新型カローラ/カローラツーリング試乗~音振に課題は残るがTNGAによる走りの進化は凄い!~【新型車レビュー・インプレ】

2019 吉川 カローラツーリング

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新型カローラ/カローラツーリングにはTNGA技術が多々折り込まれています。低重心化と高剛性化を実現した新ボディフレーム、ジオメトリや構成部品を刷新した前後の新型サスペンション、正確なハンドリングを実現する高剛性ステアリングシステムなど、正直、あまりよくなかったカローラの走りを、欧州車と比べられるほどのレベルまで飛躍的に押し上げています。

この生まれ変わった新型カローラ/カローラツーリングの、ハンドリングや乗り心地、ロードノイズといった走りについて、日産でハンドリング性能のエンジニアをしていた筆者が、解説します。

文・吉川 賢一/写真・鈴木 祐子

吉川 賢一|よしかわ けんいち

モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。

吉川 賢一
Chapter
操縦安定性(高速直進性・コーナリング)【カローラ8点/カローラツーリング8点】
乗り心地性能【カローラ9点/カローラツーリング7点】
ロードノイズ【カローラ8点/カローラツーリング7点】
エンジンのフィーリング【カローラ8点/カローラツーリング8点】

操縦安定性(高速直進性・コーナリング)【カローラ8点/カローラツーリング8点】

カローラもカローラツーリングも、高速道路などの綺麗な路面では高い高速直進性を持ち合わせています。これは、高剛性ボディーや新型サスペンション、サイズアップしたタイヤ、そして空力性能などの効果に加えて、ステアリングの補舵が非常に安定していることが要因です。

新型カローラ/カローラツーリングのメディア説明会の場にいたトヨタのエンジニアによると、「新型カローラでは運転のしやすさを追求し、ライントレース性の向上や旋回姿勢の決まりやすさなど、シミュレーションを駆使しながら煮詰めていきました。

新開発のEPS制御によってステアリングの摩擦成分を最適化し、軽快感と手ごたえを向上させました。」とのこと。たしかに、低中速では補舵力が軽いのですが、高速走行になると操舵力が上がって手応えが出始め、安定感が増していくのが分かります。
またコーナリング時の挙動についても、「ロール時の前傾荷重移動をショックアブソーバーの減衰力によってコントロールし、フロントタイヤに荷重を載せながらのコーナリングを目指しました。」とのこと。

要は、ロールとピッチの動きをコントロールし、コーナーで前傾しながら適切な速度でロールする、という挙動にしたようです。旧型カローラで起きていた、不安な印象は感じられず、質感の高い走りをしています。

乗り心地性能【カローラ9点/カローラツーリング7点】

16インチを装着したカローラセダンは、うねりのある路面を乗り越えた際のボディモーションが非常に穏やかです。トヨタのエンジニアの説明によると、「目線のブレないフラットな乗り心地となるようにサスペンションセッティングを行いました」とのこと。

ピッチとロールの動きを細かくシミュレーションし、人がその先での動きを予測しやすいよう、ボディモーションを収束させることに注力しています。
これまでのカローラでは、速度が上がるとステアリング操作をしていないのに、クルマがフラフラと上下や左右に頼りなく動かされることがありましたが、新型カローラではステアリングのセンター位置がビシッと定まり、目線の動きが少なくなったように感じます。

このフィーリングは、まるで欧州車のようで、「走りの質感」が高く感じるポイントのひとつになっています。
ただし、17インチを装着したカローラツーリングは、路面の凸凹によるショックがあり、路面からのショックをいなしきれていないように感じます。トヨタのエンジニアによると、「ヘッドレスト位置の左右の動き低減を狙っている」とのことでしたが、カローラと比べ、路面の凹凸を走り抜けるときなどは、身体や頭が大きく揺さぶられます。
縦バネの高い17インチを装着したため、バネ下のバタつきを抑制させようと、ショックアブソーバーの減衰力を上げた印象です。そのため、カローラにはあった「ボディモーションの安定感」が損なわれており、カローラツーリングは17インチタイヤを上手く履きこなせていないように感じます。

ロードノイズ【カローラ8点/カローラツーリング7点】

走りやボディモーションは、良くなったカローラでしたが、このロードノイズが残念なポイントです。TNGAによる高剛性ボディフレームやリアのダブルウィッシュボーンサスペンションなど、音振性能を向上させる新規アイテムが入っているにもかかわらず、16インチタイヤをはいたカローラでさえ、高周波の「コー」音が大きいのです。

17インチタイヤをはいたカローラツーリングはなおさら。ハイブリッドシステムによってエンジンがストップした静かな車内に、音が侵入してきます。走りの質感において、ロードノイズはクルマの良し悪しを決める重要なポイントであり、カローラにも期待しましたが、「あと一歩」といった印象です。

サスペンションのブッシュ剛性やアッパーインシュレーター、車体への遮音対策など、対策できる部分はあるはず。マイナーチェンジでの改善に期待します。

エンジンのフィーリング【カローラ8点/カローラツーリング8点】

1.8L直列4気筒ガソリンエンジン2ZR-FAEは実用的なエンジンです。排気音はおとなしく、クリアな音質です。速くはありませんが、適度な加速性能をもち、普段使いでは過不足ないパワーがあり実に扱いやすいです。なおWLTCモード燃費は14.6 km/Lです。
対して、1.8L直列4気筒ガソリンエンジン(2ZR-FXE)+モーターのお馴染みTHSⅡパワートレインを搭載したカローラツーリング。モーター走行時は非常に静かで滑らかなフィーリングですが、発電時やモーターアシスト時にエンジンがかかると途端に「ガー」という騒音がうるさく感じます。

特に高速本線への合流時など、エンジン+モーターでの加速は力強いのですが、エンジン音がややうるさく、質感を損ねているように感じます。
このエンジン音を低減、もしくは気にならない周波数帯への音質改善ができれば、クルマとしての質感が更に上がるように思います。なおWLTCモード燃費は25.6 km/L、実測でのメーター読みでも20km/Lを超えており、驚異の低燃費を達成しています。
新型カローラ/カローラツーリングの走りは、飛躍的に進化していました。ただしそれは、旧型カローラの走りが全くダメだったともいえます。

この小型セダン・ハッチバック・ワゴンのカテゴリ(欧州のCセグメント)は、VW ゴルフやBMW 1シリーズ、メルセデスベンツ Aクラスなどの欧州車はもとより、マツダ3などの日本車も、「走りの質」の優れたクルマが乱立しています。

新型カローラは「圧倒的に優位に立った」というよりも、「ようやくその土俵に立った」という印象でした。
「新型カローラは欧州車に追いついたと言えるか?」については、筆者は、現時点では「NO」だと思います。それは新型カローラには、「ロードノイズの低減」と、発電機のような「エンジンの音質改善」という課題があるためです。これらの音振課題を解決し、さらにカロ―ラの良さを磨いて、ようやく世界の土俵に立てる、と筆者は考えます。

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