ハンドルの切れ角をアップする方法は?そのメリット・デメリット

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ドリフトの大会や練習会を見に行くと、スライドと同時にカウンターステアをあてながら、ときには軽快に、ときには白煙をあげながら飛距離を伸ばしていきます。

そしてクルマの動きをよく見てみると、普通の車ではありえない角度までタイヤの向きが変わっているのに気づくはずです…。
Chapter
さまざまなモータースポーツのひとつ「ドリフト」
ドリフトは角度も大事
切れ角アップの方法は大きく分けて二つ
問題はアッカーマンアングル
単純にスピンはしにくい
結局はドリフトもトータルバランス

さまざまなモータースポーツのひとつ「ドリフト」

レースやラリー、タイムアタック(ジムカーナやダートトライアルのようなスプリント競技)、ドリフトなどは、同じクルマを使うとはいえ、それぞれ異なるジャンルのモータースポーツです。

先にゴールラインを通過することを競うのがレース(耐久レースだと周回数など、他の要素で競うこともあります)、誰よりも短いタイムを刻めば勝ちなのがタイムアタック競技で、この2つは純粋に速い者勝ちです。

タイムに、ペナルティを加算して順位を競うのが、ラリーやフィギュア(車庫入れやスムーズな定常円旋回など技術面も重要な競技)で、この2つはただ速いだけでは勝てません。

そして"技"一本槍なのがドリフト競技で、速さが関係無いわけではありませんが、基本的には侵入から立ち上がりにいたるまで、速度やタイミング、角度、飛距離、ラインといった要素が重要になります。

いわば他のスポーツでいえば、ドリフト以外がさまざまな制約もありつつ、最終的には速さを競うスピード競技なのに対し、ドリフトだけはフィギュアスケートや新体操のように、美しさを競うという違いがあるのです。

ドリフトは角度も大事

そのドリフトの勝ち負けは、審査員による採点で決まるという点も、フィギュアスケートなどと同じです。ある意味では審査員の好みによって大きく左右されます。

たとえば、"同じような侵入スピードからドリフト走行に入り、同じように立ち上げて、ギャラリーや審査員を沸かせた"という、甲乙つけがたい2台となった場合、審査員が最終的に勝敗を決めるのは、"ドリフトを始めるタイミング、飛距離、ラインなどのポイントで、減点の少ないほうが勝ちとなります。

そこで勝ち上がるドライバーは当然、より速く、より美しく、より迫力を、狙っていくわけですが、そうなると限界域でライバルを上まわることができなくては、勝つことができません。

そこでより速く、角度をつけつつもスピンなどで破綻しない走りのために、ステアリングの切れ角を増して、マシンの操縦性に自由度を持たせるわけです。

切れ角アップの方法は大きく分けて二つ

ステアリングの切れ角、つまりハンドルのロックの限界は、構造的に決められています。むやみに角度を増せばタイヤが外側のフェンダーや内側のインナーに当たり、タイヤやボディの破損につながるだけでなく、最悪の場合はタイヤロックやバーストで大事故になることも。

しかし、基本的にサスペンションなどの改造で構造的な自由度が増しているドリフト用の車両では、よりステアリングの切れ角をつける改造が可能になります。

その方法のひとつは、ステアリングラックとタイロッドの間に挟んでラックを延長する「ラックエンドアダプター」を装着すること。これにより、ステアリングラックの移動量が増えた分だけ切れ角は増します。

もうひとつが、これも切れ角の限界を決めている「ナックルの交換」です。ナックル形状やストッパーによって、それ以上切れない限界が構造的に決まっていますが、その限界値を上げた形状のナックルに交換することによって、構造的な切れ角の限界を上げるわけです。

シルビア系 キレ角アップアダプター

問題はアッカーマンアングル

しかし、この改造によってデメリットが発生します。それは、”アッカーマンアングルの変化”です。

アッカーマンアングルは、ハンドルを切った時の左右の舵角差のことですが、実はタイヤの切れ角というのは左右同一では無く、ノーマルならアウト側のタイヤの方がイン側より切れ角が少ないのが一般的です。

それによってコーナリング中の安定感や、コーナリング後にハンドルがセンターに戻ろうとする力(セルフアライニングトルク)を生み出しているのですが、切れ角向上のための改造はアッカーマンアングルの変化をもたらし、ドリフト後にハンドルを真っ直ぐにするのがひと苦労になったりします。

もちろん、車種ごとに専用設計されたパーツを使えばそうしたデメリットは最小限に抑えられますが、他車種流用ともなるとそうもいきません。そしてそれが、D1グランプリなどピラミッドの頂点に立つイベントに対し、底辺にあたる地方の小さなイベントで同じような車種が多い理由でもあります。

単純にスピンはしにくい

対するメリットとしては、やはりコントロールの自由度を確保したことにより、ドリフトの角度(アングル)がよほどついても、最終的な破綻=スピンに結びつきにくく、粘るドリフトができるようになります。

ただし、カウンター量を極限まで増やすようなドリフトというのはそれだけ抵抗が増して減速することになりますし、そうなれば飛距離(ドリフト走行を維持した距離)も短くなり、減点対象になります。

その分進入速度を上げれば、さらにスピンのリスクも上がる=カウンター量を増やして対処することになるというイタチごっこになりますし、単純にタイヤの切れ角を増せば、良いドリフトができる、勝てる、上達するというわけでもありません。

結局はドリフトもトータルバランス

最終的には、改造によって得たタイヤの切れ角増加を、いかに自分のテクニックに取り込んでいくかということになります。

そのテクニックを我が物にしたドライバーであれば、さまざまな車種で高得点を稼ぎ出すドリフトも可能になります。一方で、そのレベルに達していないドライバーは、最初からドリフト向きの車種をチョイスして基本的なテクニックを身につけるのが先決です。

その意味で重宝されるのが、バランスに優れワイドトレッドで安定感があり、NCVS(可変バルブタイミング)装着のSR20DETによるエンジンコントロールも容易なS14シルビアと、タイヤの切れ角は比較的小さいものの、マルチリンクサスペンションでフロントの高い接地感からコントローラブルな操縦性を実現しているR33などのスカイラインだったりします。

逆に素性の違いからよほど手を加えても、初心者ではどうにもドリフトしにくい車種(トヨタのアルテッツァなど)というのもありますので、単純にFRならなんでも良いわけでもありません。

実際にどんな車が多いのか、地方の小さなサーキットで開催されているローカルなドリフト会場でその差を見比べていくと、わかりやすいですよ。
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