クラウン・ハリアー・カローラなど…なぜトヨタは車種別にエンブレムを変えているの?

トヨタ ハリアー 2017

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トヨタが現在のCI(コーポレートアイデンティティ)を採用したのは、1989年のこと。Tをモチーフとした3つの楕円で形成されたエンブレムを見たことのない人はいないでしょう。このように誰でも知っているCIを持ちながら、クラウン・ハリアー・カローラなどには、独自のフロントエンブレムが付いています。なぜ、トヨタが車種別にエンブレムを変えているのでしょうか?元営業マンが解説します。

文・赤井 福

赤井 福|あかい ふく

大学卒業後、金融業に従事。その後、6年間レクサスの営業マンとして自動車販売の現場に従事する。若者のクルマ離れを危惧し、ライターとしてクルマの楽しさを伝え、ネット上での情報発信を行っている。

赤井 福
Chapter
昔は車種ごとに違っていた?
トヨタのグローバリゼーションとコーポレートアイデンティティ
メーカー認知度が高いからできるトヨタの強み

昔は車種ごとに違っていた?

1950年代、日本の自動車メーカーがお手本としたのはアメリカ車でした。アメリカでは、ゼネラル・モーターズ(GM)が全盛期だった頃のことです。当時GMは、グループ内にキャデラック・シボレー・ビュイックなどのブランドを持っており、それぞれにGMではなくブランドのエンブレムが付けられていました。

一方クラウンの発表以前、トヨタにはすでにカタカナ表記の「トヨタ」エンブレムが存在していました。しかし、GMのブランド戦略を真似ようと、1955年に独自の技術で完成させたクラウンには「王冠」エンブレムが付けられ、ブランドの確立を目指します。

その後、国民車となるカローラやFFセダンとして人気を博したカムリなど、さまざまなクルマに独自のエンブレムが付けられたのは、ご存知の通りです。

トヨタのグローバリゼーションとコーポレートアイデンティティ

高度経済成長期から1990年代にかけて、自動車の輸出量はどんどんと増えていき、日本車にもグローバリゼーションの波が押し寄せます。国内だけでなく、世界戦略車の開発が必須となるなか、CIは世界に進出する企業の顔としての役目を担うようになります。

アメリカでレクサスブランドが立ち上げられた1989年、会社創立50周年を記念してトヨタのCIを現在の形に変更。世界戦略車として輸出されるクルマには、前後に新しいトヨタエンブレムが装着されました。

国内でも順調にシェアを伸ばしていったトヨタですが、日本市場においては、トヨタブランドとしての定着よりも、各々の人気車種のブランドとしての定着を選びました。

クラウンやカローラなど、トヨタの基幹車種については「あの車はトヨタだよね」と言われるよりも「あれはクラウンだね」と言われるほうが良いと考えたのです。特別感・個別感を感じられる車種別エンブレムは、”オーナーのクルマを所有する喜び”を大きく駆り立てることになりました。

メーカー認知度が高いからできるトヨタの強み

トヨタ以外の国産メーカーでは、車種別のエンブレムを採用するメーカーは極少数で、個別の車種が際立つような戦略は取っていません。共通のCIがなければ、どこのクルマがわからない、ということになるからです。これは、メーカー認知度や車種のシェアが大きく関係しています。

その点、王冠がついていればクラウン、鷹があればハリアーというように個々の車種を一種のブランド化し、個別デザインのフロントエンブレムに価値をつけることに成功したトヨタは、国内でのブランド戦略を成功させたといっても良いでしょう。

現在も個別エンブレムのクルマはどんどんと生まれ、エスティマやエスクァイアなどのミニバン。アリオンやプレミオなどのコンパクトセダンに至るまで、新しい車種のブランド定着を図っています。たくさん走るトヨタ車のなかで、自分だけの特別なトヨタを作れる個別エンブレムは、今後も増えていくでしょう。

トヨタの個別エンブレム戦略は、トヨタがここまで大きくなった要因であり、個別の車種を大事にして、歴史を作っていこうとするトヨタの戦略でもあります。今後も多くのエンブレムデザインを増やしていって、国産車の歴史に名を刻む車種をたくさん作って欲しいと願います。

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