Rolling 40's Vol.73 荒ぶる

Vol.73 荒ぶる

Rolling

だが私の気持ちのまま訳すと。

「荒ぶる」

どうしてかその超訳が一番スッキリとする。ちょうど40歳になったときから始まったこの連載。新しい気持ちに強い誓いを立てるかのように、40歳になった自分に対しての想いを書いたと記憶している。

 「解放感」
 「使命感」
 「緊張感」

実際に40歳になった時に感じたのはそんな矛盾することばかりだった。40歳の前半、私は何かが吹っ切れたかのように目の前にあるものすべてに闘争心をむき出しにした。まさに荒ぶる40代である。強引なやり方ゆえに周りから心配されたり不評を買ったりもしたが、結果的には良い勝率だったと思う。

だが気が付けば四捨五入すると50歳という季節になってしまい、そのやり方だけでは更なる高次元に向かえないことにも気が付き始めている。

それでも荒ぶる気持ちは抑えられない。この闘争心は20代にはなかったものだ。その頃は体力の方が勝っていて、身体の荒ぶり加減に気持ちがついていかないことが多かった。

結果的に、派手に動いてはいても、気持ちの中では戸惑いばかり。自分の成しえたことに対して、本当に深い理解を得ているかは疑問である。

30代、これは大抵の男子にとっては魔境である。失われていく若さと体力、追いつかない知識と経験という無間地獄で。先鋒の座を奪われリーダーにもなれずに、毒を飲まされたかのごとく悶え苦しむばかり。

20代に勝手に膨らんだプライドや夢はあっという間に崩壊する。その苦しみたるや、自己の生存アイデンティティにまで及ぶこともあった。ちなみに30代女子の苦悩にもまた別の角度から痛みがあるのは然りだが、自分が見てきた範囲では、男子の方が激烈な痛みを伴う気がする。

だが私にとっての40代は違った。運や御縁も半分以上であったが、苦しんだ30代を乗り越えただけあり、その間に密かに集め始めた武器がやっと揃ったかのようなものである。またその使い方も熟知している。

そして一番の違いは「生」の風景の変化だ。

20代にとって人生はどこまでも高く続いている階段。30代にとってその高さはうんざりとするものでしかなかった。だが40代、気が付くと雲の上に微かにそのゴールが見え隠れする。ちゃんとゴールがあったのだという事実に大きな安堵を感じるが、それは同時に新しい恐怖も生むことになる。そのゴールの先は何もないという事実。

まだ深く考えることはないが、アラフィフほやほやの私が思う50代というのは、そのゴールに対してちゃんと「逆算」して生きていけるか否かであろう。ここまでくると仕事も遊びも、限られた数しかできないのが現実だ。逆立ちしても無駄に過ぎた大事な時間が戻ることはない。

しかしその現実が明らかになると、反対に自分の中の時間一つ一つが珠玉のものとなり、新たな輝きを放ち始める。まさにオヤジの強みであろう。

仕事の話はまたの機会にしておいて、実は「新しい遊び」と九月頭に出会ってしまった。テレビのロケでカンボジアに一週間ばかり滞在し、バックパッカーのような旅をしたのだが、その中で125㏄のバイクで半日ツーリングをしたのである。

通勤バイクが溢れ返る都会から、東南アジア最大の湖であるトンレサップ湖まで走った。この湖は雨季と乾季で大きさが変わるという不思議な湖で、独特の形をした水上生活村などが有名である。雨季は琵琶湖の10倍近くの大きさになると言う。

途中からはジャングルの中を突き進む赤土のオフロードで川を渡るなどのプチアドベンチャーであった。ジャングルの中を一直線に突き進む赤土の道でフルスロットル。

 「久々の恍惚体験」

突き進んだ先で辿り着いた小さな村の市場で「油そば的ビーフン」を食べ、その上手さに悶絶。またなんの運の尽きか、仲良くなった現地ガイド兼通訳の方がバイク乗りであった。聞くと休みになるとオフロードバイクで泊りがけのツーリングをするという。それも小さな村などに「民泊」しながら無限に続くオフロードを走ると言う。

次回は遊びで来てくれれば、バイクも用意しておくから一緒にオフロード探検に行こうというではないか。

即OKである。どうしてこんなタイミングで「悪い仲間」が出てくるのかと笑ってしまった。20年ぶりにオフロードバイクに復帰してまだ1年弱であるが、さっそく不思議な御縁が舞い込んできた。

現実的に、乾季である日本の冬に全行程1週間以内くらいのスケジュールで計画を進めている。まともに働けるのも遊べるのもあと20年くらいだけだ。仕事も遊びも、出来るものはいち早く行う必要がある。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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