普通のクルマでもスリップストリームは効くのか?

高速道路

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モータースポーツの世界では、古くからその効果が知られている「スリップストリーム」。前走車の後にぴったりとついて追い抜くそのシーンを、モータースポーツファンでなくとも、一度は見たことがあるのではないでしょうか。今回は、このスリップストリーム現象について紹介していきます。

文・吉川賢一
Chapter
空気抵抗はつねに働いている
スリップストリームとは?
スリップストリームのメリットは?
スリップストリームは普通の車でも効果的か?
スリップストリームのデメリットはあるか?

空気抵抗はつねに働いている

公道・サーキットに関わらず、車を走らせるうえで空気抵抗は避けては通れないものです。空気抵抗は速度の2乗に比例して大きくなり、80km/hを超えた高速域に入ると、空気抵抗の影響で加速が鈍ることを体感できることがあります。

高速走行の際に、スピードを上げるほど燃料を多く消費するのも、これが最大の原因です。この空気抵抗が軽減できれば、加速もしやすくなり、また燃費も改善することができます。

スリップストリームとは?

英語圏では、トウ(tow)ともいわれる「スリップストリーム」とは、高速で動いている物体のすぐ後ろにできる空気圧の低い領域のことです。先行物の後方を走ることで空気抵抗を少なくし、移動のためのエネルギー損失を抑え、エネルギーを温存することをいいます。またその領域では、空気の渦によって、後続車が前走車に引き寄せられる力が働きます。

モータースポーツの世界では、古くからこのスリップストリームをうまく利用することが勝利へのカギといわれています。「スリップに入る」「スリップを出て抜きにかかる」などのように使われます。

スリップストリームのメリットは?

一番のメリットは、加速性能を上げることができ、前走車を追い抜くことが容易になります。また、空気抵抗が少ないほうが、少ないエンジンの力で走ることができるため、エンジンにかかる負荷が少なくて済みます。その結果、燃費の向上にもなります。

空気抵抗の大きなトラックや大型車などでこの効果は顕著で、これらの車種が連なって走行した場合、時速100キロ程度でも大きな燃費の向上があるという実験結果が出ています。そのため、このスリップストリームを使った走行方法は、今後トラック等の自動運転での隊列走行に利用することが、期待されています。

スリップストリームは普通の車でも効果的か?

スリップストリームの原理は、普通の車を運転するときにも有効です。高速道路で大型車の後ろに入って走行すると、空気抵抗が大幅に減少し、燃費が非常によくなります。

ある実験では、大型トレーラーの後方を約90km/hで走っている場合、先行車との車間距離を約3メートルとした場合が、もっとも燃費が良かったとのデータがあります。

とはいえ、約90km/hのスピードで約3メートルの車間距離では、先行車にアクシデントが起こったときに避けきれず、間違いなく追突しますし、なによりも先行車のさらに先の情報がまったく見えず、頼りは先行車のストップランプのみという状態は、ドライバーには高い緊張を強いることになり、それで何キロもはり続けるのはまず無理です。

もちろん、さらに低いスピード域(一般道のスピード)でも、スリップストリームは発生します。しかし、前述したように、車間距離が短いとドライバーに大きな負担があるばかりか、車間距離保持違反に問われることになりますので、公道では適切な距離を保って運転するようにしてください。

スリップストリームのデメリットはあるか?

燃費やスピードに効果のあるスリップストリームですが、じつはデメリットもあります。

そのひとつが、エンジンの冷却能力が落ちることです。スリップストリームに入ると、先行車の陰に隠れるために、空気の流れを利用してエンジンを冷やすラジエターに風が当たりにくくなります。そうなると、ラジエターで水温が十分に下がりきらず、エンジンがオーバーヒートする可能性があります。

また、スリップストリームからの脱出時には、挙動乱れに注意が必要です。スリップストリームから脱出する際には、急激な空気圧の変化で車体が不安定になり気流にあおられる可能性が高いのです。

空気抵抗が減少する点では効果が期待できますが、先行車との車間距離が極端に短いと危険運転となりますし、先行車に極端に近づくことができなければ、燃費向上の効果は微々たるものです。

いろいろと無理してわずかな燃費向上を狙うよりも、安全な車間距離を保って燃費の良い運転を心がけたほうが、得られる効果は高まるはず。やはり安全運転が一番なのです。

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