なぜドイツ車はフロントのホイールが真っ黒に汚れやすいのか?

ガソリンスタンドの店員も嘆く汚れ方

BMW 4シリーズ グランクーペ 2016

洗車をする仕事、ガソリンスタンドやディーラー、カーショップなどの店員が一様に口にするのが「メルセデス・ベンツやBMWなどのドイツ車のホイールの汚れはなかなか落ちない」。

これは、ブレーキパッドが削れて付着した汚れ、いわゆるブレーキダストです。

国産車でもある程度は、ブレーキダストが出るので汚れないことはないのですが、ドイツの2大高級車メーカーのそれは別格で、「ホイールに刺さるので、洗って拭いたくらいでは落ちない」とまで言われています。

それだけに、その車のオーナーがマメに洗車をする人か、ズボラな人かがすぐわかってしまうバロメーターともなりえますが、どうしてこの2車が際立っているのでしょうか?

国産車より強力なブレーキ

メルセデス・ベンツ  CLA 45 Shooting Brake

大抵の車のフロントブレーキは、ブレーキローターと呼ばれる円盤をブレーキパッドで挟み込むことで制動力を発生するディスクブレーキを使っています。

ホイールの内側に見えるディスクブレーキは、効きの強さというより、その放熱性の良さを買われての採用です。

では、なぜ放熱性が必要なのか。その理由は、ブレーキトラブルのひとつであるフェード現象と、それにともなうペーパーロックを避けるためです。このトラブルは、パッドが許容温度を越えたときに発生するので、なるべく放熱性の良いブレーキのほうが安全性が高まるというわけです。

話がそれてしまいましたが、フロントホイールが汚れやすいドイツ車の多くはブレーキローターに比較的軟らかい(削れやすい)素材が使われています。つまり、パッドとローターがともに削れることで、高い制動力を発生するように設計されていたのでした。

国産車とはパッドの材質も異なる

摩擦材としてアスベストが使われなくなった現代のブレーキパッドでは、その基本的な材質としてNAO材が使われています。

NAO(NON STEEL NON ASBEST ORGANIC)材とは、グラスファイバーやアラミド、銅、セラミックを主成分としたもので、ローターへの攻撃性が少ないほか、ブレーキ鳴きも少なく低コスト、さらには快適性にも配慮された材質として、国産車に多用されています。

対して、BMWやメルセデス・ベンツが採用している純正ブレーキパッドに使われているのが、ロースチール系(メタル系)と言われる素材です。

前述のNAO材にスチール成分を10~30%配合したもので、ローターにパッドを押し付けた際に、NAO材とスチール材で異なる摩耗の仕方をするため、ローターに対して食い込むような接触面を保ち、NAO材より耐熱性が高く、踏み込んだ分だけ効きが増すようなフィーリングを持っています。

ただし、ローターへの攻撃性もパッドの消耗率も高いものの、摩擦係数は高くなっています。

効きや耐熱性というポイントでNAO材とロースチール系を比較すると、NAO材はそれほど優れているわけではありません。しかし、日本では最高速度が高速道路でも100km/h、最高速度引き上げ議論のなかでもせいぜい140km/hまでとそれほど高く無いこともあり、ダストが少なくホイールが汚れにくいNAO材が、必要十分でコストパフォーマンスに優れた素材として重宝されています。

反対にブレーキパッド、ディスクともに摩耗が早いものの、強力なブレーキ性能を優先しているのがBMWとメルセデス・ベンツの純正ブレーキの考え方になります。

必要なだけの性能を求めた結果

アウトバーン

なぜ国産車とは異なるブレーキを採用しているのか…それは、ドイツには制限速度が無制限の区間もあるアウトバーンが存在するからです。

ナチスドイツの時代に建設が始まり、有事には航空機の離発着も可能なアウトバーンは、本来、速度無制限の高速で道路です。現在では都市部近郊など、制限速度区間も増えたようですが、まだ速度無制限区間が残っており、その区間では、200km/Lオーバーで走行する車も少なくありません。

それだけの高速で走るために、高速域から確実に減速、静止させることのできるブレーキ性能は必須です。そのためブレーキに求める基準が日本と異なるのです。


サーキット走行や競技会用にブレーキチューンを行う際、オーナーはローターやパッドの消耗よりも耐熱性や制動力、さらにコントロール性を優先するので、ホイールの内側はあっという間に真っ黒になります。

それだけのブレーキを搭載している証明ではありますが、それを純正で採用するドイツの道路交通事情というのは凄まじいものだと思うとともに、「高速巡航性能に優れたドイツ車」というイメージを、改めて実感させられますね。

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