは1.6ℓ・直4直噴ターボで、これが後にWTCC(世界ツーリングカー選手権)用エンジンとして'12年からシビックに積まれることになる。
'11年の時点でF1復帰は考えていなかったと新井氏は断言する。だが、「今から思えば、やっておいて良かった」と付け加えた。WTCCとF1では設計コンセプトが異なるので右から左に技術を移植することはできない。だが、直噴やターボという技術に触れることができたのは、開発時間を短縮するうえで大いに役立つからだ。
それでも参戦時期は、新フォーマットに移行する'14年ではなく、'15年からとなった。「エンジン以外にいろんなことをやらなければならず、時間的に厳しい」のがその理由。
エンジン以外とは、運動エネルギー回生システムと熱エネルギー回生システムの2種類のハイブリッドシステムを指す。エンジンとこれらのハイブリッドシステムを協調させてガソリンを効率良く使うのが開発のキモだ。新井氏に言わせれば「技術のてんこ盛り」だが、それだけにやりがいを感じているようだ。
今回の合同取材会でホンダは、F1復帰にあたって交渉先に選んだのはマクラーレンだけだったことを明らかにした。「勝てる」体制であること、「長く続けられる」環境であるかどうかを判断した末の選択だったという。
'15年にエンジンを含めたパワーユニットを供給するのはマクラーレンのみ。'16年以降は、他チームから要望があった場合に検討するという日本人ドライバーの起用に関しては「マクラーレンと話し合いながら決めていく」と、本田技研工業モータースポーツ部の佐藤英夫部長は説明した。
「日本人ドライバーに乗ってほしいという希望は持っています。ただ、マクラーレンもホンダも勝つことを最大の目標にしています。そのなかで名前が挙がることを期待しています」
勝てる実力のある日本人ドライバーなら、マクラーレン・ホンダに乗るチャンスはあるということだ。
このことから分かるのは、2015年のF1復帰が急な決断だったことである。「F1をやりたくて入ってきた社員が研究所にはたくさんいる」し、その社員は「常にF1をやりたくて仕方ない」状況であったにせよだ。
ホンダは'08年限りでF1からの撤退を発表したが、'11年の半ばにはF1のエンジン開発に携わっていた若手エンジニアを中心に「高効率レースエンジン」の検討をスタートさせている。
F1のエンジンは'14年から1.6ℓ・V6直噴ターボになるが、検討したのは1.6ℓ・直4直噴ターボで、これが後にWTCC(世界ツーリングカー選手権)用エンジンとして'12年からシビックに積まれることになる。
'11年の時点でF1復帰は考えていなかったと新井氏は断言する。だが、「今から思えば、やっておいて良かった」と付け加えた。WTCCとF1では設計コンセプトが異なるので右から左に技術を移植することはできない。だが、直噴やターボという技術に触れることができたのは、開発時間を短縮するうえで大いに役立つからだ。
それでも参戦時期は、新フォーマットに移行する'14年ではなく、'15年からとなった。「エンジン以外にいろんなことをやらなければならず、時間的に厳しい」のがその理由。
エンジン以外とは、運動エネルギー回生システムと熱エネルギー回生システムの2種類のハイブリッドシステムを指す。エンジンとこれらのハイブリッドシステムを協調させてガソリンを効率良く使うのが開発のキモだ。新井氏に言わせれば「技術のてんこ盛り」だが、それだけにやりがいを感じているようだ。
今回の合同取材会でホンダは、F1復帰にあたって交渉先に選んだのはマクラーレンだけだったことを明らかにした。「勝てる」体制であること、「長く続けられる」環境であるかどうかを判断した末の選択だったという。
'15年にエンジンを含めたパワーユニットを供給するのはマクラーレンのみ。'16年以降は、他チームから要望があった場合に検討するという日本人ドライバーの起用に関しては「マクラーレンと話し合いながら決めていく」と、本田技研工業モータースポーツ部の佐藤英夫部長は説明した。
「日本人ドライバーに乗ってほしいという希望は持っています。ただ、マクラーレンもホンダも勝つことを最大の目標にしています。そのなかで名前が挙がることを期待しています」
勝てる実力のある日本人ドライバーなら、マクラーレン・ホンダに乗るチャンスはあるということだ。
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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/